緊急事態宣言が解除された後、東京におけるテレワークの実施率は20.2%と、緊急事態宣言下の5月調査時(31.5%)と比べて低下し、オフィス回帰の流れが見られました(日本生産性本部の2020年7月調査)。しかし、今でも新型コロナウイルスが収束する目処が見えない中、一部の大手企業やIT企業は、デジタルトランスフォーメーションの戦略として舵をテレワークに振り切り、在宅勤務へのシフトが加速しているように見えます。

新型コロナウイルスによって行われた世界レベルの壮大な社会実験により、自宅などで働くテレワークは、一定の市民権を確立しました。休校・休園を伴った自粛期間中に在宅勤務を経験した育児中の社員は、在宅勤務を引き続き実践する中で、育児やワークライフバランスの調整がより容易になりました。

また、テレワークの導入に抵抗感を持っていた企業も、雇用者と従業員の双方が柔軟性を高めることで得られる恩恵に気付きはじめ、中でも、業績が高い企業は、柔軟な働き方によって従業員のエンゲージメントと定着率を高めるための施策を実行し、ようやく「長期的なテレワークの在り方」について検討を始めています。

最近の調査では、76%の労働者がフレキシブルワークの選択肢があれば雇用主への忠誠心が高まると答えており、分散型ワークフォースへの移行が進む中で、より広範な従業員の福利厚生の一部として重要な選択肢となるでしょう。

テレワーク時代に必要な働く場所とは?

そこで、長期的なテレワークの実践として、注目され始めているのが、デジタルワークスペースです。テレワークの訴求と同時にデジタル化が進む中、経費精算、顧客情報管理など企業のレガシーアプリケーションからSaaSアプリケーションまで、従業員はPCやスマートフォンのようなモバイルデバイスで膨大な数のアプリケーションや業務システムを利用しています。

しかし、それらへのサインインや業務ごとに行う画面遷移によって、従業員の集中力や時間が失われています。実際、従業員は1週間ごとに丸1日分の時間を、システムの検索、パスワードの入力、情報検索に費やしています。

デジタルワークスペースとは、アプリケーション、データ、デスクトップ配信などを管理するために設計された統合的なフレームワークです。従業員はデジタルワークスペースを利用することで、データが保存されている場所やアプリケーションを問わず、あらゆる場所から、あらゆるデバイスを通じて、アプリケーションやデータにアクセスできるようになります。

  • シトリックスのデジタルワークスペース「Citrix Workspace」

「仕事がどのように行われるのか」「誰がどこで仕事をするのか」を再考する中で、インテリジェントなデジタルワークスペースは俊敏性、生産性、ユーザーの満足度を高めることを可能にします。

デジタルトランスフォーメーションに投資している組織は、「仕事」を再定義しはじめ、変化する従業員の期待を理解し、実行に移しています。デジタルワークスペースの役割は、以下のようにまとめることができます。

  • 分散した従業員(マルチサイト、リモート、シフト制)をサポート
  • 従業員の生産性とエンゲージメントの向上 - ナビゲーションの効率を高めることで、従業員の時間をコアタスクにあて、仕事に集中し、気が散ることなく仕事をする作業環境の提供
  • どのような(モバイル)デバイスからでもセキュリティを保証
  • 実用的な洞察のための分析
  • 承認など、マネージャーのタスクを迅速かつ簡潔にし、効率化を実現。これにより、学習とキャリア開発のための時間が確保され、従業員のスキルアップにつなげることを実現
  • 企業の社会的責任と持続可能性の課題を支援(例:通勤時間を短縮して二酸化炭素排出量を削減するなど)。

新しい働き方で課題となる仮想空間におけるチームワーク

このように、デジタルワークスペースを活用し、新しい生活様式という名のもと、働き方はより分散していくでしょう。そこで、今後の課題として議論されているのが「仮想空間でのチームワーク」です。分散した状態における組織活動の在り方に課題がシフトしてきています。

働き方が大きく変わるなか、企業は今まで以上に「従業員体験」を意識した組織づくりが必要になってきているといえるでしょう。

長期的なテレワークへの移行には、プログラムや取り組み以上のものが必要となります。企業文化や従業員体験を維持・育成することは、これまで以上に継続的かつ意識的な活動である必要があります。

「仮想空間での組織作り」に必要な「従業員体験」とは?

