現実逃避とは、人間が困難に直面したときに本来しなければいけないことや、するべきことから意図的に目をそむけて先延ばしにしたり、不安から逃れようとする逃避行動のことです。
強いストレスを感じたときに心身にかかる不安を軽減するため、無意識のうちに起こる体からの防衛機制でもあります。特に、仕事やプライベートで困難に直面した時に思わず現実逃避をしてしまった経験が、誰にでも一度はあると思います。
現実逃避は心のSOSでもあります。心身の健康を取り戻すため、時には成り行きに任せてゆっくり休むことも必要です。決してダメなことではありません。
本稿では、どんなときに現実逃避をしたくなるのか、そして、現実逃避したくなったときに、どのように対処をすればいいのかについて紹介します。
あなたは当てはまる? 現実逃避の原因となる心の状態
将来に希望を持てない
将来に希望を持てなくなったとき、それまでの自分の努力は一体何だったのかと考えてしまい、現実から逃避したくなる気持ちが芽生えてしまいます。
例えば、実際に入社した会社の居心地が悪かったり、配属先が希望したものと違っていたときに、現実を受け入れられずにがっかりしてしまったときなど。仕事へのモチベーションが保てなくなってしまいます。
完璧主義
常に高い理想を持ち、自分や他人にまで完璧を求める人は、仕事中うっかりミスや失敗をしてしまったときに、そのプライドの高さから失敗した自分を受け入れることができず、自己嫌悪に陥ってしまいがちです。
また、自分の心の奥にいる「理想の自分」を演じ続け、現実での自分をおろそかにしてしまうような人も、現実逃避しやすいと言えます。
ストレスを感じやすい
ささいなことにストレスを感じるような繊細な人も、現実逃避をしやすい人と言えます。
仕事での人間関係において「相手からどう思われているか」など常に他人の顔色をうかがっていませんか? そうした不安はストレスとなり、心を疲れさせてしまいます。
また、人の言動にすぐイライラしてしまうような人も、ストレスを溜め込みやすい傾向にあります。
面倒くさがりである
目の前にある面倒な仕事をつい先延ばしにしてしまったり、何かと言い訳をしては怠けてしまう面倒くさがりの人も、現実逃避しやすい人です。
「できるだけ自分の好きなことをしていたい」との考えから、興味のない仕事を頼まれても途中で嫌になってしまい、やる気がなくなって現実逃避することがあります。
忙しすぎる
仕事が忙し過ぎて時間に追われ、体も疲れて心にもゆとりがないときほど、「何も考えずに好きなことだけしていたい」「どこか遠い所へ行きたい」などと考えるようになります。
多忙を極めると思考能力が低下することもあるため、そうした状況にある場合には、勇気を出して一度思い切り休むのも一つの手です。
自分に自信がない
自分の思うように仕事ができなかったり、計画通りに物事が進まなかったとき、「私なんかにできるわけない」と、すぐに悲観的になる人も現実逃避しがちです。
また、いつも自分に自信がなく失敗を恐れて常に困難から逃げているため、せっかくのチャンスまで逃してしまうことがあります。
人間関係で悩んでいる
職場での人間関係がうまくいかず、毎日会社に行くことが辛く感じてしまい、心のゆとりがないようなときに、今置かれている現実から逃げたくなることでしょう。
仕事では苦手な上司や同僚であったとしても、最低限のコミュニケーションを取らなくてはならない場面があります。どうしても辛い場合には、退職や転職を検討しましょう。
過度なプレッシャーがかかっている
仕事で周囲からの期待が大きく、それに応えるべく本人がミスをしないようにきちんと業務をこなそうと意識しすぎた場合、心身共に過度のプレッシャーがかかってしまうため、ストレスで疲弊してしまうでしょう。
「とにかく失敗しないように」と恐れることにより、精神的にも追い込まれてしまうため、目の前の現実から逃げ出したいと思ってしまいます。
仕事が難しすぎる
人それぞれ、持っている能力には違いがあり、自分の力量以上の仕事をこなそうとしても、それに対する知識や経験がなければ難しいでしょう。
自分に実力がないと思われるのが嫌で、上司や同僚に相談することもできずに仕事もストレスもひとりで抱え込んでしまい、そのプレッシャーから現実逃避したくなるのです。
現実逃避をしたくなったらやってほしいこと
現実から逃避したいと感じるときは、ストレスが蓄積されて心身共に我慢の限界が近づいているサインでもあります。
心が助けを求めているときには、いち早くSOS信号に気づき、心に負荷をかけているストレスを取り払えるようにしましょう。
ここでは、現実逃避をしたいときにするべきことを紹介いたします。
仕事の重要度を見極める
たくさんの量の仕事をこなそうとしても、それが自分のキャパシティを超えていたり、時間に追われることで心が折れそうになることもあるでしょう。
そのときは仕事の重要度を見極め、まずやるべきことに優先順位を付けていきましょう。緊急性のある重要な仕事から優先に進めて行き、時間の無駄を省く方法です。
優先順位をつけると自分でする必要性や緊急性のないものを後回しにしたり、他の人に割り振ることもできるためストレスを軽減できます。
仕事を細分化する
大きな仕事に取りかかるとき、何も考えずひとりでこなそうとした場合、仕事の終わりが見えずに心身共に疲労してしまいます。
そうならないためにも仕事に取りかかる前には、まず業務の細分化をし、上司や同僚と情報を共有した上でメンバーに仕事を振り分け、不必要な仕事があれば削ることも考えましょう。
このように業務を細分化し、効率化をはかることによって無駄な時間を削ることが可能になり、仕事やストレスをひとりで抱え込まずに済むでしょう。
一人で抱え込まない
職場の相性の合わない上司や、仕事上の付き合いのある取引先など、生きていく上で人間関係にストレスはつきものです。
また、仕事がうまくいかなかったり、将来への展望が見えなくなったとき、プライドの高い人は弱みを見せられないことも多く、ひとりで悩みを抱え込みがちになります。
そんなときは、思い切って信頼できる親や友人、それが難しいようであればペットに、今の正直な心境を話してみましょう。話すことによって、心がラクになるはずです。
心のSOSを見逃さないで!
人は、嫌なことがあったり、受け入れがたい現実を突きつけられたとき、自らを現実世界から切り離し、現実から逃避して自分を守ろうとします。
それは人間の心や体から発せられるSOSであり、一種の自己防衛機制でもあります。不安や受け入れがたい状況から目をそむけ、過度のストレスから自分を守ろうとしているのです。
そうしたときに、逃げたり、辛いことから距離を置いたりすることは決して悪いことではありません。どうしても辛い状況にある場合には、思い切って仕事を休んでみたり、リフレッシュのために旅行に出かけたりしても良いでしょう。
心が疲れてしまっていると、単純なミスが増えてしまったり、周りに気遣いして妙に疲れてしまったりするもの。自分の心から発せられるSOSを見逃してはいけません。