多様性を尊重する現代、日本人が大好きな麺料理にもその波が来ているようだ。ラーメン、パスタ、うどん、そばのような王道メニューとは少し異なる、よりニッチな麺料理を専門に扱う店がじわじわと増え始めている。他の料理と麺料理をかけ合わせたり、麺の製法にとことんこだわったりと、その個性はさまざま。今年都内にオープンした斬新な麺料理専門店を紹介する。

  • もちもちの生麺パッタイなど、新感覚の麺料理を提供する専門店が増加中!

牛すじカレー×焼きそばのガッツリ麺料理が誕生!

今年8月、東京・原宿にあるお好み焼き店「お好み焼き やいやい」(もともとは夜のみ営業)は、平日12時~16時までのランチ限定で「牛すじカレー焼きそば専門店 やいやい」をオープンした。極太麺の焼きそば・焼うどんに濃厚な牛すじカレーがたっぷりかけられた、見た目も味もガッツリ系の牛すじカレー焼きそばが看板メニューだ。

  • ボリューム満点! 「牛すじカレー焼きそば」(740円)

「普通の焼きそば専門店は数多くあるので、何か変わった専門店にしたい。『カレーうどんがあるのなら、カレー焼きそばがあってもいいのではないか』と思い立ち、カレー焼きそばの開発を開始しました」と話すのは、同店をプロデュースするオペレーションファクトリーのディレクター高野正道さん。コロナ禍による売上減少を補填するためランチ営業を開始したが、お好み焼きは提供までに時間がかかることから、比較的早く提供できる焼きそばの専門店開業に踏み切った。

他店との差別化を図るため、極太の生麺を採用。製麺所からサンプルを多数取り寄せ、もちもちとした歯ごたえを表現できるようゆで時間も試行錯誤して調整した。そして、その極太麺に負けないよう、複数のスパイスと野菜を調合した味と香りにインパクトのある「焼きそば専用カレー」を開発。お好み焼き店で人気のある牛すじと、隠し味としてオリジナルの焼きそばソースも加えている。カレーの水分を極力少なくしているため極太麺にも絡みやすく、個性の強い麺とカレーの一体感が味わえる。

インパクトのある牛すじカレー焼きそばは男性客を中心に人気。現在はカレーの味を「辛口レギュラー」「マイルドカレー」から選べるようにしたり、極太麺を使用した「鉄板カルボナーラ」(880円)など新たなメニューを加えたりと、女性客も利用しやすいメニュー展開に。徐々に女性ファンも増えてきているという。

もちもち感がやみつき! 日本初の真空生麺パッタイ

続いても生麺。今年7月に新宿にオープンした「新宿ディパッタイ」は、パッタイ(タイの麺料理)の専門店。特徴は、毎日その日に使用する分のみ製麺しているという自家製の生麺だ。パッタイは一般的に米粉を使った乾麺が使われるが、同店では小麦粉使用で、真空製麺機を使って店内で独自に製麺。真空状態で製麺することで麺にしっかりと水分が浸透し、驚くほどのもちもち食感が味わえるという。

  • 2つの人気料理を一度に味わえる「生麺パッタイ×カオマンガイセット」(1190円)

店長の楠元健さんは、自家製麺の形状を決めるのに一番苦労したと話す。「1ミリ単位で製麺機のアタッチメントを変えて試作し、やや平打ちの形にすることでパッタイソースに合う理想的な生麺がようやく完成しました。毎日営業開始の10時間以内に製麺した麺を使用しているので、独自のもちもち感が味わえます」(楠元さん)

看板商品の「自家製生麺パッタイランチ」(高知県産生姜のスープ、副菜、ミニサラダ付き/990円)は、もちもちの生麺と海老や豚肉などを甘辛く味付け、ニラ、もやしなどをもりつけた具沢山な一品。添えられているレモンを全体に絞ることで爽やかな香りと酸味が加わり、さっぱりとした味わいが楽しめる。これにしっとりとした鶏肉がおいしいカオマンガイをセットにした「生麺パッタイ×カオマンガイセット」(1190円)が同店の一番人気だ。

オープンから4か月ほどで約7,000食を販売しており、想定を上回る売れ行きとのこと。生麺パッタイを食べた客からは「米粉麺のパッタイしか食べたことなかったけど小麦粉の生麺もこんなに合うんだ」、「麺が本当にもちもちしていて美味しい」といった感想が寄せられているそうだ。

こだわりの千切りとろろがポイント とろろそば専門店

今年8月に五反田にオープンした「東京とろろそば 五反田店」は、その名の通りとろろそばの専門店。とろろそばといえば、昔からそば屋の定番メニューの一つだが、看板メニューにしているのはちょっと珍しい。同店を運営するアークダイニング営業部次長の早川正輝さんは、「 “働く人の活力になるような食事”を提供したく、のど越しがよく栄養がとれるとろろそばに注目しました。立ち食いそば以上、老舗のそば屋未満のポジションを目指しています」と話す。

  • 人気メニュー「肉とろろそば」(温・冷 790円)にも千切りとろろがたっぷり

特徴は、すりおろしではなく細かく千切りにしたとろろを使用していること。店舗で機械を使って極細の千切りで仕上げることにより、とろろ芋特有のシャキシャキ食感を生かしつつ、トロトロとしたのど越しの良さにもこだわっているという。ありそうでなかった独自の工夫で、新しいとろろそばの魅力を発揮している。

一番人気は「肉とろろそば(温)」(790円)。鶏ガラベースのスープに合うよう甘辛く炊き上げた豚肉や青ネギ、卵黄、たっぷりの千切りとろろがのっている。それぞれの味を楽しんでもよし、豪快に混ぜて食べてもよし。替え玉(200円)・半替え玉(100円)もできるため、そばで食べた後にうどんで替え玉をするのもおすすめだそうだ。

  • 現在は冬季限定メニュー「明太あんかけとろろそば」(690円)を販売中

また、とろろを活かした多彩なメニューを揃えているのも同店の魅力。キーマカレーをのせた「カレーとろろそば/うどん」(790円)、ピリ辛の肉味噌に千切りとろろを合わせたつけ汁が特徴の「坦々つけそば/うどん」(790円)などの個性的なメニューのほか、季節に合わせた季節限定メニューも。いずれも千切りとろろがたっぷりと添えられており、食感と粘り気がよいアクセントになっている(とろろなしのメニューもあり)。働く男性を主なターゲットとしていたが、女性の利用客も多いそうだ。

「どんな味だろう? 」というワクワク感や「こんなの食べたことがない! 」という驚き、普段の食事がちょっとしたエンターテイメントになり楽しい新感覚の麺料理専門店。王道のラーメンやうどんも良いけれど、たまには趣向を変えて、いつもとはちょっと違う麺料理の楽しさを味わってみては。

※価格はすべて税別