コロナの影響による在宅ワーク化が進む中、住まいを都市から郊外へと移す人も現れている。居住費は安くなるが、都市部に比べれば生活に不便な面も出るため、手頃な価格の自動車を求める人もいるようだ。景気の先行きも見えないため、車両価格や税制面で有利な軽自動車が台数を伸ばす可能性もあるだろう。

その軽自動車の新車販売では、長きにわたってホンダ「N-BOX」が首位を独走してきたが、軽自動車を主業とするスズキ、ダイハツも加わり、スーパーハイトワゴンという人気カテゴリーで火花を散らしている。今回は全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2020年11月の新車販売における人気車種トップ15を紹介しよう。

2020年軽自動車人気車種、11月トップ15

順位 ブランド通称名 ブランド名 販売台数
1 ホンダ N-BOX 15,685
2 スズキ スペーシア 12,027
3 ダイハツ タント 10,599
4 ダイハツ ムーヴ 9,980
5 日産 ルークス 9,019
6 スズキ ハスラー 6,579
7 ダイハツ タフト 6,503
8 ダイハツ ミラ 6,068
9 スズキ アルト 5,654
10 日産 デイズ 5,427
11 スズキ ワゴンR 5,199
12 ホンダ N-WGN 4,439
13 スズキ ジムニー 4,344
14 ホンダ N-ONE 2,899
15 三菱 eK 2,016

※通称名については同一車名のものを合算して集計(アルト、ミラ、ムーヴ、タント、eK、プレオ、N-BOX、デイズ、ピクシスなど)

例)デイズルークスはデイズとして、2020年3月発売のルークスについてはルークスとして集計

■1位:ホンダ「N-BOX」

先月と変わらず、首位は「N-BOX」。ホンダというメーカーの強みは、他社にはない独創的なアイデアを生み出すところにあり、これを武器にコンパクトカー、ミニバン、スポーツカーなどで多数の大ヒットモデルを生み出してきた。

もちろん、軽自動車においても手を抜くことはない。1967年にホンダが本格的な量産乗用車として発売した「N(360)」というヘリテージ・ブランドを受け継ぐモデルとして、「N-BOX」にもホンダの最新技術とアイデアが投入されている。中でも独自の特許技術「センタータンクレイアウト」は、室内空間の拡大や低重心化による走安性の向上などに貢献するため、車内スペースに限りがあり、重心も高くなりがちな軽スーパーハイトワゴンには大きなアドバンテージとなる技術だ。

  • ホンダ「N-BOX」

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■2位:スズキ「スペーシア」

スーパーハイトワゴンは、主に小さな子どもを持つファミリー層をターゲットとしているが、「スペーシア」も人気モデルのひとつ。その名の示す通り、広大な室内スペースを持つほか、軽自動車に手慣れたスズキならではの使い勝手の良さも魅力だ。後部の大開口スライドドアはスイッチ一つで開閉でき、低床フロアで乗り降りもラクラク。

後部座席はサーキュレーターで快適な温度に保たれ、ワンタッチで折りたたんでフラットで広大な荷室にすることも可能。また、マイルドハイブリッド採用のパワフルでエコ性能の高いエンジンや、「スズキ セーフティ サポート」といった安全装備も充実している。このほか、大きくエクステリアのイメージを変えた「スペーシア カスタム」と「スペーシア ギア」がある。

  • スズキ「スペーシア」

    スズキ「スペーシア」

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■3位:ダイハツ「タント」

スーパーハイトワゴンのパイオニア的存在がダイハツ「タント」。4代目モデルはトヨタ「TNGA」のダイハツ版とも言える「DNGA」の第1弾として設計され、刷新されたエンジンやプラットフォームによって大幅に車体性能を進化させている。

ライバルたちと同様、広大なスペースや経済性、最新の安全装備はもちろん、運転席のロングスライドと前後ピラーレス大開口「ミラクルオープンドア」による「ミラクルウォークスルーパッケージ」といったギミックも大きな特長。ベーシックモデル以外にも、スポーティなエクステリアを持つ「タント カスタム」や、福祉車両もラインナップされている。

  • ダイハツ「タント」

    ダイハツ「タント」

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■4位:ダイハツ「ムーヴ」

ダイハツのトールワゴンとして1995年からの歴史を持つ「ムーヴ」は、一番人気のスーパーハイトワゴンほどの室内の広さや、同社「タント」の「ミラクルオープンドア」のような大仕掛けは持たないものの、大人4名乗車でも充分なスペースを持ち、高速巡行なども考慮したバランス重視のモデルと言える。

上級モデルとして、ダイハツが技術と情熱を注ぎ込んだ「ムーブ カスタム」や、女性をメインターゲットとしたオシャレなエクステリアとカラーの「ムーヴ キャンバス」がある。

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■5位:日産「ルークス」

日産のアイデンティティ「Vモーショングリル」を備えた「ルークス」は、2020年3月に発売されたスーパーハイトワゴン。精悍なデザインのみならず、この激戦区で王者ホンダ「N-BOX」やスズキ、ダイハツと真っ向勝負するだけの装備も当然備えている。必須である室内空間の広さや使い勝手の良さ、エコ性能のほか、日産自慢の「プロパイロット」をはじめとした先進技術も惜しみなく投入。「AUTECH」や「ハイウェイスター」の上級グレードも加えられている。

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「N-BOX」を追うスズキとダイハツはSUVでも熾烈な争い

11月も首位はホンダ「N-BOX」だが、若干だが勢いは落ちてきており、これを2位のスズキ「スペーシア」、3位のダイハツ「タント」が先月と順位を入れ替えながら猛追。1万台を超えているのはこの3モデルだけで、やはりスーパーハイトワゴン人気の高さがうかがえる。

また、長年のライバルでもあるスズキとダイハツはスーパーハイトワゴンだけではなく、SUVモデルでも火花を散らしており、6月に発売されて上位に躍り出たダイハツの「タフト」をスズキの「ハスラー」が再び抜き返している。

一方、ホンダは12月の下旬に「N-BOX」をビッグマイナーチェンジして再び引き離しにかかるが、そこにはジレンマもあるかもしれない。「N-BOX」が爆売れするのは嬉しいが、ほかのNシリーズはそこまでには至っていないため、総販売台数ではスズキとダイハツに大きく水をあけられている。

そして、スズキやダイハツと違い、ホンダは軽以外にも数多くの乗用車を販売している。その中で乗用車の国内売上トップ10に入るのは小型の「フィット」と「フリード」だが、このコロナ禍では、購入希望者の中にはコスパの高い「N-BOX」に流れてしまう人もいるのではないだろうか。