誰にもみとられることなく自宅で亡くなり、死後、長らく発見されない「孤独死」。その人の部屋を清掃し、残された遺品の中から、思い出の品を遺族に引き渡す「遺品整理人」…。

フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、27歳の遺品整理人・小島美羽さんに密着した『孤独死の向こう側 ~27歳の遺品整理人~』を、21日に放送する。

孤独死の現場を“ミニチュア”で再現し、なぜ孤独死が起こるのかの本質を伝える活動で注目を集める小島さん。社長の増田裕次さんと二人三脚で、日々向き合っている彼女から感じた“強さ”とは。密着したオルタスジャパンの木村実咲ディレクターに話を聞いた――。

  • 孤独死の現場に立つ遺品整理人・小島美羽さん (C)フジテレビ

    孤独死の現場に立つ遺品整理人・小島美羽さん (C)フジテレビ

■孤独死の現場で感じた「生々しさ」

「私はもともとミニチュアが好きなんですが、そのことについて調べていく中で、本業が遺品整理人の方がいるという形で小島さんの存在を知ったんです」という木村氏。

さらに、「今、リアルタイムで誰とでも連絡を取れたり、何をしているのかをシェアできたりする時代なのに、昔よりも1人で亡くなる方が増えているというデータがあって、それがすごく寂しいなと思ったんです。私は田舎出身なのですが、地元だと隣のおばさんが『野菜たくさん採れたから!』と袋いっぱいに持ってきてくれるようなことが頻繁にある環境で22年間育ちました。それが東京に出てきたら、隣に住んでいる人が男性なのか女性なのか、おじさんなのか大学生なのかも分からない状況にいきなり変わって、これは“孤独死”になってしまう人もいるだろうなと常々感じていたんです」という。

こうして、「ミニチュア」と「孤独死」という従来から関心を持っていたテーマを兼ね備える小島さんに自然と興味を持つようになり、密着することになった。

密着取材は、もちろん“孤独死の現場”にもおよぶ。

「最初に部屋に入る前は、果たして自分が受け入れられる光景なのか不安だったんですが、実際に入ってみると普通の部屋だと思ったんです。でも、それから遺品の探索が始まると、故人が亡くなる2~3日前にコンビニで買ったレシートが床に落ちてたりしていて、『あぁ、ここに住んでいて亡くなった方は、本当に数日前まで自分と同じように生活してきた人なんだろうな…』というのを目の当たりにして、一気に想像していたのとは違う生々しい感じがしました。この空間で1人で息絶えたんだというのを実感して、自分の中に何かグッとくるものがありました」

■「自分の家族だと思って清掃する」

遺品整理人は防毒マスクをつけ、靴もビニールで覆うという装備で作業を行うが、意外だったのはベテランの増田さんが、現場で吐き気をもよおしていたことだ。

「実は、増田さんは遺品整理人になった時は大丈夫だったそうなんですけど、現場を重ねていくうちに“人の死”というのを強く意識するようになって吐き気がするようになったとおっしゃっていたんです。私はてっきり逆で、慣れていくものだと思っていたんですが、自分にとって“人が死んだ部屋に入って清掃する”ということがリアルになったときにそういう症状が出てきたという話を聞いて、驚きましたね」

つまり、この吐き気の要因は現場の悪臭ではなく、仕事に臨む姿勢から来ているものだったのだ。

一方の小島さんにはそうした場面がなく、「キャリアのある増田さんさえ滅入ってしまうようなところでも、小島さんは『私がやります』と淡々と部屋に入っていったりするんです」。そんな彼女からは、持って生まれた精神的な“強さ”を感じたという。

「17歳で父親と死別したときに『何もしてあげられなかった』という後悔の経験が大きかったそうなんですが、『どの現場も自分の家族だと思って清掃するんです』とおっしゃっていて、それが実際の遺族の方への対応や雰囲気でも感じられたので、やっぱり正義感が強い方なんだなと思いました。20代なかばの女性が『遺品整理人になって良かったと思う』と断言して誇りを持っていることも、同年代の女性としてすごく尊敬できます」