「やってはいけない」と思いつつ、ついやってしまうことのひとつに「先延ばし」があります。あとあと自分が苦しむことはわかっているのに、なぜわたしたちは先延ばしをしてしまうのでしょう? 習慣化コンサルタントの古川武士さんによれば、「先延ばし習慣の原因は『7つの感情』にある」そう。

  • 「先延ばし」の原因は7つの感情にある。心のブレーキを外せば、「すぐやる人」になる /習慣化コンサルタント・古川武士

いったいどうすれば、「7つの感情」に振り回されず、先延ばし習慣をなくせるのか――。習慣化のプロに、「すぐやる人」になる方法を教えてもらいました。

「7つの感情」が行動を妨げ、先延ばしを生む

わたしたちが「先延ばし」してしまう要因にはいろいろありますが、いちばんは心理的なストレスです。やるべきタスクに対するストレスを感じたとき、そのストレスから解放されたいがために先延ばしをする。先延ばしには、そういったメカニズムがあります。

そのストレスとは、感情といい換えてもいいでしょう。先延ばしを生む感情は、大きく7つにわけられます。

先延ばしを生む「7つの感情」

・面倒くさい
・つらい
・まだ時間がある(もう時間がない)
・自信がない
・失敗が怖い
・後悔したくない
・嫌われたくない

これらの感情があなたの心にブレーキをかけて、やるべき行動に移らせないようにする。そして、先延ばしをさせてしまうのです。

みなさんが実際に先延ばしをしたときのことを思い出してみてください。そのとき、これらの感情のどれかがみなさんの心にあったのではないですか? 「面倒くさい」「つらい」なんてわかりやすいですよね。面倒だしつらそうなことは先延ばしにしたく なります。「まだ時間がある」からと手をつけない。あるいは逆に「もう時間がない」からいまさら手をつけても無駄だと思うこともあるでしょう。

「自信がない」からなかなか行動に移せないし、「失敗が怖い」。失敗してしまったときのこをと想像して、「後悔したくない」とも思うでしょう。やるべき行動が誰かに頼まれた仕事だと、失敗して「嫌われたくない」という気持ちにもなるはずです。

先延ばし癖を解消する最強メソッド「チャンクダウン」

では、先延ばし癖を解消するにはどうすればいいのでしょう? 先延ばしは、先に挙げた7つの感情が心にブレーキをかけていることによって生まれます。であるのならば、そのブレーキを外してしまえばいいのです。

その外し方には、7つの感情それぞれによってちがってくる部分もありますが、共通する部分もあります。その共通する方法が、「チャンクダウン」というものです。「チャンク(chunk)」の意味は、「塊」。つまり、チャンクダウンとは、「大きな塊を小さく分解する」ことを表します。

そもそも、先延ばしの原因である7つの感情をわたしたちが持ってしまうのはなぜでしょう? それは、「やるべきタスクが大きくてあいまいなもの」だと感じているからなのです。

たとえば、完成までにどれくらい時間がかかるか見当もつかない、非常に手がかかりそうな資料を作成するとします。単純にそのタスクは「大きい」といえます。そして、大きいだけにどこから手をつけていいのかわからないため、「あいまい」にも感じられる。だからこそ、7つの感情を持ってしまうのです。

だったら、「大きくてあいまい」なタスクを「小さくて明白」なタスクにしてあげればいいだけのこと。そのためには、タスクをどんどん分解していくのです。「資料を作成する」という大きくてあいまいなタスクを、たとえば「アウトラインを考える」「タイトルを考える」「図表作成に必要なデータを集める」……など、小さくて明白なタスクに分解するわけです。

そうすれば、一つひとつのタスクに必要な時間も見えてくるでしょう。「タスクひとつあたり15分くらいで終えられそうだ」と感じたなら、着手もしやすくなりますよね。そして、チャンクダウンの結果、15分で終えられそうなタスクが8つになったのなら、「2時間くらいで完成できるかな」と先も見えてくる。そうすればしめたもので、「意外と簡単にできそうじゃないか!」と感じて、先延ばしすることはなくなります。

チャンクダウンが最後までやり遂げるモチベーションも生む

このチャンクダウンは、「小さな達成感」を増やしていくことにもつながります。それが、一度はじめた行動を持続的に進めていく原動力にもなる。

登山をする人たちは、山頂だけを目指しているわけではありませんよね。高い山を登りはじめるときに、山頂だけがゴールだと考えてしまうと、それこそ途中で心身が消耗したときに、「まだまだ先は長いな……」と感じてリタイアしてしまうでしょう。

でも、実際に登山をする人たちは、山頂までのルートのあいだに、山頂というゴールとは別に「小さなゴール」ともいえる目標地点をいくつも設定しています。すると、その小さなゴールに到達するたびに、小さな達成感を得ることができる。そして、5合目に達したなら、「次は6合目だ!」といったふうに、小さな達成感が新たなモチベーションをバトンリレーのようにつないでくれます。そうして、はじめた行動を途中で投げ出すことなく続けられるのです。

先延ばししたくなるようなタスクを着手しやすくする。そして、一度はじめたら最後まで投げ出すことなくやり遂げるためのモチベーションも生んでくれる。そんなふたつの効果を持つのがチャンクダウンです。先延ばし癖を自覚している人は、ぜひ試してください。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子