円谷プロダクション製作の「ウルトラマンシリーズ」最新作『ウルトラマンZ』が、2020年6月20日よりテレビ東京系にて放送されることが発表され、特撮ファンたちの注目を集めている。
新たに地球へとやってくるヒーロー「ウルトラマンゼット」は、2009年12月に劇場公開された『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で初登場した「ウルトラマンゼロ」の弟子。ゼットはゼロに憧れ、努力を重ねてついに「宇宙警備隊」の一員になり、師匠から譲り受けた熱いハートで常に前を向き、進んでいくウルトラマンだという。
ウルトラマンゼットの師匠・ウルトラマンゼロは、"宇宙拳法"の使い手であるウルトラマンレオの弟子にあたる。さらにレオは、ゼロの父であるウルトラセブン=モロボシ・ダンが地球でMACの隊長を務めていた折、厳しい特訓を受けていた。ゼットは、ウルトラセブン~ウルトラマンレオ~ウルトラマンゼロに連なる「セブン一門」の末弟というべき存在らしい。
邪悪な怪獣と戦うべく地球にやってきたウルトラマンゼットは、対怪獣ロボット部隊「ストレイジ」のナツカワ・ハルキ隊員と一体化し、共に地球の平和を守るため戦うことを誓う。WEB公開された『ウルトラマンZ』PVでは、凶悪怪獣に挑むハルキが、格納庫から出撃せんとする巨大ロボット「セブンガー」のコクピットに乗り込んでいる映像が確認できるほか、ウルトラマンゼット、セブンガー、ウインダムがそろって戦いに挑む様子も映し出されている。
『ウルトラセブン』(1967年)でモロボシ・ダンがウルトラセブンに変身できないときに使用する「カプセル怪獣」の一体であるウインダムは、同じくカプセル怪獣の仲間であるミクラスやアギラともども怪獣ファンの人気が高く、本放送当時からソフビ人形になったり、雑誌グラビアに掲載されたり、『ウルトラセブン1999最終章6部作』(1999年)や『ウルトラマンメビウス』(2006年)などに再登場したりと、かなりの知名度を誇っている。
その一方でセブンガーは『ウルトラマンレオ』(1974年)の第34話「ウルトラ兄弟 永遠の誓い」に一度出て以来、実写作品のウルトラマンシリーズに再登場するチャンスがなかなか与えられず、ややマイナーな存在だといえるかもしれない。しかし、かつてのカプセル怪獣と同じくモロボシ・ダンにしか使えない「怪獣ボール」から現れるという設定や、ユーモラスな体型など、数々の魅力を備えるセブンガーは、熱心な『ウルトラマンレオ』ファンを中心に、カルト的な愛され方をしているのも事実。そんなセブンガーを2020年の現代に甦らせてくれた『ウルトラマンZ』という作品に、ウルトラマンファンとして大いに期待しないわけにはいかないだろう。
ここからは、『ウルトラマンレオ』第34話に登場したセブンガーの勇姿をふりかえりながら、『ウルトラマンZ』で活躍するであろう"新生"セブンガーに思いをはせてみたい。
「ウルトラ兄弟 永遠の誓い」(脚本:阿井文瓶/監督:前田勲/特撮監督:大木淳)のストーリーは次のとおり。変身できなくなったウルトラセブン=モロボシ・ダンへの贈りもの「怪獣ボール」を届ける途中だったウルトラマン(帰ってきたウルトラマン)=郷秀樹を、二面凶悪怪獣アシュランが襲った。アシュランに特殊な仮面を被せられ、重傷を負った郷は地球にたどり着いてウルトラマンレオ=おおとりゲンに助けられる。仮面のせいで口をきくことのできない郷は暴れ回るアシュランを食い止めるべく、怪獣ボールをダンに届けようとする……。
『ウルトラマンレオ』は当初"生きる厳しさと哀しさを鮮烈に謳う"と銘打たれ、戦士として未熟なレオ=ゲンがダン隊長の厳しい特訓によって強敵怪獣や星人に打ち勝つ、という"熱血・特訓路線"で進んでいたが、さらなる人気獲得を狙って第22話でレオの弟「アストラ」が救援にかけつけ、第26話で伝説の超人「ウルトラマンキング」が姿を見せるといった"番組強化策"が採られた。
同じく第26話から第32話までは「日本名作民話シリーズ!」と題して、日本古来の名作民話をモチーフとしたファンタジー性の強いエピソードが続いた。第29話「運命の再会!ダンとアンヌ」では『ウルトラセブン』でアンヌ隊員を演じたひし美ゆり子が"アンヌに似た謎の女性"役で、第30話「怪獣の恩返し」では『ウルトラマン』(1966年)の黒部進(ハヤタ隊員役)と桜井浩子(フジアキコ隊員役)がそれぞれゲスト出演するなどのファンサービスも積極的に行った。
