NECネッツエスアイ 営業統括本部 マーケティング本部 本部長の吉田和友氏

NECネッツエスアイは現在、全社員が制限のないテレワークで勤務できるようになっているが、これに至る取り組みは2007年から始まっていたという。

「元々は2004年頃から考え始めたものでしたが、ちょうど事業環境の転換期でもありました。どう舵取りするかと考えた時、オフィスとして従来の島型にデスク配置をしたオフィスからグループアドレスに変更するとともに、ノーペーパーワークに取り組むことになりました」と経緯を語るのは、NECネッツエスアイ 営業統括本部 マーケティング本部 本部長の吉田和友氏だ。

  • 2007年からの働き方改革

ノーペーパーワークは紙から離れ、情報をデジタル化することで情報自体を個人専有から共有へと変化させる狙いをもった取り組みだ。その後、社内のフリーアドレス化が進められた結果、状況、必要に応じてチームアドレスやフリーアドレスで執務ができるオフィス形態になっている。

  • 働き方改革に取り組む意義

「フリーアドレス化しても毎日同じ席に座る人がいるという話はよくあり、推進のために移動を強要するような仕組みを導入している例も聞きますが、NECネッツエスアイでは目的・必要に応じて席を選択するためにフリーアドレス化をしています。フリーアドレスは、あくまでも手段の一つと考えています。」(吉田氏)

  • 島型からチームアドレスに

会議も必要と内容に応じて場所や空間を選択できるようにしている。会議室という閉じた空間で行うものだけではなく、オフィスのいたるところにオープンスペースでディスカッションできる形式も採用し、従来型オフィスからの刷新が行われた。

  • 共創ワークの実現へ

利用される制度を目指して全社員・制限なしで導入

オフィス改革の次の一歩として取り組まれたのが、テレワーク勤務導入だ。こちらは2014年から検討が開始され、2年の試験期間を経て2017年から本格導入されている。

「ワークライフバランスの向上にも役立つと考えていたのですが、検討時に社内でアンケートを行ったところ多くの社員は歓迎しませんでした。『自分だけが特別扱いだと不公平に見られそうだ』、『周りに迷惑がかかる』というような理由です。これは制度を作っても使われない潜在的な理由になります。そこで、全員が同様に使える新しい勤務体系を考えることになりました」と吉田氏は振り返る。

2年にわたって行われた試験導入は、利用できる社員や勤務できる時間・場所が限られていたが、現在は、全社員が場所や時間の制限なく利用することが可能となっている。

NECネッツエスアイ 人事部 人事企画担当部長の杉森真樹氏

「育児のためにテレワークを利用したい人から、子供を寝かせてからでないと集中できないというような声も聞かれました。現在は業務上必要があり、健康面での問題が出ないのならば上司と相談の上で子供の就寝後に働くことも可能になっています」と語るのはNECネッツエスアイ 人事部 グループマネージャーの杉森真樹氏だ。

同社は、在宅勤務だけでなく、立ち寄り作業ができるサテライトオフィスを複数契約していることで利用率は伸びているという

「介護の初期など特に忙しい状況の場合は、月20日の勤務日のうち15日がテレワークという人や子育て中で月のうち1/3がテレワークという人もいます。他の社員も、在宅は週1回程度、サテライトオフィスの利用まで入れれば週3回程度の利用が多いようです」(杉森氏)

ツールで業務時間を管理すれば監視は不要

 テレワーク利用時には、事前に一日の業務予定を上司に連絡し、当日の業務終了時にそれぞれの業務進捗を報告する。業務時間は、PCにインストールしたツールを活用して管理している。

「テレワーク利用者は、家事や子供の送迎などで途中離席しながらトータルで定められた時間の業務を行えばいいようになっています」(吉田氏)

「当初は、部下が目の前にいないので本当に働いているのかわからないなどの不安の声もありましたが、確認してみると普段、上司は部下の近くに座っているが、何をしているか把握しているつもりで出来ていない状態でした」と吉田氏は、部下の業務内容や状況を把握することが重要であると指摘。不安を訴える管理職にはヒアリングを行った上で、テレワークを行ってもらったと説明する。

吉田氏は、「導入当初はアンケートも行いました。90%以上の人が、従来と同等以上もしくは向上という回答が見られたので、ごく少数についての監視する必要はないと思う」語った。

2020年は分散ワーク実現へ! 柔軟な勤務形態を促進

段階的に取り組みを進める中で、特に効果を感じられたものは当初から取り組んできたノーペーパーワークと、2018年から開始した「共創ワーク」だという。これは組織を超えた横断的なチーム作りを実現し、意思決定のスピード化を図るものだ。

「自宅、オフィス、お客様、海外パートナーとのやりとりをZoomで行うことで実現できました」と吉田氏。個々をつなぐコミュニケーションツールは他にも採用しているが、大画面を囲める場を設けるなど、場と場をZoomで接続することで物理的に離れた相手とも仕事が進められるという。

そして、NECネッツエスアイではさらなるイノベーションを追求するために、2019年秋からは本社オフィスの規模を縮小して複数箇所に分散、業務内容や自身の住んでいる場所に合わせたオフィスの選択を行う分散型ワークにチャレンジしている。

  • 分散型共創ワークを支える仕組み

首都圏約10カ所にアクティビティベースと呼ぶ専用サテライトオフィスを用意し、活用している。通勤負荷を削減することで体力面と時間面でのゆとりを持たせ、定型業務におけるRPAの活用やコミュニケーションや管理にクラウドサービス等を駆使することで作業の時間を減らし、できた余裕を自己投資やチャレンジ精神の発露に回したいという。2020年には本社を60%に縮小し、退路を断って取り組む。これに加えて、2020年には、日本橋に新しい発見とビジネス創出の場となるイノベーションベースを、川崎に人材育成や技術の実証検証を行うテクニカルベースを設置する。

「アクティビティベースができたことで、自宅近くのオフィスへ選択できるだけでなく、混雑の少ない下り電車で通える場所への通勤も可能になった。そういう働き方ができることによって、保育園を必ずしも自宅近くで確保しなくてもよくなるなど変化があるかもしれません」と語るのは、NECネッツエスアイ 営業統括本部 マーケティング本部 マーケティング戦略企画グループ 働き方改革推進マネージャーの髙田聡子氏だ。

今後はさらに、場所にとらわれず組織や役職の壁を越えたフラットなコラボレーションワークを実現するのが目標だ。

「営業担当者は、外出後に会社へ立ち寄らずともお客様先近くのオフィスを活用することで効率アップしています。エンジニアは、Zoom等のクラウドツールでお客様や営業とコンタクトをとり、移動やその他の時間短縮に取り組んでおります。本社スタッフも効果が見えていて、今後はこれをさらに対象人数を向上させ、日本の労働環境における課題解決を目標としています」と吉田氏はさらに分散型ワークを発展させていきたいと語った。