マツダは「CX-8」の商品改良を実施した。3列シートを標準装備し、大人6~7人が乗れるクロスオーバーSUVとして2017年末にデビューしたCX-8は、ミニバンに代わる新たな市場を創出するというマツダの戦略通りに売れている様子。今回の改良では何が変わったのだろうか。

  • マツダの「CX-8」

    マツダが商品改良を施して12月3日に発売した「CX-8」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

CX-8で3列シートSUVの市場開拓を狙ったマツダは、ミニバンの「プレマシー」と「MPV」をラインアップから消滅させるという大胆な戦略をとった。その結果はといえば、CX-8自体が持つ優れた運動性能や効率的な室内空間、洗練されたデザインなども功を奏し、2018年、2019年、2020年上半期と続けて3列SUV市場におけるシェアNo.1を獲得している。

新型車を投入した後、時期を決めずに商品改良を行うのはマツダの得意技だ。CX-8でも、塗布型制振材を採用して雨粒がルーフを叩く音を低減させたり、シートバリエーションを増やしたり、サブトランクボックスの容量を拡大したりと、地道な改良を続けてきた。発売から3年を経た今回の改良では、新たなボディーカラーが追加となるなどの変更が加えられた。

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    新たなボディーカラーの「CX-8」。グレードは最上級の「エクスクルーシブ・モード」

上級モデルがさらに上質に

横浜市のマツダR&Dセンターで見た新しい「CX-8」は、新たなボディーカラー「プラチナクォーツメタリック」を身にまとっていた。淡いベージュのような落ち着きと硬質感がミックスされた外板色は、CX-8の最上級グレードによく似合う。

フロントグリルは従来の太い水平バータイプから、縦方向に伸びる細かいブロックメッシュパターンに変更。塗装は最上級グレードの「エクスクルーシブ・モード」(Exclusive Mode)がガンメタリック、その下のグレードの「Lパッケージ」(L Package)はグロスブラックだ。この改良により、CX-8の表情に精緻感が加わった。グリルの下側には、サイドガーニッシュと同質のフロントガーニッシュが追加されているのに気がつく。

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    フロントグリルは水平バーからブロックメッシュパターンに変わった。写真はガンメタリック塗装の「エクスクルーシブ・モード」

サイドに回ると、デザインを変えた5+5アルミホイール(太い5本スポークと細い5本スポークによる構成)により、タイヤにサイズアップ感が与えられている。リアは太いエキゾーストパイプの採用によりワイド感が増した。

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    アルミホイールは太いスポークと細いスポークが各5本の10本スポークに

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    「エクスクルーシブ・モード」には従来よりも大型のテールパイプを装着

インテリアにも手を加えた。ナッパレザーを使用した最上級グレードのシートは、従来のツルリとした表皮から、サイド部に格子状のキルティングを施した厚みのあるデザインに変更。「エクスクルーシブ・モード」のシートカラーは写真のピュアホワイトのほか、従来のディープレッドから変更となったクロマブラウンも選べる。「Lパッケージ」はブラックとバーガンディーレッドの2色から選択可能だ。デコレーションパネルがハニカムシルバーとなっていたりするのも変更点である。

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    「エクスクルーシブ・モード」で選べるピュアホワイトの内装

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    ハニカムシルバーのデコレーションパネル

3列目シートは、どのグレードを選んでも従来通り使いやすい。170センチまでの身長であれば、足元や頭上空間に不満が出ないだけのサイズが確保されている。

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    「CX-8」の3列目シート

開発を担当した商品本部の松岡英樹主査に聞くと、こうした変更点は「CX-8の最上級モデルは価格的にも輸入車と比べられるのに、見た目がベースモデルとあまり変わらない。上級グレードを購入するのであれば、それに見合った特別感や一層洗練されたアピアランスが欲しい」というユーザーの声に対応したものだという。

松岡主査によると、CASE技術の進化とハードウェアのアップデートも今次改良のトピックだという。具体的には8インチだったセンターモニターを10.25インチまでワイド化し、新世代マツダコネクトとコネクティッドサービスに対応させたそうだ。これによりエマージェンシーコールやアドバイスコールなどのオペレーターとつなぐサービスが利用できるようになったり、スマートフォン専用アプリ「マイマツダ」の使用が可能になったりしている。360度ビュー・モニターは全車で標準装備となった。ワイヤレス充電(Qi)ポートの採用や、キックモーションでリアゲートを開閉できるハンズフリーパワーリフトゲートの採用なども、利便性の向上に大きく貢献する改良点だろう。

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    センターモニターは10.25インチにサイズアップ

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    電動リアゲートは車体下部に足を出し入れすることでも開閉可能に

パワートレーンについては、主力ディーゼルエンジンの「SKYACTIVE-D 2.2」の最高出力を190PSから200PSに強化。最高出力の発生回転数は従来より500rpm低い4,000rpmとした。また、3,000~4,000rpm域の全開トルクが向上(最大トルクの450Nm/2,000rpmは変更なし)しているそうなので、走りの質感は間違いなく上がっているはずだ。制御の面ではペダル踏力を適正化。低回転域から大トルクが発生していても、ドライバーの意思とクルマの動きがリンクするよう、設定に磨きをかけたという。

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    最高出力が10PSアップした2.2リッター直列4気筒ディーゼルエンジン

競合車と比べてみると

国内営業本部 ブランド推進部の二宮誠二主幹によると、現在、マツダの国内販売のうち約6割は「MX-30」を含むSUV群で、そのまた半分を「CX-5」と「CX-8」が占めている。発売から3年のCX-8は今、早い時期に購入したユーザーが初回車検を迎える時期。今回の商品改良では、既存のCX-8ユーザーにも乗り換えを検討してもらえる状態に持っていくことも重視したという。

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    発売から3年の「CX-8」は初回車検のタイミング。商品改良を経た新型への乗り換えも検討してもらいたいというのがマツダの考えだ

プラチナクォーツメタリックの外板色にピュアホワイトの内装の組み合わせは、CX-8デザイナーのイチ押しカラーであるとのこと。さすがにマツダのフラッグシップらしい佇まいだ。「XD エクスクルーシブ・モード」の4WDモデルであれば価格は499.95万円と高価だが、輸入車の3列SUVモデルと比較検討するユーザーからは「ものすごく安いね!」との声を聞く(二宮主幹)こともあるそうだ。

CX-8のライバルとして考えられるのは、3列モデルでなければボルボ「XC40」あたりが思い浮かぶし、メルセデス・ベンツからは3列SUVの新型車「GLB」が出たばかり。国内モデルであればレクサス「RX」やトヨタ自動車「ハリアー」、あるいはミニバン「アルファード」などと比較検討されることが多いのだという。

水面のリフレクションとともに車体を撮影するため、池の反対側に回り込もうとしていた筆者に、「このままじゃ、波が立っていてちゃんと写りませんよね」とわざわざ水の噴出口を止めにいってくれた広報さんに喜んでもらうためではないのだが、今回の商品改良を経てCX-8の魅力が増したのは間違いない。価格は最も安いグレード「25S」が299.42万円、最も高価なエクスクルーシブ・モードが499.95万円となっている。