KPT法という手法を聞いたことはありますか? KPTとは「Keep」「Problem」「Try」のそれぞれの頭文字であり、KPT法とは仕事を振り返ったうえで「Keep=よかったこと」「Problem=悪かったこと」「Try=次に試すこと」を判断し、その進め方を改善するためのフレームワークです。
本稿ではKPT法のメリットや実践するための手順などをご紹介します。
KPTとは
KPT法は一見簡単な分類に見えますが、ポイントをふまえて実践するため課題の整理や解決策を導き出すことができ、強力な手法になります。仕事のやり方そのものを見直すことで、次の仕事の成果をよりよいものにできるでしょう。
KPTを使うメリット
次の仕事をよりよい方向へと導けるメソッドKPT法ですが、実践をすると具体的にどのようなメリットが得られるのかをまとめてみました。一つずつみていきましょう。
メリット1:同じ方向で話し合える
企業がKPT法を実践する際、ホワイトボードに表を作成して、会議形式で進める場合があります。KTP法では問題や課題に対する現状分析が目の前の表にわかりやすく視覚化されるため、通常の会議よりも、参加者全員が同じ方向を向いて話し合えます。
メリット2:ポジティブな気持ちで行える
KPT法は最初に「Keep=よかったこと」を書き出すため、ポジティブな気持ちで振り返りができます。「Keep」を振り返ることで、「Problem=悪かったこと」だけにフォーカスした「ダメ出し会」を避け、メンバーの気持ちを前向きにする効果があります。
「Try」に関しては、個人の場合は「Try」してもっとうまくできている自分を想像してみましょう。「反省点もあるが、次からはこうすればいい」と考えながら「Try」の内容を明確に書き出すことで、モチベーションが上がります。
メリット3:客観的に整理できる
KPT法では、反省内容を表に書き出して問題を可視化します。その際、「Problem」だけでなく「Keep」と「Try」も書き出すため、さまざまな角度から現状に向き合うことになります。つまり、KPT法は悪かった点を挙げるだけの反省会とは違い、良かった点やチャレンジする点も含むより広い視野から、問題を客観的に整理できるのです。
メリット4:思ったことを話しやすい
通常の会議では、立場や人間関係によって、正直な意見や他人と異なる意見を出しにくくなる傾向もあるでしょう。しかし、KPT法では課題や問題点を表に書き込み、全員がその解決に向かって集中します。そのため、他人の反応を気にすることなく、自由に発言がしやすくなります。
KPT法の進め方
KPTを実践するにあたり、必要な手順とコツをまとめました。以下に記載した内容が「正解」というわけではないので、自分たちがやりやすい形にアレンジして実践してみるのもいいでしょう。
手順1:3つのセクションに分ける
まず「Keep」「Problem」「Try」に分類した表をホワイトボードに書きます。それから、その分類に応じた内容を付箋に書いて、それを表のそれぞれの区分の上に貼り付けていきます。こうすることで課題をめぐる状況が明らかになり、振り返りの手順と全体像を俯瞰できます。
手順2:継続することを書き出す
KPT法では、最初に「Keep」、つまり今後も継続することを振り返って書き出します。このとき、色つきの付箋を使ったり、色つきのペンで記入したりすると視認性が高まり、フォーカスしやすくなります。
手順3:課題を書き出す
次に「Problem」、つまり課題を振り返って書き出します。色つきのペンや付箋を使用するときは、「Keep」と違う色を使わなければ区別しづらくなるため、注意しましょう。
手順4:解決策を書き出す
最後に「Try」、つまり解決策を書き出します。その解決策は、「Keep」と「Problem」の内容を受けて考察し、そのうえで新たに実践していくものになります。
手順5:表を完成させる
「Keep」「Problem」「Try」の3つのセクションに書き出した付箋を貼り付け、それを眺めて再考し表を完成させます。
手順6:実行する
「Keep」と「Problem」を振り返り、「Try」で考えた解決策を実行します。そして、その結果を再度KPT法で振り返ります。このサイクルを定期的かつ短いスパンで回すことが重要で、それによって最終的な問題解決に近づけていきます。
KPTを使った振り返り例
ここからは、身近な問題を事例としてKPT法を用いた解決策を導いてみましょう。
例1:なかなか眠れなかった
このケースでは、「Keep」に「昼寝をしない」「カフェインが入ったものをなえるべく摂らない」「就寝時間を決めている」などがあげられます。「Problem」には「寝る直前までスマホ操作する」「枕があっていない」などが入るでしょう。
この「Problem」を踏まえて、「Try」には「寝る1時間前にスマホ操作をやめる」「静かで寝やすい環境にする」などと書きます。さらに「枕を変える」「アロマグッズなどを使う」といった項目を加えてもいいでしょう。
例2:ダブルブッキングしてしまった
このケースでは、「Keep」に「スケジュールを逐一確認する」「予定の前日リマインドをする」などが記入されます。次の「Problem」には、「予定管理をスマホだけでしている」「誘いをその場で承諾しがち」「予約している日を忘れることが多い」などが入るでしょう。
そこで「Problem」を踏まえて、「Try」には「予定をパソコン等にも同期する」「誘いの返事は時間をかけて考える」「予約の日にちの管理を徹底する」と書けます。また、「Keep」は「毎晩しっかり予定を再確認する」が追加できます。
例3:残業が長くなってしまった
このケースでは「Keep」に「先輩の働き方を参考にする」「夕食を食べすぎない」などが、次の「Problem」には「定時以降は集中力が散漫になりがち」「完璧な仕事を目指してしまう」などが入るでしょう。
そこで「Problem」を踏まえて、「Try」には「完璧を目指さず、レポートなどはまず提出する」が考えられます。また、夕食の量を少なめから少し増やした方が自分は頭が働くとして、「適切量の食事を摂り、頭を働かせる」が「Keep」に入れられます。
KPTを活用してみよう
KPT法に沿って振り返りを行うことで、現状どのような課題があるかが整理され、その課題に対してどのようにアプローチしていくかが見えてくるはずです。また、KPT法を日頃から意識し、「よかったこと」「悪かったこと」を見つける習慣をつけると、今まで見えなかったチームの長所や欠点が浮き彫りになり、より発見しやすくなります。
普段の業務やプライベートでも、なかなか課題を整理できないときは、KPT法を活用してよい解決策を導き出していただければと思います。