2020年10月から、酒税法の改正により、お酒にかかる税金が変わります。これを受けて大手ビール4社は価格改定の発表をしています。自分がよく飲むお酒が高くなるのか、安くなるのか気になるところでしょう。そこで、何がどのくらい値段が上がる(下がる)のか、お酒の種類ごとに解説します。
■酒税法改正の内容とは
酒税とは、酒類に課せられる税金のことです。現状では、お酒の種類、原料、原料の比率、アルコール度数などによって細かく税率が分けられ、これらが商品開発や販売数量に影響しています。こうした税率格差を解消する目的から、段階的に税率の構造を見直し、種類ごとに税率を一本化する予定です。
■酒類の分類
まずはお酒の種類を確認しておきましょう。酒類は大きく4つに分類できます。
<酒類の分類>
■ビールと発泡酒の違い
発泡性酒類の中でもビールと定義されるものは、麦芽比率50%以上、麦芽・ホップ・水・法定副原料のみを使用したものとされています。法定副原料とは米やとうもろこし、デンプンなど、あらかじめ定められている原料で、2018年から新たに果実やコリアンダー等の香味料が追加されています。この副原料は使用している麦芽量の5%以内という規定があります。
これらのビールの定義から外れてしまったものを発泡酒と言います。 具体的には、(1)麦芽比率が50%未満のもの、(2)麦芽比率50%以上であるが法定副原料以外のものを加えている、(3)麦芽比率50%以上であるが副原料が規定量を超えるものは発泡酒となります。
また、昨今台頭してきた「新ジャンル」は、麦や麦芽以外のものを原料としているもの、あるいは発泡酒にスピリッツなどのアルコール飲料を加えたものを指します。第三のビールとも呼ばれています。
■税額はどう変わる?
今回の酒税法改正の中でも影響の大きい、「発泡性酒類」と「醸造酒類」の税率がどう変わるか、グラフで見ていきましょう。
急な変更は消費者や酒類製造者への影響が大きいため、2020年10月、2023年10月、2026年10月と3段階に分けて、十分な経過期間を設けて税率の一本化を進めています。
<発泡性酒類>
このグラフを見てわかるように、ビールは値下げとなります。2020年10月から350mlあたり7円減税されます。最終的には350ml缶の酒税は54.25円となり、約23円の減税となります。
発泡酒(麦芽比率25%未満)は2026年10月までは変わらず、それ以降は350mlあたり7.26円増税となり、最終的にビールと同じ税率になります。
一方、新ジャンルは値上げとなります。2020年10月から350mlあたり9.8円増税となり、2023年10月には発泡酒の定義に含まれてしまい、これによって350mlあたり9.19円増税、2026年10月の最終段階ではビールの税率に統一されてしまうため、現状から約26円の増税となります。
チューハイは2026年10月までは変わらず、それ以降は350mlあたり7円増税となります。
日本酒(清酒)やワイン(果実酒)はどうでしょうか。
<醸造酒類>
日本酒は値下げ、ワインは値上げとなります。2020年10月から350mlあたり日本酒は3.5円の減税、ワインは3.5円の増税となり、最終的には日本酒は7円の減税、ワインは7円の増税となります。
■各ビール会社の主力商品はどうなる?
大手ビール会社4社は、酒税法改正を受けて、価格改定を発表しています。どの商品がどう変わるのか、まとめてみました。
<キリンビール>
<アサヒビール>
<サッポロビール>
<サントリーグループ>
(サントリービール、サントリーワインインターナショナル、サントリースピリッツ)
普段よく飲まれるお酒は、今回の改正で安くなりますか? 高くなりますか? ビール系飲料は種類が多いものの、税率による価格差は縮まる方向です。今まで安いから買っていた新ジャンルから、値下がりで買いやすくなったビールに戻るような動きが出るかもしれません。値上げとなるものでも、飲む回数を減らすことで家計への影響を抑えることができます。この機会に飲酒習慣を見直すのもいいですね。