TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』や映画『舟を編む』など、多くのドラマや映画のロケ地として知られる東京・神保町の居酒屋「酔の助」が、建物の老朽化と新型コロナウイルスの影響で5月28日に約40年の歴史に幕を閉じた。

  • 「酔の助」店内で撮影された店長・一山文明さんの写真

4月8日より臨時休業していたが、5月15日に公式ツイッターで「この度都合により5月28日をもちまして40年の営業を終えさせて頂くこととなりました」と閉店を発表。営業再開することなく、のれんを下した。

ツイッター上では閉店を悲しむ声や感謝のメッセージが多数寄せられ、『逃げ恥』公式ツイッターも「撮影にご協力頂き、素敵な空間と時間をありがとうございました。40年間本当にお疲れ様でした」と感謝。同ドラマの脚本家・野木亜紀子氏もツイッターで「自分でも驚くほどショックを受けている。えっ本当に? いつまでも あると思うな 好きな店」と惜しんだ。

懐かしさを感じる居心地の良い空間と、名物の「ガンダーラ古代岩塩のピザ」をはじめとする豊富なメニュー。ドラマや映画のロケ地としても愛されてきた店が、閉店のお知らせコメントだけで終わってしまっては寂しすぎる……。あまり話したくないという気持ちかもしれないと思いながら店側に連絡をとったところ、店長の一山文明さん(66)が快く取材に応じてくれ、閉店の決断や今の心境、思い出などを語ってくれた。

■4月に入り売り上げ急減「このまま続けるには…」

一山さんによると、3月の売り上げは1日平均約40万円とコロナの影響はほとんどなかったが、4月になってから急激に下がったという。「4月になって一気に来ました。今まで経験したことのない数字になって、このままやっても家賃が出ていくだけという感じに。緊急事態宣言は解除されましたが、ステイホームはまだ続くだろうし、店を開けても6月いっぱいはダメだろうなと思いましたね」とコロナによる影響を明かした。

閉店という決断には、建物の老朽化も影響。「どうしても老朽化はね。それが前提にあり、そこへきてコロナでしょ。このまま続けるにはしんどくなってしまった」と打ち明け、「70歳まではやろうという気持ちでいたので志半ばで残念ですが、いかんせん売り上げを見てしまうとガクッと。忙しい分には何の問題もない。365日仕事していてもいいんですよ。ただ、1日の売り上げ2万、3万に落ち込み、暇になるとなかなか力が湧かないというか。やっぱり毎日150~170人のお客さんが来て、走り回っているのが性に合っているんですよね」と寂しそうに語った。

■撮影協力は基本断らず「ドラマが好きなので」

ドラマや映画のロケ地として協力するようになったきっかけを尋ねると、先代の店長の頃から、ワイドショーの再現VTRの撮影などで使われていたという。そして、二代目の一山さんのときに、ドラマや映画、さらにCMの撮影でも使われるように。「僕のときは、最初の頃、テレビ東京やフジテレビの2時間ドラマの撮影が入り、そしてボーダフォンのCMなども始まって。映画は『舟を編む』が最初で、それ以降いろんな撮影がありましたね」と振り返る。ちなみに、4月6日にもドラマの撮影があり、それが最後の作品になるという。

一山さんは「基本的に僕はドラマが好きなので、別にいいですよって」と、ドラマ好きということもあり、スケジュールさえ問題なければ断ることなく撮影に全面協力。「撮影は早朝6時か7時が多かったです。たまに深夜の撮影もあって、『寝てていいですよ』って言われたので寝たら、『いびきがうるさい』って注意されたことがありました」と笑い、「『タモリ倶楽部』は3回くらい来ましたが面白かったですね。あと、『相棒』も5回くらい来ました」と振り返る。