そんな中「かつてモロボシ・ダンは変身できないときにカプセル怪獣を使っていたのだから、『レオ』にもカプセル怪獣を出したらどうか」という青年ファンたち(後に各種マスコミでライター・編集として活動を行う『怪獣倶楽部』のメンバー諸氏)からのアイデアを採り入れた熊谷健プロデューサーによって、「怪獣ボール」という設定が誕生した。
『帰ってきたウルトラマン』(1971年)で活躍したウルトラマン(1984年以降"ウルトラマンジャック"という名称が与えられるが、本作の劇中では"ウルトラマン"と呼ばれている)がひさびさに郷秀樹(演:団次郎/現・団時朗)となって地球にやってきたが、今回の彼はアシュランの超能力によってマスクを被せられ、言葉を奪われた上に重傷を負うなど、痛々しい姿が目立つ。マスクの異様さのせいで子どもたちからも気味悪がられ、石を投げつけられるなど、かつてのスマートなヒーロー像とは異なる泥臭い演出が目をひいた。
郷が苦心の末に見つけ出した怪獣ボールとは、モロボシ・ダンにだけ使うことのできる"奇跡のボール"だった。迫りくる怪獣アシュランに対し、ダンは郷から託された怪獣ボールを投げつけると、その中からロボット怪獣「セブンガー」が出現した。ずんぐりむっくりな体型に、半開きの眠そうな目を持ったセブンガーは、立っているだけだととても愛嬌たっぷりなロボットだといえる。しかし、そのユーモラスなたたずまいの印象に反して、セブンガーは目を見張るほどの俊敏なる動きと頑丈さでアシュランを圧倒するという、実に頼もしい姿を見せてくれるのだ。ロボットの固いボディはアシュランの打撃も、目から発する光線も完璧に防ぎ、その大きな両手で繰り出すパンチ連打はアシュランをひるませるに十分な威力を発揮した。
セブンガーの大いなる魅力のひとつに、その見た目からは信じられないくらいの"強さ"があると言っても過言ではないだろう。しかし、そんなに強いセブンガーが、どうしてアシュランを仕留めることなく、みすみす逃してしまったのか。その理由は、セブンガーが持つ致命的な"欠点"のせいだった。セブンガーの活動時間は、わずか「1分間」しかなかったのである。劇中ナレーションで「あと10秒時間があれば(アシュランを倒せていた)」と残念そうに語っていたように、セブンガーの活動時間が1分以上あったらこの回はレオの出番がなくなっていたかもしれない。
さらにやっかいなのは、セブンガーは一度使用すると、再使用が可能になるまで「50時間」かかるということだ。プロ野球のエースピッチャーでもベストな状態で先発登板するためには中5日は必要だというから、およそ中2日でなんとか頑張ってくれるセブンガーの"やる気"は認めてあげたいところだが、いかんせんウルトラセブン=ダンが変身不能、ウルトラマン=郷が負傷という状況で、猫の手も借りたいときに50時間も戦うことができないのは痛い。セブンガーは、1分間で確実に仕留められる相手に対しては非常に効果的な戦いができるが、相手が持久戦に持ち込んだりするととたんに弱くなってしまう、繊細な戦闘プランの組み立てが必要な戦力だといえよう。
緊急事態の中、アシュランに向かってうっかり怪獣ボールを投げてしまったダンを責めるのは酷ではあるが、もともとダンは『ウルトラセブン』で電気や寒さに弱いカプセル怪獣ミクラスを(放電が武器の)エレキングや(冷凍光線を吐く)ガンダーにぶつけたり、電子頭脳を備えるメカ生命体のウインダムに(機械を狂わせるのが得意な)カナン星人の偵察を命じたり、カプセル怪獣の扱い方が今ひとつ"上手くない"といった特徴が見られた。以前のカプセル怪獣よりもっと使い方を慎重に考えないといけない怪獣ボールは、ダンでなくても扱いづらいアイテムなのかもしれない。結局、レオとウルトラマンがコンビネーション攻撃でアシュランを制し、セブンガーの再登板は観られなかった。
1つのエピソードの中の、わずか1分しか活躍シーンがなかったセブンガーだが、ウルトラマンシリーズでは数少ない「正義側の怪獣」という個性付けやユーモラスな外見、そしてやたらに"強い"といった特徴によって、その存在を確認した人たちから熱烈なファンが生まれることもあった。『レオ』本放送から46年を経て、あのセブンガーが人類のためにどんな働きをしてくれるのか。『ウルトラマンZ』でのセブンガーの活躍に注目していきたい。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京