仕事で嫌な思いをした時や忙し過ぎる時、「もう働かずに生きていきたい」なんて考えたことはないでしょうか。「不労所得」で生活できれば、夢のようですよね。しかし、実際に不労所得で生きていく計画を立て、実行に移す人もいるのですから、全く無理な話とは言えません。では、不労所得で生活するなら、前もってどのくらいの金額が必要なのでしょうか。

  • 不労所得、働かずに生活するにはいくら必要?

不労所得とはどんなもの?

不労所得とは、文字通り「働かずに得る所得」のことですが、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。たとえば、不動産投資で得る家賃収入や、株式投資で得る利益などが当てはまりそうです。その他にも、ブログから得る広告収入なども不労所得と言えるでしょう。厳密には、投資判断やブログに投稿する作業などを「労働」と呼ぶかもしれませんが、いわゆる一般的な労働とは異なるものです。

とはいえ、労所得といっても何もしなければお金が入って来るはずはありませんので、働かずとも収入が得られる仕組みを持つことが必要です。

前もっていくら必要?

不労所得で生活するのに必要な金額を出すため、まずは、生活費としてどのくらいかかるのかを確認してみましょう。総務省統計局の「家計調査(家計収支編)2019年 1世帯当たり1か月の収入と支出(単身世帯)」によると、このうち勤労者世帯の1か月の消費支出は18万1,784円、非消費支出は6万3,900円、合計で24万5,684円です。つまり、独身の場合、1か月の生活費は約25万円、1年では約300万円となります。

では、年間約300万円のお金を働かずに得るには、どうすればいいのでしょうか。ここでは、株式投資で不労所得を得ようとするケースを考えてみました。

株式投資には、大きく分けて二つの利益があります。一つ目は、株式の売買差額による利益(キャピタルゲイン)、二つ目は、株式を保有することで得られる配当金(インカムゲイン)です。

株式の売買差額による利益は、いわゆる株トレードをすることで得られますが、配当金は、配当金を設定している企業の株を保有するだけで利益が発生しますので、まさに不労所得と言えます。そこで、毎年300万円の配当金を得るために必要な金額を出してみましょう。

株式の配当金で不労所得を得ようとする時、よく注目されるのが「高配当株」です。高配当株とは、株式を保有することで得られる配当が多い銘柄のことを言います。配当とは、企業が得た利益の一部を株主に分配するものです。また、配当利回りは、購入した株価に対し、1年間でどのくらいの配当を得られたかを示す数値で、以下の計算式で求められます。

配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価額×100

高配当株とは、この配当利回りが高い株式のことで、一般的に、3~5%以上であれば高配当株とされています。仮に、配当利回り3%の高配当株で年間300万円の配当金を得ようとする時、必要な金額を計算すると、

必要な金額×配当利回り0.03=300万円
必要な金額=300万円÷配当利回り0.03=1億円

となりました(税金等は考慮しない)。ただし、株価は常に変動するものですし、配当利回りは企業の業績に左右されます。株価が下がると配当利回りも減り、当初期待していた配当金が得られないばかりか、配当金が中止することもあります。

計算上、配当金で不労所得を得て生活することは可能ですが、必要な資金さえあればずっと安定して配当金が得られるわけではなく、リスクもあることを肝に銘じておきましょう。

セミリタイアという選択肢

投資で生活していけるだけのお金を得るには、それなりの元手が必要であること、そして、リスクがともなうものです。不労所得の元手となる資金を貯金や株トレードなどで増やしていき、晴れて不労所得生活へ移行したような人も実際にはいますが、難しいと感じる人が多いのではないでしょうか。

ただ、すぐに不労所得だけで生活することは難しくても、「セミリタイア」という選択肢もあります。セミリタイアとは、一般的な定年退職より前に会社を辞め、何かしらの手段によって収入を得て生活していくことです。

不労所得だけでセミリタイア生活を送るというパターンもありますが、より現実的なのは、働き方を変えたり、労働時間を抑えたりして収入を得つつ、半分は文字通り「リタイア後」のような生活を送るやり方でしょう。

たとえば、1か月の生活費が約25万円の独身男性が40歳でセミリタイアし、毎月15万円は何らかの形で収入を得て、残り10万円は貯金を切り崩すとします。厚生労働省の「簡易生命表 2018年」によると、男性の平均余命は81.25歳。残り41年分の生活に必要な貯金をしておくとすると「10万円×12か月×41年=4,920万円」となります。

株式投資の配当金で不労所得を得て生活する場合の必要金額は1億円でしたので、これと比べれば実現の可能性が高まりそうです。

なお、老後に得られる公的年金等は考慮しておらず、実際に必要となる金額は、家族構成やライフスタイルなどによって大きな差が生じます。また、セミリタイアを検討する場合も、事前にしっかりとした計画が必要であることは言うまでもありません。

本業以外にも収入の柱を

「株式投資で不労所得を得るのは、必要な資金が莫大だしリスクもありそう」と感じた人は多いのではないでしょうか。しかし、投資そのものは、プラスの収入を得る手段や老後資金の準備として有効なものです。

不労所得生活を目指す、目指さないに関わらず、これを機に投資を始め、本業以外にも収入の柱を作ってみてはいかがでしょうか。