トイレで用を足した際、自分の便に赤い血のようなものが混ざっているのを見つけ、不安な気持ちに駆られた経験を持つ人もいるのではないだろうか。このような便は血便である可能性が高い。排泄物は自身の体調をみるための大切なバロメーターであり、このような血便が出た場合は体に何らかの「異常」が現れているかもしれない。

本稿では、消化器科 消化器外科 外科医の小林奈々医師に血便が出る原因やその治療法などについてうかがった。

  • 血便の原因として考えられる病気は?

血便の原因と症状

血便とはその言葉が示すように、血液が混じった赤い便のことを指す。小林医師は、血便が出た際は下部消化管、主に大腸そして肛門からの出血が疑われると話す。

血便の原因となる主な疾患および、その疾患に付随して出現する各種症状を以下にまとめたので参考にしてほしい。

●憩室出血……突然に起こる腹痛を伴わない下血が確認される。
●虚血性腸疾患……突然に起こる腹痛後に下血があり、女性によくみられる傾向がある。
●痔核……肛門部の違和感、掻痒感、疼痛、さらには肛門部の出っ張りを感じるケースもある。
●大腸ポリープ・大腸癌……大腸癌が進行しているものに対しては、排便習慣の変化や貧血症状(めまい、立ちくらみなど)、腹部の張り、腹部膨満感、体重減少などが現れる。ただし、無症状の場合もあり。
●炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)……血性の下痢や繰り返す腹痛、体重減少を認めるケースが多い。
●感染性大腸炎……血性の下痢、発熱、腹痛などを伴う。

「大腸や肛門以外ですと、まれに小腸からの出血がみられる症例もあります。そして上部消化管から大量の出血がある場合は血便を認めることもあります。他に血液疾患を認める場合もあります」

頻度としては憩室出血や虚血性腸疾患、痔核が多いが、大腸癌を患っているケースもあるので注意が必要になるという。

色以外に体の変調を疑うべき要素とは

上述の通り、血便が出た際はさまざまな病を患っていることが予想される。色以外にも、便が細くなったなどの「便の形」や、便秘気味または下痢気味など「便の性状」の変化は、腸内環境の変化を示すサインとなりうる。便の色や形、性状が通常時とは異なる際は、きちんとその原因を検索しておいた方が賢明だろう。

「便の状態以外に体重減少や発熱、めまい、ふらつき、腹痛、腹部の張りなどを感じた場合は全身に影響を及ぼしている状況になっている可能性があるので注意が必要です。また、家族歴やご自身の内服によって発症しやすい疾患も出てくるのでチェックしておいた方がいいでしょう」

血便の検査法

血便を認めた場合には全身状態と他の症状、服薬歴、生活歴を加味しつつ検査を行っていく。具体的には血液検査や画像検査(腹部レントゲン、腹部CTなど)、下部消化管内視鏡検査、便培養検査などだ。

「血液検査では『貧血の有無』『他の異常数値の有無』『炎症の有無』などの確認を行います。画像検査では腹部レントゲンでお腹の状態把握を、腹部CTで腹腔内の状態把握、腹部造影CTを行うことで炎症、むくみ、腫瘍の有無といった腸管の状態、出血の有無、血管の閉塞の有無などを確認します。下部消化管内視鏡検査では腸管内の状態、出血部分の同定を試みます。常に出血部分が同定できるわけではないので、いつ検査を行うかは主治医の判断となります。便培養では感染を考える場合、原因となっている細菌、ウイルスを同定するために行います」

血便の治療法

もしも血便が出現した場合は、原因疾患ごとに治療に当たっていくことになる。

■憩室出血

「憩室出血は下部消化管内視鏡を行い出血源が明らかな場合、クリップを使用して止血を試みることがあります。しかし自然止血するケースもあります。そのような際に下部消化管内視鏡を緊急で行うかは、全身状態、出血の状態、腹部CTなどの諸検査を経た後、『内視鏡検査を行うことが有意義』と主治医が判断するか否かによります」

下部消化管内視鏡検査で出血源がわからず、かつ持続的に出血しているようならば、血管造影検査を使用した治療や外科的治療が選択される場合もあるという。

■虚血性腸疾患

虚血性腸疾患では基本的には食事制限や輸液などの対症療法が行われる。重症度分類を行い、抗生剤を投与したり、入院にて加療を行ったりする。

■痔核

基本的には肛門部の外用薬や内服薬で治療をしていく。繰り返すものや重症なものなどは外科的治療を行う場合もある。

■大腸ポリープ・大腸癌

下部内視鏡検査の結果によって対応が異なる。内視鏡的治療が可能な場合は内視鏡的に切除する。内視鏡的治療が困難ならば、外科的治療が選択される場合がある。

■炎症性腸疾患

下部内視鏡検査および病理検査を含めた内視鏡所見、注腸レントゲン検査、採血を実施し、症状も踏まえた結果、炎症性疾患と診断されたら各種治療を重症度に合わせて行っていく。

■感染性腸疾患

「感染性腸疾患は原因となっているものが同定された場合、それにあった抗生剤を使用します。中には抗生剤などの内服により起こるケースもありますので、問診や各種検査で関連している原因を同定した後に整腸剤や抗生剤を使用します」


感染性腸炎のような一過性の疾患が原因となる血便もあれば、その背景には大腸癌が潜んでいる血便もある。あまり気持ちいいものではないだろうが、日頃から自身の排便に注意を払うことは重要な行為だと覚えておこう。

監修者:小林奈々(コバヤシ・ナナ)

消化器科、消化器外科、外科医 クリニックでは専門である消化器疾患、痔を含め全般的な内科疾患の診療に従事。週2回の病院勤務では消化器疾患の手術を行いながら、消化器疾患中心の外来診療に携わっております。 このほか予防医学、早期発見早期治療の重要さを伝えるべく講演や新聞、雑誌などへのコラム掲載を行っております。患者さんを第一に考え、患者さんの目線にたちながら、常に笑顔で、女性外科医だから行える気くばりと柔らかさのある診療を行うべく日夜励んでおります。 En女医会所属。さくら総合病院、自由が丘メディカルプラザ勤務。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。