今年7月にスタートし、ラジオリスナーのSNS上で盛り上がりを見せている『プラネット賞』。この企画は、月ごとにリスナーから投票を受け付け、「その月もっとも面白かったラジオ番組」を表彰するというものだ。

放送番組を表彰する賞としては、放送批評懇談会による『ギャラクシー賞』が有名だが、こちらが放送業界人によって選考されるのに対し、『プラネット賞』は一般ラジオリスナー有志によって選考される点が大きな特徴だ。

この賞の存在は、人気ラジオパーソナリティたちの耳にも入り、爆笑問題の太田光やパンサーの向井慧らが自らの番組で取り上げるなど、話題を集めている。

そんなプラネット賞を立ち上げたのは、会社員の岩井葉介氏だ。

9月27日に渋谷のユーロスペースで開催される「ラジオリスナーフェス」の仕掛け人でもある岩井氏だが、ふだんは放送業界とは関係のない業種で働く「一般人」という。

「リスナーが選ぶラジオ番組賞」という、これまでありそうでなかった仕掛けはどのようなきっかけで生まれたのか。また、プラネット賞はどんな目的を持ち、どんなことを目標としているのか――。

■「さらば青春の光にあげるための賞を作ろう」

ラジオリスナーフェス2020

岩井さんが主催する「ラジオリスナーフェス」

――プラネット賞は、どんな経緯で始まったのでしょうか。

1番最初のきっかけは、『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ 毎週土曜27:00~)で放送されたある企画を聞いたことでした。「とんでもないことやってんな、TBSラジオの深夜でこんな尖った企画を放送することがありえるんだ」と衝撃を受けて。

――まさか“タダバカ”がきっかけとは思いませんでした…。番組の内容から着想を得たのですか。

以前、「ラジオリスナーが (番組に)賞を与えるのはどうか」というアイデアをSNSに書いたら反応があったことを思い出して。その内容的にギャラクシー賞を取れるようには思えなかったので、「じゃあ、さらば青春の光にあげるための賞を作ろう」と。

――発想が斬新すぎますね…。

この企画が何も表彰されないのはおかしいぞ、と。なにか賞を差し上げたいという気持ちからプラネット賞を始めました。もし話題になって、それをきっかけに番組を聞いてくれる人がいればうれしいし、いまは『ラジオクラウド』で過去のアーカイブも聞けるので、「この回が面白いよ」というのを伝えるきっかけにもなればと思ったんです。

――「プラネット(惑星)賞」というネーミングが気になっています。これは「ギャラクシー(銀河)賞」に対するカウンターなのでしょうか。

ギャラクシー賞は、それこそ名だたる放送関係者の方によってしっかりと選考されているものですが、こうした「ちゃんとした賞」が取り上げることのないような、「とにかく面白かったけれど、何が面白かったのかは説明できない回、ただふざけただけのような回」にスポットを当てたかったんです。

■「プラネット賞」の仕組みとは

――プラネット賞の選考の仕組みを教えてください。

プラネット賞には、大きく分けて2つの選考過程があります。まず最初に、誰でも好きな番組を投票できる1次選考があり、そのなかから得票数の多かった上位4番組が2次選考に進みます。2次選考は50人の選考委員が各自の基準に基づいて行い、もっとも支持の集まったものがその月の「月間賞」として表彰されます。

――選考委員を構成するのはどんな方たちでしょうか。

僕がTwitterで相互フォローになっている方や、ラジオ番組のハッシュタグで活発に発言されている人などに声をかけて、下は10代の高校生から上は50代まで、さまざまな年代や職業のラジオリスナーに匿名で参加してもらっています。

――選考傾向に偏りが出ないよう、工夫していることはありますか。

そのあたりは慎重を期して、選考に偏りが出ないよう、さまざまな工夫を施しています。男女比などの属性的なバランスはもちろん、番組に投稿している人、していない人の割合も等しくなるよう調整しています。選考委員が全員匿名なのも、特定の個人が影響を及ぼしたり、逆に矢面に立たされたりしないようにという配慮からなのです。もっとも、「本当に50人も選考委員がいるのか?」とはよく言われますが…(苦笑)。

――選考委員に放送関係者は入っていますか。

忖度が生じないよう、選考委員に放送関係者は入っていません。有名なリスナーさんのなかには放送作家として活動している方もいますが、そうした人も入らないようにしています。