緊急事態宣言の発令により、企業はテレワークの導入を余儀なくされました。その結果、家に居る時間が長くなり、ついつい間食の回数が増えますよね。さらに、オンライン飲み会でも、自宅にあるものをダラダラ食べたり、飲んだりしてしまいます。

当然ながら、運動不足になりがちとなり、体重が増えてしまった人も多いと思います。そんな皆さまへ、本稿では歯学博士/口腔外科評論家の立場から、お役に立つアドバイスを差し上げます。

  • テレワークで「コロナ太り」していませんか?

簡単なコロナ太り対策はキャベツ

テレワークなど新しい生活様式は分かっていてもストレスになります。ストレスは食欲を増進させ、間食につながり、特に甘いものを食べると血糖値が急上昇し満足します。しかしその後、血糖値は急降下するので、「お腹すいた!」感に襲われ、さらに間食が増えてしまいます。

そして、間食でカロリーオーバーとなり「コロナ太り」に。コロナ太り対策には、ストレスがかからず、確実に結果が出るダイエット方法が良いですよね。実は、この条件にピッタリなダイエット方法があります。

アメリカのブリガムヤング大学(ライアン・エルダー博士ら)では、ソシャク音(食事をするときの音)と食事量の関係を研究しました。

・うるさい環境音
・静かな環境音

の両環境での食事の量を比較したのです。

その結果「静かな環境音」で食事をした方が、食事量は少なくなりました。特に「バリバリ」や「サクサク」するソシャク音の食べ物が効果的でした。「うるさい環境音」より「静かな環境音」の方が、3割以上も食事量が減りました。

食事コントロールは「よくかみ」「ゆっくり食べる」ことで、満腹中枢を刺激し、食事量を減らすことがコツです。つまり「静かな環境音」で「歯ごたえのあるもの」を食べると、ダイエット効果は高いのです。それが「静寂千切りキャベツダイエット」です。

方法は、いたって簡単。家での1食の主食を、千切りキャベツに置き換えます。音楽、テレビ、ラジオは切り、そして静かにキャベツをソシャクする音に集中します。

千切りキャベツの料理方法は、お好みで良いです。千切りキャベツにカレーをかけても、丼のように何かをトッピングしても良し。トリのササミやカニカマもいけます。もちろん、サラダとして召し上がるのもOKです。

千切りキャベツを食べるときのバリバリするソシャク音はハンパなく、歯ごたえがあります。よくかまないと、飲み込めません。食事量に制限はありませんから、お腹いっぱいに食べられます。好きなものをかけて、お腹も満足、心も満足、です。

これを数日続けると、徐々に食事量が減ります。好きなものをトッピングしているので、ストレスは全くありません。コロナ太りに効果的なのは、「静寂千切りキャベツダイエット」です。

テレワークが顎関節症を招く!?

テレワークだと、自宅のテーブルの上に置いたPCを覗き込んでいませんか? 会社とは仕事環境がずいぶん変わりましたね。そんな環境で注意してもらいたのが「顎関節症」。

顎関節症は「口が開かない」「顎が痛い」「口を開けると音がする」症状があります。テレワークを始めた人には、重症の顎関節症になる危険性があります。

顎関節症は、下顎へのさまざまな種類の負担が顎の許容量を超えた時になります。原因は一つではなく、複数の原因が重なり合って、顎関節症になるのです。この原因は「習慣」。

ものを食べない時は、上下の歯はわずかに開いています。しかしテレワークに夢中になると、無意識に緊張して、上下の歯を噛み合わせてしまいます。これは「TCH(tooth contacting habit:歯列接触癖)と呼ばれ、顎を動かす筋肉や顎の関節に負担をかけて、顎関節症の原因となります。TCHがあると、顎関節症の痛みが続くなど、悪化するリスクが2倍です。

前屈みの姿勢や、猫背も顎関節症の原因です。テレワークでは、まさにこの姿勢になります。息抜きでテレビゲームやスマホをする人も居るでしょうが、それらも同様です。下顎は、頭の骨と筋肉にぶら下がり、振り子のように自然とバランスが保てる位置に納まります。テレワークでの前屈みや猫背は、下顎が本来と違う位置にぶら下がり、顎の関節への負担になります。

また、コロナ太り対策として、血糖値を上げずにすむオヤツを選ぶ人も多いでしょう。そこでガムを選ぶ人も多いですが、ガムもかみ過ぎには注意してください。顎の関節への負担になりますからね。

テレワーク中心の新しい生活様式での生活習慣が、顎関節症を引き起こします。注意してください。

ムシ歯も歯周病も「治らない」

テレワークの間食増加で、最も気を付けたいのがムシ歯と歯周病。間食は、ムシ歯と歯周病の両方のリスクを上げます。食事は歯をムシ歯にさせやすい酸性にしますが、時間が空くと歯は回復します。しかし間食は、歯が回復する時間を与えないので、ムシ歯になりやすいです。

また間食は、歯周病の原因菌を増殖させて、歯周病を悪化させやすくします。そして本当に怖いのは、ムシ歯も歯周病も「治らない病気」だということです。

ムシ歯の原因はムシ歯菌。歯周病の原因は歯周病菌です。どちらの菌も、口の中にいつも居る「口腔内常在菌」で、既得居住権を行使して、口の中に住み着き、何をやっても居なくなりません。

「ムシ歯は削って詰めて治した」「歯ぐきの腫れがなくなったから歯周病が治った」は間違い。ムシ歯と歯周病は完治しません。ただ目に見える症状がなくなっただけで完治していません。これを医療用語では「寛解(かんかい)」と言います。

「完治」とは、治療を終えて、病気がなくなった状態を言います。足の骨を折った場合、治ると「完治」です。「寛解」とは病気の症状がほぼ消失した状態を言います。しかし再発の可能性があるので、治療の継続と定期管理が必要。リウマチの場合は、症状が消失すると「寛解」です。

ムシ歯菌と歯周病菌は、菌が常に口の中に居るので、完治でなく「寛解」、その後も症状が出る可能性はあります。ですから治療の継続と定期管理が必要です。最新の歯科医療は「目に見える症状を抑えて、その状態をキープすること」が目標ですから、「歯の病気は完治する」と勘違いしないでください。

歯医者は「痛くなったら行くところ」ではありません。完治しないムシ歯と歯周病とは、共存していく「ウイズ」の付き合いをしてください。