東急は4日、伊豆急行、首都高速道路、首都高技術と共同開発を進めてきた、鉄道施設の保守点検および管理作業の精度向上と効率化を目的とした鉄道保守新技術(鉄道版インフラドクター)について、実証実験や技術検証の結果、有効性が確認できたため、6月中旬から実施する伊豆急行線のトンネル検査に導入すると発表した。

  • 3次元点群データ計測車両(伊豆急行線トンネル内)

鉄道版インフラドクターは伊豆急行線の全トンネル31カ所・約17kmを対象に導入される。すでに首都高速道路で運用されているインフラドクターを鉄道に適用する新技術の実用化は、日本初の取組みだという。伊豆急行線では、20年に1回、大規模かつ詳細なトンネル検査(特別全般検査)を実施しており、従来の検査では高所を含めたすべてのトンネルの壁面を目視で点検し、異常が疑われる箇所の打音調査を行い、展開図を作成するなど、多くの人手を必要としていた。

今後、鉄道版インフラドクターを導入することにより、近接目視点検の代替となる専用の計測車両が活用できる。3次元点群データや高解像度カメラの画像を解析することで、トンネル壁面の浮きや剥離などの要注意箇所を効率的に抽出でき、打音調査が必要な箇所の絞込みを可能とする。従来の近接目視点検に相当する検査日数は15日程度から3日へと減少し、検査費用についても約4割減少する見込みで、点検作業の効率化と人手不足の解消やコスト削減に大きく貢献するという。

  • 実証実験で取得した3次元点群データ(伊豆急下田駅)

  • 高解像度カメラ画像(東急田園都市線トンネル内)

鉄道版インフラドクターでは、特別全般検査で必要なトンネル壁面の展開図など、計測した各データから自動的に作成することが可能になるため、事務作業も大幅に省力化できる。検査の機械化も進み、検査精度のバラつき解消や、技術継承の支援といった効果もある。今後は鉄道に特化した建築限界の自動抽出などの技術開発を進めるとともに、他の鉄道事業者への展開も検討していくとしている。