東武鉄道は6日から、新造車両70090型による東京メトロ日比谷線直通の座席指定制列車「THライナー」の運行を開始した。始発駅となる久喜駅から東武線・東京メトロ日比谷線経由で霞ケ関駅まで、報道関係者向けの乗車体験会も行われた。

  • 東武線から東京メトロ日比谷線へ直通する座席指定制列車「THライナー」がデビュー

今回、乗車した列車は久喜駅9時23分発の上り「THライナー4号」。9時11分、久喜駅の3番ホームに回送列車として入線し、その後すぐに「THライナー 恵比寿」と行先を表示した。報道関係者らと一般の利用者を乗せ、久喜駅長による合図とともに「THライナー4号」は久喜駅を発車した。

東武線から東京メトロ日比谷線へ直通する列車はこれまで普通のみ運行され、有料の特急列車や停車駅の少ない急行等を利用した場合は北千住駅などで乗り換える必要があった。乗車前に行われた概要説明では、「直通の座席指定制列車『THライナー』を走らせることで、利便性が向上すると思われます」とのコメントも聞かれた。

予約状況に関する説明もあり、運行初日(6月6日)の上り「THライナー2・4号」はともに満席、下り「THライナー1・3・5・7・9号」も順調に推移しているとのことだった。デビュー前から多くの利用者の期待を集めていたことがうかがえる。

  • 「THライナー」に使用される東武鉄道の新造車両70090型

  • 「70090 SERIES」の文字と先頭側面の配色をイメージしたロゴが印象的

  • 久喜駅長の合図とともに「THライナー」が発車

「THライナー」に充当される車両は東武鉄道の70090型。クロスシート・ロングシートに転換できる座席を備えており、通常時はロングシートで運用される。「THライナー」ではクロスシートに切り替え、各座席でドリンクホルダーや荷物フック、AC100V電源が使用可能となる。足もとのペダルを踏みながら回すことで、座席の向きも変えられる。座席間を仕切る肘掛けもあり、不要な場合は収納できる。

座席は落ち着いた色合いの赤いモケットで、特急列車のシートと比べて少々物足りなさはあるものの、座り心地はなかなか良い。座席指定料金を払うことで確実に座れると考えれば、十分快適といえるだろう。ロングシートで運用される際も、背もたれ付きのハイバックシートで快適に過ごせるのではないかと感じた。

車端部には青いモケットの優先席とフリースペースが設けられている。フリースペースも各号車に配置されているため、車いす・ベビーカーも利用しやすい。なお、「THライナー」では優先席も座席指定の対象になるとのこと。

  • 日比谷線への直通列車では初というクロスシート。気品のある赤色のシートに

  • 各号車に優先席とフリースペースが設置された。優先席のコンセントは背もたれの上、フリースペースのコンセントは窓の横にある

久喜駅を発車した「THライナー4号」は、東武線内の東武動物公園駅、春日部駅、せんげん台駅、新越谷駅に停車。上り列車において、これらの停車駅では乗車のみ可能で、降車はできない。停車中は利用者以外の誤乗車を防ぐため、各号車に片側4カ所あるドアのうち、1カ所だけ開閉する。

東武動物公園駅で日光線南栗橋方面、春日部駅で東武アーバンパークライン(野田線)の列車から「THライナー」へ乗り換えることも可能。せんげん台駅では、70000型で運行される日比谷線直通の普通を追い抜いた。赤いラインが目立つ70000型と比べて、「THライナー」に使用される70090型は黒のラインも目立つ。外観は似ていても色で違いがわかる。

北越谷駅から複々線となり、「THライナー4号」は外側の急行線を走行。特急列車並みのスピードで快走し、緩行線を走る電車を抜き去っていく。新越谷駅を発車すると、日比谷線の上野駅までほぼノンストップで運転される。引き続き急行線を快走し、西新井駅を通過したところで新設された渡り線を通り、緩行線に入る。

転線後も途中駅を通過しながら走り続ける。急行線を走っていたときと比べて速度が少しゆっくりになるものの、日比谷線直通の列車が各駅に停車しながら走っていたことを思うと、通過駅が設定されたことは革命的な変化といえるだろう。

  • せんげん台駅で70000型を追い越す。「THライナー」の70090型とはカラーリングが異なる

  • 西新井駅を通過したところで、急行線から緩行線へ転線

  • 東京メトロ日比谷線に入り、地下区間へ

東武鉄道と東京メトロの境界となる北千住駅で乗務員交代のために運転停車したが、ドアは開かない。乗務員交代を終えると発車して日比谷線に入り、南千住駅を通過してから地下区間に入る。日比谷線内の停車駅のうち、上野駅、秋葉原駅、茅場町駅、銀座駅は降車のみ可能。待避設備がなく、カーブも多いこともあり、「THライナー4号」はゆっくりとした速度で途中駅を通過していく。

10時40分、「THライナー4号」は定刻通り霞ケ関駅に到着し、ここで下車した。列車はさらに先の恵比寿駅まで運転される。霞ケ関~恵比寿間はフリー乗降区間となり、この日開業した虎ノ門ヒルズ駅を含む各駅に停車。すべてのドアが開き、座席指定を受けなくても乗車可能となる。

東武線から東京メトロ日比谷線へ直通する座席指定列車「THライナー」は平日と土休日で時刻が異なり、平日は通勤時間帯、土休日は観光や買い物などに利用しやすい時間帯に列車が設定されている。筆者の感想としては、北千住駅での乗換えが不要となり、いままでよりも短い所要時間で直通できることがメリットだと感じた。東武線沿線から日比谷線内の主要駅へ急ぐ場合や、混雑を避け、ゆったりと座って移動したい場合など、「THライナー」への乗車を検討してみても良いのではないかと思う。