ストレスにはさまざまな要因がありますが、人間関係によるストレスを抱えている人が多いのではないでしょうか。

厚生労働省の国民生活基礎調査(2016年実施)(※1)によると、回答者のうち約半数の人が「悩みやストレスがある」と回答しています。さらに、そのうちの約3割は「人間関係」が悩みやストレスの原因でした。

今まさに人間関係の悩みを抱えている方や、過去に人間関係でストレスを感じていたことがある方も多いでしょう。本記事では人間関係から生じるストレスで、悩まないようにするためにはどのようなコツがあるか、ご紹介します。

  • 悩ましい人間関係、ストレスを感じない方法は? 公認心理師に聞く

    悩ましい人間関係、ストレスを感じない方法は? 公認心理師に聞く

人間関係から生まれるストレスって?

人間関係の悩みから生じるストレスは「心理的・社会的ストレス」と呼ばれます。

そのほかのストレスとしては、暑さ・寒さ・ケガなどの「物理的ストレス」や病気や栄養不足などの「化学的ストレス」、空腹や疲労などの「生理的ストレス」があります。物理的ストレス・化学的ストレス・生理的ストレスは「心理的・社会的ストレス」と違って日常生活であまり意識されにくいストレスの原因として知られています。

人間関係には家族・友人・仕事仲間などさまざまな関係がありますが、どんな関係からストレスを感じることが多いのでしょうか。

人間関係の悩みは、大きく「家族との人間関係」と「家族以外との人間関係」に分けられます。2010年実施の国民生活基礎調査によると、特に女性は男性に比べて「家族との人間関係」および「家族以外との人間関係」のどちらにもストレスを感じている人が多い傾向にあることがわかりました(※2)。

人間関係で悩まないコツ

人間関係で悩まないようにするには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。

人間関係を円滑するためには自分のコミュニケーションスタイル、言い換えるとコミュニケーションのクセに気づくことが重要です。しかし普段、自分のコミュニケーションスタイルを意識している方は少ないのではないでしょうか。

あなたのコミュニケーションスタイルはどれ?

まずは、どのようなコミュニケーションのクセがあるのか、代表的な3つのタイプをご紹介します。

攻撃的タイプ : 自分はOK/相手はOKではない
受身的タイプ : 自分はOKではない/相手はOK
作為的タイプ : 自分も相手もOKではない

攻撃的タイプの人は「自分が優位に立ちたい」「間違いなどを相手に指摘されたくない」などの自己防衛の考えがあるようです。

受身的タイプのコミュニケーションでは相手を優先しているように感じられますが「相手に嫌われたくない」「自分が傷つきたくない」といった自己中心的な考えが裏にあるとされています。

作為的タイプの人は、受け身型と攻撃型の両方の特性があるといわれます。

これらのタイプは一つに当てはまるのではなく、攻撃的タイプに偏ったり受身的タイプに偏ったりと、自分や相手の状況によって変化します。

そして、このどれにも当てはまらないのが「アサーティブ」なコミュニケーションスタイルです。

特定非営利活動法人・アサーティブジャパンによると、アサーティブなコミュニケーションとは、自他を尊重し、「自分も相手もOK」といったマインドをもって相手とコミュニケーションをとること(※3)。つまり、相手の気持ちも自分の気持ちも尊重しながら、率直にフラットな立場でコミュニケーションをとることが、アサーティブなコミュニケーションスタイルです。

まずは、自分が普段とりやすいコミュニケーションスタイルは何かを意識して向き合ってみましょう。そして、自分のスタイルのクセに気づいたら、できるだけアサーティブなコミュニケーションに近づけるように心がけてみましょう。そうすることで、徐々に人間関係の摩擦が減り、人間関係で悩むことが少なくなっていくことが期待できます。

「怒り」をコントロールして、円滑な人間関係を

また、人間関係をこじらせることがある感情の一つに「怒り」があります。

怒りの気持ちは、うまく伝えることができないと相手との関係を悪くしたり、自分が我慢してしまってストレスが溜まったりすることがあります。怒りは表現するのも受け取るのも難しい感情ですが、うまく伝えられると物事を改善する方向に進めることができます。

怒りを感じたときには深呼吸を大きく4回以上行って、まず怒りのもとになっていることをゆったりと見つめてみます。深呼吸の際は吸うよりも吐くほうが心は静まりますので、吐くほうを意識的に行うのがおすすめです。

「何が起きたのか」「問題は何か」「自分はどう感じているか」「相手に望むことは何か」を自分に問いかけてみて、一つひとつ整理していきましょう。

そのうえで、ただ単に感情をぶつけるのではなく「怒っている具体的な理由」と「どうしてほしいと思っているか」を中心に、感情的にならずにゆっくりと吐露するように相手に伝えることができれば、相手も冷静に話を聞くことができるでしょう。

簡単にできる3つのストレス解消方法を紹介

続いて、人間関係でストレスを感じたときの対処方法をご紹介します。

ストレスへの対処方法は「ストレスを別のことで解消する」「ストレスに対する捉え方を変える」「ストレスそのものへの対応を変える」の3パターンに大別できます。

1.ストレスを別のことで解消する

まずは、ストレスを別のことで解消する方法について紹介します。

気分を落ち着かせるために、深呼吸をしたり、ゆったりお風呂に浸かったり、リラックスできる音楽を聴いたりしてみましょう。また体の興奮を静めるためにストレッチ・散歩・ジョギングなどをして体を動かすのもおすすめです。

2.ストレスに対する捉え方を変える

次に、ストレスに対する捉え方を変える方法について紹介します。ストレスに対する考え方には、大きく3つあります。

1つ目は、「期待を変えること」です。相手に無理な期待をしたり、自分勝手な希望を持っていたりしたら、現実に即した期待へと変えてみましょう。

2つ目は、「前向きに考えること」です。相手の悪い面ばかりを見ていると、自分も不快な気持ちになってしまいます。なるべく良い面を探して、相手への評価を変えてみましょう。

そして3つ目は、「自分にやさしい言葉を使うこと」です。ストレスを感じたら自分を癒やすやさしい言葉を自分自身にかけてあげましょう。自分を認めることで相手への見方も変わっていくはずです。

3.ストレスそのものへの対応を変える

最後に、ストレスそのものへの対応を変える方法もあります。

例えば、自己主張が苦手な人は、勇気を出して自分の気持ちや考えを相手に伝えてみます。もし、反対に我慢が苦手な人は、我慢できそうなときは我慢してみるように意識します。どうしても我慢できない相手に対しては、逃げてみたり避けてみたりする方法も有効です。

そのほかにも、相談相手を持ったり、第三者の助けを借りてみたりするといったソーシャルサポートを得ることができるというのも、対処方法として貴重です。

【まとめ】人間関係のストレスとうまく付き合っていきましょう

多くの人が悩む人間関係にまつわるストレスを減らす方法をご紹介しました。

心身の不調につながるといわれるストレスですが、少なすぎることも問題になります。例えば、定年退職などで仕事のストレスが一気になくなったことで、気力をなくしてしまう場合があります。ストレスは多すぎても少なすぎても健康によくありませんので、適度にストレスがある生活が実は理想的なのです。

人間関係のストレスも「人生のスパイス」として、コミュニケーション方法を工夫しながら、うまく付き合っていきたいですね。

出典 :
(※1) 厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況 Ⅲ 世帯員の健康状況
(※2) 厚生労働省「平成22年 国民生活基礎調査の概況 Ⅲ 世帯員の健康状況
(※3) アサーティブジャパン「3つのタイプとアサーティブとの違い