リコージャパンでは、月あたりの平均残業時間が2016年度には10.6時間だったものが、2019年度には8.9時間になり、年間総実労働時間も1867時間から1744時間へと低下。平均年休取得率も52.5%から67.5%へ向上するなど、働き方改革の効果は得られている。また、2019年度にテレワーク先駆者百選 総務大臣賞に選出されるなど受賞機会も増え、企業価値向上にも好影響が出ていたという。

同社は長い時間をかけて働き方改革に取り組んできた企業だが、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言でさらに大きく変化した。

「今までは会社をキーとした業務設計や文化・風土があり、会社へ行かなければ情報が得られない、コミュニケーションが取れない、手続きができないというような空気がありました。リコージャパンでは、それをワークフローの自動化をはじめいろいろな取り組みで、営業やカスタマーエンジニアでも、基本的に出社しなくていいように変えてきました。もう1つの壁は組織の風土で、朝は会社で朝礼をやろう、指示はフェイスtoフェイスでないとという感じがありましたが、今回、強制的にそれができなくなり、みんなテレワークを経験したので、さらにテレワークへの理解が進んだと感じています」と加藤氏は語る。

松木氏も「出社率を抑制するということで、今まで在宅勤務に抵抗があった上司も在宅勤務をせざるをえない状況に置かれて実際に行っています。そして、実際にやってみたらできるね、と言うのです。やってみたら、在宅勤務ってなんだこんな感じなんだと言います。自分の中での固定概念が崩れたというようなところがあり、かなり急速に在宅勤務が定着してきているように感じます」と語った。

社内で行われたアンケートでも、オフィスで机を並べていれば自然と入手できたような情報が入ってこないなど工夫の必要性は感じているものの、必要なコミュニケーションはある程度取れており、業務も概ね計画的に行われている様子が見えたという。不安や不満を抱えている人もいない訳ではないが、大きな問題は出ていない状態のようだ。

「新型コロナウイルスが収束した後も働き方はだいぶ変わって行くのだろうなと感じています」と加藤氏。

リコージャパンは約18000名の社員に対して、営業職が8100名、サービスエンジニアが4600名と7割近くがテレワークにしづらい職種に就いている。それでも販売活動を積極的にリモート化した上で必要な部分には直行直帰で対応するなど、多くの社員は必ずしも出社することなく業務を進めることができている。長年の準備と思い切った制度拡張の結果成功した全社的な在宅勤務が、最終的にどのような評価になるのか、今後の働き方にどういった影響を与えるのかが気になるところだ。