派遣社員の在宅勤務については、セキュリティ教育を実施したうえで、テレワークに必要な機材を支給した。業務内容や職務の都合上、自宅でできる業務が十分にない場合は、業務時間で自主的な勉強をしてもらうようにし、普段できないインプットをする機会にあてたという。

「サイボウズの場合、派遣会社との基本契約のなかで、もともと在宅勤務を月4回していい契約になっていました。新型コロナの影響で月4回以上在宅勤務が発生するため、派遣先27社に、基本契約を変えることができないかを確認しました。全部電話することは大変でしたので、各派遣会社の新型コロナ対応方針をフォームで集め、kintoneで管理。結果として、派遣先のほとんどが在宅勤務OKとなりました」(野間氏)

こうした判断の背景には、サイボウズでは派遣社員/正社員というカテゴリーで見ておらず、サイボウズのチームメンバーの一員として気持ちよく働いてもらいたいという思いがあったことも強調した。

新入社員の入社手続きについては、入社の案内や必要書類のアナウンスなどをすべてオンラインに移行した。情報共有や個人情報のやりとりではグループウェアやkintoneを利用して、安全に簡単に情報を共有できるようにした。例えば、内定者の質問などは誰かの質問に対する回答がすべての内定者が見ることができるため、情報共有の効率化やコミュニケーションの活性化につながった。

雇入社手続きはオンライン化

「入社日にはPCを社員の個人宅に郵送し、アカウントの配布もkintoneで行いました。社労士とのやりとりや入社式もオンラインで行うことで、フルリモートでの入社手続きを実現することができました」(野間氏)

社員の健康管理を第一にし、制度も拡充

健康管理については、在宅勤務ならではの問題に対処する必要があったという。例えば、ずっと在宅勤務を続けることで気分が落ち込んでしまうといったことから、自宅の椅子で腰痛になったり、チームメンバーと話せないので寂しさを感じたりするといったことだ。 これに対しては、人事本部長や社長から「健康を第一に」というメッセージが強く発信され、子供とのやりとりやランチ時間が長くなったりしても気にしないこと、仕事と健康の優先度を間違えないようにすることが周知徹底された。

「免疫力のアップする食事や作業環境整備のポイントなど、健康情報や在宅Tipsを定期的に発信したり、Zoomでストレッチする会などを開催して、健康第一に取り組みやすくしました。ただ、それでも保育園が登園自粛になったり、子供が一緒だと働けない、パフォーマンスが心配といった声もありました。そこで在宅状況や精神状態をkintoneでヒアリングし、メンタルやパフォーマンスの影響などを集計し、次の施策につなげていきました」(野間氏)

社員の声をもとに実現した施策としては、休校にともなう特別休暇(既存の有給休暇を使わない有給での休業)、環境整備のための在宅勤務手当(1人3万円の一時金)の配布がある。

「一時金は4月17日に決定し、4月24にスピード配布できました。サイボウズがこのようなスピード感のある対応ができた理由は、大きく3つあると考えています。まず、制度が固まる前の段階から全社公開の場所でオープンに議論されていたためすぐに行動に移せたこと。次に、kintoneの機能を使って総務が必要な業務アプリを簡単につくることができたこと。さらにもともとクラウド上に社員データや業務情報があり、どこでも仕事ができる環境が整っていたことです」(野間氏)

総務労務も安心して働くためにITの力にうまく頼る

緊急事態宣言が解除され、テレワークや在宅勤務を継続的に実施していくことが求められるようになった。テレワークを導入するときもそうだが、これから継続していくにあたっても、いくつかのポイントがあるという。

「まずは思い込みを疑ってみることが大切です。派遣社員は在宅勤務できない、押印が必要だから毎日出社しなければいけない、入社手続きは出社しないとできない。これらについても、本当にそうなのか、少しでも変えられる部分はないかと疑ってみることです」(野間氏)

また「理想のためには妥協しない」という姿勢も重要だ。例えば、派遣会社の契約27社変えること、在宅勤務手当を1週間で支給すること、押印の意味を考えて切り分けることを実施することは多くの労力がいる。それでも「チームワークあふれる社会をつくるため」という理想を掲げることで、課題に真摯に向き合っていくことができるとする。

とはいっても、総務労務の想いだけでは、施策は実行することができない。Excelやメール、電話だけで業務をこなそうとするとパンクしてしまう。グループウェアやkintoneでの情報を集約、活用できたように、ITの力をうまく使うことがカギになる。

野間氏は「社員が気持ちよく働き、総務労務も安心して働くためにITの力にうまく頼ってください」と話を締めくくった。