「全機現する大人を増やしたい」と語るのは、ZENKIGEN代表取締役CEOの野澤比日樹氏。全機現とは、"人の持つ能力の全てを発揮する"という意味を持つ禅の言葉です。

野澤氏は、「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンのもと、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」及びAIの活用による採用のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、自社でのワーケーション導入、スタート時からIPOを目指す上場スペック経営など、革新的な取り組みをされています。

本稿では前回に続き、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、そんな野澤比日樹氏と対談を行いました。

  • 採用・職場をDXし、HRの経営課題を解決! 全機現経営で生き生きとした社会を実現する【後編】

人を幸せにするAIが全機現経営を実現させる

井上一生氏(以下、井上)――ここまで採用のDX(デジタルトランスフォーメーション)について伺いましたが、その先の計画・構想について教えてください。

野澤比日樹氏(以下、野澤)――採用のDXでは、採用活動の効率化やミスマッチ・アンマッチの防止により採用の質を上げることを目指します。そして採用のDXの次は、職場のDXを目指していきます。井上さんが仰ったように、人材の確保の他にも、人材の定着や育成などの課題があり、それらの課題にも、私たちは取り組んでいきます。

定期的に行われる1on1面談やコミットメント面談でもAIを活用できるのではないかと考えています。データを活用してよりベターなチーム編成をAIが提示し、人事が決定・実行していくイメージです。

最高のパフォーマンスができるチームをつくることで、生き生きと働ける人が増えると考えています。

井上――生き生きと働ける人が増えると、全機現できる大人が増えるというわけですね。とてもビジョナリーですね。野澤さんが実現しようとしているのは、人を幸せにするAIですね。

野澤――ありがとうございます。まさに、人を幸せにするAIを普及させて、幸福経営を実現したいです。幸福経営は、全機現経営と言い換えても良いかもしれません。全機現できる大人を増やして、社会をより良く変えていきたいですね。

  • (左)ZENKIGEN 代表取締役CEO 野澤比日樹氏、(右)SAKURA United Solution 代表・井上一生氏

社会の働き方を変えるためには自社の働き方から変える

井上――野澤さんは社内向けにも面白い取り組みをされていますよね。最近は、ワーケーション拠点も開設するとか。

野澤――実は、茅ヶ崎にオフィスを契約しました。海を一望できるロケーションです。たまたま運良く物件が空いたと聞いて。他にも温泉地など各地にワーケーション拠点設立の構想を持っています。こちらは、当社以外も使えるシェアスタイルです。ワーケーション導入には、リクルーティングの強化と開発拠点を増やす目的があります。

大手町に本社があるのですが、本社を増床するよりも、茅ケ崎や温泉地にワーケーション拠点を設けた方が社員のためにも良い投資になると判断しました。海と山、それと都会を行き来しながら働くと、生産性も上がりそうですから。

井上――いいなぁ、素直に憧れます! ご自身で新しい働き方を実践されているのが素晴らしいですね。

野澤――ありがとうございます。「満員電車が生産性を下げている」とずっと感じていたので、社員にはそうさせたくないんですよね。コロナ以前から、フルフレックス、フラットな組織、リモートワーク推奨はしていたのですが、それが加速した形ですね。

社会の働き方を変えるためには、まずは自社の働き方から変える必要があると思います。ワーケーションで1~2週間、家族と一緒に過ごしながら働くのも良いと思うんですよね。自然に囲まれて、午前と夕方だけ仕事をして、昼は遊ぶ。そんなスタイルも良いと思います。

井上――当社はインドネシアのバリ島に法人や物件があるので、バリオフィスを設けても良いかもしれないですね。例えば、朝からサーフィンやマリンスポーツをして、お昼くらいになったら砂を払いながらオンラインで会議や、デスクワークをする。足に砂がついていても、画面上はわからないわけですし。

設立日からIPOを前提とする「上場スペック経営」

井上――野澤さんがはじめに「IPOを前提に設立した会社です」と仰っていたのが印象深いです。私たちは、「上場スペック経営」を推奨していて、上場を目指す目指さないに関わらず、いつでも上場できるスペックの経営をしましょうと経営者の方々にお伝えしています。

IPOを前提に設立したという意志も素晴らしいのですが、ワーケーションは内部統制の観点からは相反するのではないでしょうか?

野澤――そうですね。設立日から上場を意識したというのは、「サイバーエージェントもソフトバンクも上場によって大きく成長した会社だから」というのがあります。市場にいるからこそ資金調達ができる。資金調達の多様性がある。というのは、やはり大きなメリットだと思います。

ソフトバンク社員が熱中すると言われる経営者・幹部育成のためのマネジメントゲームMGでも、一気に投資していかないと勝てないんですよね。投資して優秀な人を集める。投資して良いサービスをつくる。そして、良いサービスで世の中を良くするためには、上場は必要だと考えています。

上場するためにクリアしないといけない基準はクリアするのですが、時代にそぐわないのではないか、と思われる基準も存在するように思います。証券会社と一緒になって、新しい会社の在り方をつくろうとしているところです。社会全体を全機現していきたいですね。

井上――良いですね。確かに、古い基準も残っているのでしょうからね。ワーケーションのような新しい働き方には、新しい基準が必要になりますね。単に基準に従うのではなく、新しい基準をつくっていくのも、大きな意義があると思います。野澤さんのような経営者を増やしていきたいです。本日は、ありがとうございました。