キャスト陣について、中田監督はどう感じたのか。まず、本田翼と新田真剣佑については「天性の勘がある人」と分析する。
「本田さんは女優活動以外にもCMなどでのタレント活動やYouTuberとしても活躍されています。その今の時代を吸収されているほか、非常に集中力の高い女優さんです。新田真剣佑さんは、フォトジェニックで男性から見てもホレボレするようなルックスの魅力がまずひとつ。計算したお芝居というより、こうすれば役の良さが出るんじゃないかということが本能的に感じられる方のようですね。お2人とも、今風のセンスの良さがありました」
次に、柄本時生、早乙女太一、前野朋哉だ。
「柄本さんとは、お父さん(柄本明)と以前から知り合いで、自然と親しみは持っていたのですが、味わい深いといいますか、リアリティのある地に足がついた役者さん。早乙女さんには、その身のこなしに感心させられました。特に本番では、おとなしい印象があった事前の本読みとは打って変わっての生き生きとしたお芝居を。劇中に“誰かが嘘をついているのではないか”と皆が無言になるシーンがあるのですが、私はその時の早乙女さんの表情にひどく魅せられました。前野さんはご自身の役柄の過去をしっかり研究して“現在”のお芝居に反映させてくれ、『ああ、こういう人いるよね』というリアルなお芝居を。結果、前野さん演じられる北川淳二は、私が最も親近感を持つ人物となりました」
齋藤飛鳥は、この物語のキーとなる女子高生を演じる。
「過去のシーンのみでの出演で、役について最初は戸惑いがあったようです。ですが現場に入ってからは迷いなく、指示通りのお芝居をしていただきました。彼女演じる由美子が、野村(新田)や藤原(柄本)に接近するシーンがあるのですが、これは皆さんが見てもドキッとするような映像になったと思います」
前田敦子とは『クロユリ団地』で仕事し、信頼し合う仲。
「私は彼女を“あっちゃん”と呼んでいるのですが(笑)、これまでのあっちゃんのイメージを覆すようなお芝居を見せてくれました。本作はケレン味たっぷりでもあるので、リアルな青春映画のようなボソボソとしたしゃべり方ではなく、輪郭がシャープなお芝居を役者さんにやってもらいました。あっちゃんはこれを歌舞伎の見得のような、そんなインパクトを感じさせるお芝居を見せているので、ぜひ注目してみてください」
■ホラー&サスペンス、交わらない2つのジャンルが融合
ところで中田監督と言えば、本作のみならず、8月29日スタートの連続ドラマ『恐怖新聞』(東海テレビ・フジテレビ系)でも監督を務めている。
「これは本当に偶然。そもそも私はもともとテレビをやっていましたし、映画の仕事だけをやっているわけではない。映画でもテレビでも、自分がやりたいと思う仕事をやっているなかでこうなってしまったのですが、でも確かに。近年の私にしては珍しいことですね(笑)」
そんな中田監督をして「怖い」と感じさせるものは何だろう?
「野獣ですね。山の中に入って野生生物と接触すると草食動物ですら怖い。例えばペットだと触れ合えた気がするのですが、野生生物は、まったく意思疎通ができない。これが怖いんです!」
最後にメッセージをもらった。
「本作はサイコサスペンス的ではありますが、齋藤飛鳥さん演じる死んだ女子高生の情念が関連しているため、ホラー要素もあります。ホラーとはこの世ならざる者が支配することがメインのドラマなので、ホラーとサスペンスが融合しているといったほうが良いでしょうか。果たして、いなくなった同級生は、どうしたのか、殺されたのか。そして7年前の女子高生の死の真相は? 楽しみにしていてください」
●中田秀夫
1961年、岡山県出身。映画監督デビュー作『女優霊』(96年)における、斬新な恐怖描写で注目を集める。『リング』(98年)、『リング2』(99年)でJホラーブームを巻き起こし、その後も、『仄暗い水の底から』(02年)などで、ハリウッドからも注目。『ザ・リング2』(05年)でハリウッド進出し、全米映画興行成績1位を獲得した。他の監督作品に『暗殺の街』『ガラスの脳』『サディスティック&マゾヒスティック』『カオス』、『ラストシーン』『怪談』『L change the WorLd』『スマホを落としただけなのに』『貞子』など。ドラマは7月26日放送『リモートで殺される』(日本テレビ)、8月29日スタート『恐怖新聞』(東海テレビ)、映画は8月28日公開予定の『事故物件 恐い間取り』が控える。