• 遊川和彦氏(左)と大平太プロデューサー

今作が遊川和彦作品ということを前提に考えると、作者の“思惑”が感じ取られ、さらに想像力がかき立てられる。

例えば、大ヒット作『家政婦のミタ』では“圧倒的な主人公”が危うい状態だった家族を崩壊させ、そこからの再生を描いたのに対し、『35歳の少女』は、“成熟していない主人公”が、すでに“崩壊してしまっている家族”を再生させていく物語になるだろうと予想していた。

その通り、家族それぞれのわだかまりは徐々に解消され、再生へと向かいつつあったが、前回の第5話ラストで、再生しかけた家族が再び壊れ始める……という新たな局面も見せている。崩壊していた家族が再生すると見せかけて、改めて崩壊の危機に立たせるという遊川作品らしい、想像していた“思惑”を優に超えてくる意外過ぎる展開。さて、これからどんなドラマが待ち受けているのだろうか。

■待ち受けるのはバッドエンディング…?

さらに、柴咲コウと遊川和彦がタッグを組んだ『○○妻』とも比較するとさらに興味深い。『○○妻』のラストは、主人公が突然不慮の事故で死亡して終わるという超バッドエンディングを迎えた。その2年前の遊川脚本の朝ドラ『純と愛』でも、主人公の夫がこん睡状態となって目覚めないまま……というバッドエンディングを見せているため、今作は一体どういったラストを迎えるのか、全く油断できない。主人公が年相応の成長を遂げ、家族も再生する……という既定路線のハッピーエンディングではない一端が既に見えてきたため、さらにラストがどうなってしまうのか楽しみと不安が入り混じってくる。

加えて言うと、遊川作品の前作『同期のサクラ』でも、主人公がこん睡状態から始まり、終盤でその理由が判明して目覚めるのだが、こん睡状態になっていた期間で同期の仲間たちが成長し、主人公が取り残される……という展開は、“こん睡状態”、“目覚める”、“成長”、“取り残される”など、今作との共通点が多い。その比較からも、この『35歳の少女』が、前作を経てどんな物語を用意してくるのか。

視聴者のあらゆる想像を裏切ってきた遊川作品だけに、今作もどんなドラマが待ち受けているのか想像は尽きない。あらゆる角度から、このドラマを見守っていきたい。