「従業員体験」とは従業員が働くことで得る体験のことで、本質的には仕事に関わる人(同僚、マネージャー/リーダー、クライアント、ベンダー)とのコミュニケーションや、物理的・デジタル的な働く場所、作業プロセス、ツールのことでもあります。

さらに、組織の文化や価値観はこれらの相互作用に影響を与え、その結果、「従業員体験」に影響を与えます。「従業員体験」が今まで以上に重要な人材を惹きつけ、維持するために必要だからです。経済の先行きが不透明になる中で、従業員体験の向上はより重要になってきています。

そして、仮想空間の中での信頼関係、個人間のつながりの強さが相互作用を増やし、知識の共有や移転を促す傾向がみられます。

つながりとコミュニケーションをどう作るか?

従業員との交流が主にバーチャルなものとなり、孤立やメンタルヘルスが現実の問題となっています。今後、分散型の仮想空間でのチームワークが当たり前になるとすれば、従業員体験と組織文化を実現することは重要な課題となります。

新しく強化された施策を組織文化に組み込むことに関しては、迅速な解決策はなく、実験、改良、継続的な改善の絶え間ないマラソンです。 感染症拡大による経済的混乱から生じた新たな複数のストレス源を考慮して、メンタルヘルスプログラムの延長、危機カウンセリング、メンタリングなど、メンタルヘルス支援ツールを既に導入していることが重要です。シトリックスでも、4月から継続して、オンラインによるプログラム提供しています。

最も重要なことは、過剰なエンジニアリングをせず、行動をシンプルに保ち、時間をかけて繰り返し行うことです。以下、レジリエンスの高い分散型チームを構築するための重要なステップを紹介します。

ステップ1:従業員への積極的なヒアリング

ストレス要因、エンゲージメントの変化、ウェルビーイングを理解する。これは、信頼を築くのに役立ち、組織のアプローチにも反映されます。

ステップ2:必要だと思う以上のことを伝える

プロセス、能力、目的を明確にするだけでなく、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのかを明確にすることに焦点を当てる。可能な限り、透明性を保つ。

ステップ3:コラボレーションやネットワーキングを奨励

テクノロジーを使って人を集め、包摂性を感じるポジティブな職場文化をサポートする(例:バーチャルなコーヒーブレイクなど)。

ステップ4:チームがオフサイトにいる時、多くのコミュニケーションを期待

燃え尽き症候群(例:要求が高すぎてリソースが不足している場合)や退屈症候群(要求が低すぎる場合)の兆候がないかどうかを確認する。繰り返しになりますが、これらの変化を検知するためには、各チームメンバーと個別に高いレベルの関係を確保することが不可欠です。

ステップ5:多様性への感度

従業員の好みのスタイルは多様です。どのようにしてフィードバックを提供したいか(直接、または匿名アンケートなどで)、ブロックや誤解を克服するためにつながる方法を聞いてみてください。

不確実性と変化が増大している時代にあって、リーダーやマネージャーは、従業員が曖昧な状況を乗り切るための安定性、自信、敏捷性を発揮し、ポジティブな課題とビジネスの成果に焦点を当てることができるようにするために、重要な役割を果たします。

従業員体験は重要な人材を惹きつけ、維持するための中心的な要素であり、パンデミック後の職場環境の変化の中で、従業員体験は意識的な投資と育成を必要としています。

最終的には、(将来の従業員も含めて)多くの人が求めている人材プールが、組織が今どのように行動しているか、また、新しいタイプの従業員体験に向けて、仕事のやり方、プロセス、文化をどの程度うまく転換できているかによって判断されることになるでしょう。

IT部門と人事部門の連携の必要性

このような状況の中で、人事部が果たすべき重要な役割は、ITチームとの連携を強化することです。IT中心でチームの総合調整の仕組みを軽視してチーム運営を進めると信頼の低下を招き、チーム業績の低下につながる傾向にあるといいます。

人事部とIT部が密接に連携することで、従来のオフィス環境の外で可能な限り効率的に仕事をこなすために必要なデジタルツールを従業員に提供し、健康的なワークライフバランスを実現することができます。

また、新しいテクノロジーやツールをより広く企業に導入してもらい、業務効率を向上させるために、ビジネス全体でよりオープンなコミュニケーションラインを形成し、よりポジティブな従業員体験を形成することにも役割があります。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)


シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社
セールスエンジニアリング本部 エンタープライズSE部 部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。