西武鉄道は10月8日から、『ドラえもん』50周年を記念したラッピング電車「DORAEMON-GO!」の運行を開始している。運行開始に先立ち、新宿線の上石神井車両基地にて、同車のお披露目セレモニーが開催され、報道関係者らに「DORAEMON-GO!」が公開された。
「DORAEMON-GO!」の名前は、「未来に向かって前に進む」との願いを込めて名づけられた。「GO!」の部分が「進む」を表すと同時に、列車の「号」とも掛け合わせたダブルミーニングになっている。
お披露目セレモニーでは、西武鉄道代表取締役社長の喜多村樹美男氏が、「ドラえもんの力も借り、人々に夢を与えられれば良いと思い、またドラえもんの列車を走らせる以上、安全安心な運行に努めて今後も頑張ってまいりたいと思います」と挨拶。夢を膨らませることと安全運行の両面で前向きな姿勢を見せた。
藤子・F・不二雄プロ代表取締役の伊藤善章氏もセレモニーに出席。藤子・F・不二雄氏の漫画の中にも鉄道が登場するほど、藤子氏が大の鉄道好きであったことに触れ、もし藤子氏が見たらきっと喜ぶかもしれないと話した上で、「私自身も大変興奮しましたし、大変おしゃれな中身(内装)になっていますので、ぜひご期待いただきたい」と語った。
続いて、『ドラえもん』のアニメーションを制作しているシンエイ動画の代表取締役社長、梅沢道彦氏が挨拶。シンエイ動画は田無にオフィスを構えているとのことで、西武鉄道と縁がある。梅沢社長は7年後に西武新宿線が開通100周年を迎えることを踏まえ、「シンエイ動画としても、西武線沿線の住民ですので、100周年に向けて今後も(西武鉄道と)いろいろなことをご一緒できればと思います」と述べた。
セレモニーではその後、西武鉄道の喜多村社長と上石神井駅管区長の岩上宏氏、藤子・F・不二雄プロの伊藤代表とシンエイ動画の梅沢社長によるテープカットが行われた。
「DORAEMON-GO!」に使用される車両は、西武鉄道の「スマイルトレイン」こと30000系。車体前面において、通常の車両ではグラデーションが施されていた部分に、ドラえもんの顔に見立てたラッピングが施されている。じっくり観察していると、ドラえもんが笑っているような印象を受ける。
車体側面は上から下までほぼ青1色。ただし、片側4カ所あるうち2カ所の乗降ドアに、ドラえもんの顔をイメージしたラッピングが施されている。窓の下を見てみると、白い文字で「DORAEMON-GO!」と記されていた。車体側面の他の部分がほぼすべて青いため、これらの白い装飾は外観上のアクセントととも感じられる。
車内に入ると、至る所にドラえもんをイメージした装飾が施されている。優先席を除く座席において、一部箇所の背もたれに4次元ポケットがデザインされており、まるでドラえもんの膝に上に座っているような気分になれる。
シートモケットはクラボウ独自の抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「CLEANSE / クレンゼ」を活用した住江織物の製品を採用。見た目の楽しさを追求することと、昨今の社会情勢に合わせた抗菌・抗ウイルスの両立が実現できている。
車内では、11月20日公開予定の映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の広告が全面的に掲示されていた。純粋な楽しさだけでなく、映画のPRも車両全体で行っている。
座席の両端に設置される仕切りにも、ひみつ道具を使うドラえもんが描かれている。おなじみ「タケコプター」「ビッグライト」をはじめ、アニメや漫画で一度は見たことのあるひみつ道具が描かれており、楽しさと懐かしさに浸れるだろう。仮にひみつ道具の名前を覚えていないとしても、「アニメや漫画で見たことがある」という記憶があるだけで十分楽しめるはず。
吊り革はドア付近と優先席付近を除き、ドラえもんの手をイメージしたデザインに。握ると、ドラえもんと手をつないでいるような感覚に陥る。車両間の貫通扉は「どこでもドア」をイメージしており、隣の車両に行くはずが、扉を開けたら別世界が待っているかのようなワクワク感をかき立てる雰囲気になっている。
車内の各部に貼られたステッカーには、鉄道を利用する上で守ってもらいたいマナーを『ドラえもん』のキャラクターたちが紹介している。
西武鉄道30000系のラッピング電車「DORAEMON-GO!」は、新宿線系統(新宿線、拝島線、多摩湖線萩山~西武遊園地間)で当面運行される予定。30000系の1編成のみだが、列車の走行位置は西武鉄道の公式スマートフォンアプリ「西武線アプリ」で確認できるとのことで、これを頼りに狙って乗ることもできる。
列車の位置情報を頼りにしない日常利用でも、運良く「DORAEMON-GO!」に出会うことができれば、「スマイルトレイン」でもあるだけに、思わず笑みがこぼれるかもしれない。西武新宿線に乗るとき、沿線を歩くとき、ぜひ青色の電車に注目して見てほしい。