最年少タイトル獲得へ前進なるか!? 渡辺明棋聖に挑む

ついに歴史的対局が始まりました。第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局(主催:産経新聞社)が東京・将棋会館で本日行われています。渡辺明棋聖に挑戦するのは、まだ高校生の藤井聡太七段。17歳10カ月20日でのタイトル挑戦は最年少記録です。

今月4日に永瀬拓矢二冠との挑戦者決定戦の激闘を制したばかりの藤井七段。それからわずか4日後の今日、大注目の五番勝負が開幕しました。和服の準備が間に合わなかったのか、それとも普段と同じスタイルで挑もうと思ったのか、藤井七段はスーツ姿で登場。一方、タイトル戦は慣れた舞台である渡辺棋聖は和服で相対します。

 

【なるか最年少タイトル獲得記録更新】

藤井七段の前のタイトル挑戦最年少記録保持者は屋敷伸之九段です。その屋敷九段は最年少タイトル獲得記録も持っています。屋敷四段(当時)は、初挑戦の第55期棋聖戦では2勝3敗で中原誠棋聖に敗れ、奪取に失敗しました。しかし、翌56期棋聖戦で再び挑戦者となって今度は3勝2敗でタイトルを奪取。この時屋敷九段は18歳6カ月でした。もし藤井七段がこの五番勝負を制すれば、最年少タイトル獲得を大幅に更新することになります。

 

【第1人者の渡辺棋聖】

若武者の挑戦を受ける渡辺棋聖は、タイトル戦登場33回で獲得25期を誇るトップ中のトップ棋士です。藤井七段と同じく中学生棋士としてデビューし、20歳で初タイトル竜王を獲得しました。そこからなんと竜王を9連覇。5連覇目は羽生善治九段との初代永世竜王を懸けた対決となり、3連敗から4連勝で逆転防衛を果たしました。また、現在は棋王を8連覇中で、永世棋王の資格も保持しています。

ちなみに20歳でのタイトル獲得は3番目の年少記録です。今回藤井七段に棋聖を奪取されてしまうと、一つ順位が落ちてしまいます。

また、渡辺棋聖は藤井七段に1度大舞台で敗れています。それは昨年の第12回朝日杯将棋オープン戦決勝。藤井七段に朝日杯連覇を達成されてしまいました。過去の対戦はその1局だけです。棋界の第一人者として、大舞台で2度も続けてやられるわけにはいかないと、闘志を燃やしているはずです。

 

【戦型は矢倉の脇システムに】

藤井七段のタイトル戦デビュー局は、藤井七段の先手で矢倉となりました。角換わりを得意とする藤井七段にしては珍しい戦型選択です。これまで指してきた公式戦211局(千日手局6局含む)で藤井七段の先手番は93局。そのうち矢倉の出だしとなる初手▲7六歩は20局で、あとはすべて▲2六歩です。さらに▲7六歩△8四歩▲6八銀と実際に矢倉にしたのは4局しかありません。

矢倉は一時期後手の対策の進化によって、プロの公式戦では激減していましたが、ここ1年ほどで復活傾向にあります。藤井七段も矢倉に新たな鉱脈を見つけたのでしょうか。

本局は矢倉の脇システムと呼ばれる戦型になりました。これは双方が矢倉にがっちりと囲い、角を向かい合わせて先後同型に組む形を指します。激しい攻め合いになる戦型で、かなり深いところまで研究していないと指せない形と言われています。

序盤はハイスピードで進み、11時現在ではすでに中盤戦に入って激しい戦いとなっています。藤井七段が角交換をして棒銀を繰り出したのに対し、渡辺棋聖は歩を突き捨てて馬を作りました。馬を作らせた代わりに藤井七段は1筋から反撃開始。一方の渡辺棋聖は馬を軸に歩を駆使して、藤井七段の矢倉に上部から襲い掛かっています。どちらが勝つにせよ、骨を切らせて肉を断つような激しい切り合いの1手違いの将棋となりそうです。

運命の第1局の決着は本日の夕方から夜になる見込みです。本局は中継されているので、歴史的対局を是非将棋ファン皆で見守りましょう。

初のタイトル戦に挑む藤井聡太七段。写真は挑戦者決定戦のもの(代表撮影:日本将棋連盟)
初のタイトル戦に挑む藤井聡太七段。写真は挑戦者決定戦のもの(代表撮影:日本将棋連盟)