藤井猛九段が得意の四間飛車で勝利。鈴木大介九段は3組へ降級
第33期竜王戦2組昇級者決定戦(主催:読売新聞社)の▲藤井猛九段-△鈴木大介九段戦が15日に東京・将棋会館で行われました。本局は1組への昇級を目指す戦いであるとともに、敗れると3組への降級が決まってしまう、裏の大一番。この勝負を制したのは藤井九段でした。
両対局者と久保利明九段は振り飛車のスペシャリストであり、「振り飛車御三家」と呼ばれています。そのような両者の対決ですから、本局は相振り飛車になるのかと思いきや、藤井九段の四間飛車に鈴木九段は居飛車を選択。対抗形となりました。実は過去の対局を振り返ると、対抗形は珍しくありません。最も有名なところだと、第12期竜王戦七番勝負が思い出されます。このときは5局とも藤井竜王(当時)が居飛車で戦い、4勝1敗でタイトルを防衛しました。
本局、鈴木九段は近年流行している、「ミレニアム囲い」に組もうとします。「ミレニアム囲い」はその名の通り、2000年ごろに流行した囲いで、20年後に再び脚光を浴びています。しかし、藤井九段は序盤から積極的に銀を繰り出し、鈴木九段が囲いを組み上げる前に戦いを起こしました。
華々しい駒の交換の末、藤井九段は二枚飛車で、鈴木九段は二枚角で敵玉に迫る展開になりました。銀得を果たした鈴木九段はその銀を自陣に投入し、金銀五枚の鉄壁の守りを構築。リードを奪ったかに見えました。
しかし、そこから藤井九段の歩を用いた巧みな攻めがさく裂。歩を突き、さらに歩を打って働きのいい角を追い払ってから、歩を突き捨てます。これが二枚飛車を生かしたうまい手作りでした。銀1枚を囲いから遠ざけ、金頭に香捨ての強手を放って技あり。この香を鈴木九段は取ることができず、藤井九段は金香交換に成功しました。
鈴木九段は働いていなかった馬を盤上中央に引き付け、藤井九段の美濃を崩そうと頑張ります。しかし、藤井九段は緩急自在の指し回しで差を縮めさせません。最後は銀捨ての寄せの決め手を放ち、93手で勝利を収めました。
本局を制した藤井九段は、2組の残留を決めました。また、あと3つ勝つと1組へ昇級することができます。一方、敗れた鈴木九段は3組へ降級となってしまいました。鈴木九段は前期3組で優勝して2組へ上がってきただけに、2組のレベルの高さが分かります。