新型コロナウイルスの影響で多くの人々がリモートワークに取り組むようになり、それをサポートするさまざまなツールやサービスが登場した。Opensource.comは「Top 10 open source tools for working from home|Opensource.com」において、リモートワークに役立つオープンソースで開発されたツールを紹介している。日頃使うツールの選択肢として興味深い。本稿では、そこから8個のツールを紹介しよう。

Web会議ツール「Jitsi Meet」

Web会議はスムーズにリモートワークを進めるカギとなるサービスの1つだ。「Jitsi Meet」はそのWeb会議のためのツールで、スタンドアロンのアプリケーションを必要とせず、完全にWebブラウザだけで利用できる点を特徴としている。ユーザー登録なども必要なく、Webサイト上で「Start Meeting」ボタンをクリックするだけで会議を始めることができる。

会議の時間は無制限で、最大50人まで参加可能。チャットや画面共有、YouTube動画の共有、参加者のデスクトップの操作、参加者ごとの会話時間の統計取得、カレンダーアプリとの統合などの機能を備えている。ライブストリーミング配信にも対応。本稿執筆時点ではバーチャル背景機能は備えていないが、背景ぼかし機能がベータ版として提供されている。

  • Jitsi Meet

    Jitsi Meet

共有ホワイトボード「Drawpile」

「Drawpile」は、複数のユーザーでキャンバスを共有することができるドローツール。Windows版、macOS版、Linux版がそれぞれ提供されている。スタンドアロンで利用する分には普通のドローツールだが、drawpile.netのサーバに接続するか、または自身のPCをサーバとして使用することで、他のユーザーと共同で同一のキャンバスに書き込むことができるようになる。

書き込んだ内容はリアルタイムに共有相手側にも反映されるため、Web会議アプリと組み合わせれば、会議中のホワイトボードの代わりとして使うことができる。

  • Drawpile

    Drawpile

オンラインカンバンボード「TAIGA」

トヨタが考案した「カンバン方式」はプロジェクト管理方法の1つだ。適切に導入すれば生産性を向上させることができると言われている。カンバン方式は文字通り作業指示書である「カンバン」が核となる方式なため、リモートワークではこのカンバンをスタッフの間でどのように共有するのかが課題となる。

「TAIGA」は、複数のユーザーがオンラインで共有することができるカンバンボード・アプリケション。共同作業を行うメンバーは自由にボード上にタスクを貼り付けたり、ドラッグアンドドロップで移動したりして、プロジェクトの進捗を視覚化することができる。プロジェクト管理だけでなく、シンプルに共有クリップボードとして使うこともできる。

本格的にTAIGAを導入する場合は有償サービスに加入する必要があるが、メンバーが3人までの場合は無償で利用できるプランも用意されている。

  • TAIGA Agile

    TAIGA Agile

無料のノート&ToDoアプリ「Joplin」

ちょっとした考えやアイデアを書き留めておく際、ノートアプリは便利なツールだ。「Joplin」は無料で使えるノート&ToDoアプリで、作成したノートをDropboxやOneDriveといったオンラインストレージを使って複数の端末で同期させることができる。ノートにはテキスト画像やハイパーリンクなども埋め込むことが可能で、HTMLやマークダウン記法にも対応している。

クラウド対応のノートアプリはJoplinのほかにもさまざまなものがある。Opensource.comは、作業効率を上げるために自分の要件に合ったお気に入りのノートアプリを見つけることを勧めている。

  • Joplin

    Joplin

グループチャットアプリ「Elememt」

リモートでのチーム開発においては、Web会議アプリだけでなくチャットアプリも必要だ。「Element」はオープンソースで開発されているグループチャットアプリで、もともとは「Riot.im」という名前で公開されていた(Opensource.comの記事ではRiot.imとして紹介されている)。

Matrixというリアルタイムコミュニケーションのためのオープンスタンダードなプロトコルを実装しており、汎用性の高い通信基盤を持っている点が大きな特徴。インスタントメッセージングや絵文字、画像の共有、オンデマンドのチャットルームなど、チームコラボレーションに必要な一通りの機能を備えている。

基本的な機能を備えた無料版のほかに、より機能拡張された有償版も用意されている。

  • Elememt

    Elememt

共有ドキュメント「Etherpad」

リモートでの情報共有には、共同で使用できるドキュメントアプリも有用とされている。「Etherpad」はオープンソースのオンラインエディタで、複数のユーザーが1つのドキュメントに同時にアクセスしてリアルタイムに編集することができる。

Googleドキュメントなどを使えば同様の共同作業が可能だが、Etherpadであれば、自前のサーバにホストして使うことも可能なため、外部のサービスに依存したくない場合などには特に重宝する。自前でホストできない場合は、Etherpadをホストするパブリックサービスも提供されているため、それを利用するという方法がある。

  • Etherpad

    Etherpad

共有スプレッドシート「EtherCalc」

Etherpadと同様に、オンラインで複数のユーザーが共同編集できるスプレッドシートアプリが「EtherCalc」だ。CSVやXLSX、ODSなどのファイルをインポートすることもできるため、既存のスプレッドシートも簡単にEtherCalcで共同編集できる。

  • EtherCalc

    EtherCalc

共有ストレージおよび共有カレンダー「Nextcloud」

オンラインストレージを提供するクラウドサービスであれば、DropboxやOneDriveなど、選択肢は多い。しかし、同様のサービスを自分の組織内でクローズドに立ち上げたいというようなケースでは「Nextcloud」が便利だ。Nextcloudはオンライン共有ストレージを展開するためのクラウドアプリケーションで、Dropboxのようなサービスを自分で用意できる。

Nextcloudでは、サービスを展開するサーバ側のソフトウェアと、デスクトップやモバイルデバイスにインストールするクライアントアプリのそれぞれが提供されている。クライアントアプリは、Windows、macOS、Linux、Android、iOSに対応しており、これをインストールすることで、ローカルのファイルやフォルダをクラウド上のストレージとシームレスに同期することができる。

また、Nextcloudにはプラグインでチャットクライアントやメールクライアント、ビデオチャットなどの機能を追加できるため、共有ストレージとしてだけでなく、さまざまなコラボレーション作業のハブとしての役割を持たせることもできる。

プラグインには公式で提供されているもののほかに、サードパーティ製の非公式のものもある。Opensource.comは、公式プラグインの1つであるカレンダーアプリを取り上げている。このカレンダーアプリはCalDAVプロトコルをサポートしているため、ほかの多くのカレンダーアプリと互換性があり、高い汎用性を備えている。

  • Nextcloud

    Nextcloud

まとめ

新型コロナウイルスインシデントは依然としてビジネスに影響を与え続けており、リモートワークが推奨される状況はまだしばらく続きそうだ。自宅にいながらもチームや同僚とのコミュニケーションを円滑にして作業の効率を上げていくには、効率的なツールを活用することが望ましいと考えられている。無償のツールでもさまざまな選択肢があるり、ぜひ一度試してもらえればと思う。