新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、テレワークに取り組む企業が増えています。しかし、いざテレワークを導入したものの、上司にとって、テレワークでの部下の管理は初めてということが多いのでは?

今回は、組織調査や地域開発調査など、さまざまな分野でリサーチ、コンサルティングをしているビジネスリサーチラボ リサーチフェローの神谷俊氏に、テレワークにおける適切な部下のマネジメントについて寄稿いただきました。

  • テレワークでは部下にどう接するのが適切?

新型コロナウイルスで変化した環境

緊急事態宣言が発令され、これまでの日常的な場や生活リズムが失われました。出社するべきオフィスはもちろん、ラッシュ時の満員電車、ランチタイムでの行きつけの店、いつもの会議風景。以前は当たり前だった営みをそのままに継続することは難しくなっています。

そして、終わりが見えない現状においては、この新たな環境に積極的に適応していくことが求められるでしょう。

鍵を握るのは現場のマネージャー。不確実な世の中で、会社から与えられた資源と権限を活用し、現場の状況を踏まえて活路を開いていく。それがマネジメントの本分です。今こそ、上司の価値が問われています。結論から言うと、上司はこれまで以上に「部下への歩み寄り」が求められます。

テレワーク時の上司のリアル

マネージャーたちは実際のところ、どのようにマネジメントをしているのか。3月以降、私は幾つかのオンラインミーティングに出席して、その様子を観察する機会を持っています。

ある上司は、今後の仕事の進め方に関する会議で会社の方針をそのまま部下に伝えるだけ。禁止事項を通達し、「今後の連絡を待つように」と言ってあっさりと会議を終えました。

別の上司は進捗共有を行う会議で、部下がPCにログインしている時間を集計したデータを会議前に共有。そして、特にログイン時間の少ない部下に対して、「ちゃんと見てるからな」と一方的に強い口調で指摘しました。

こうした事例は珍しいものではありません。部下との物理的な接触がなくなったことで、部下への関わりを弱めてしまう人、監視・管理の姿勢が過剰になる人が増えている印象です。

テレワーク時の部下のリアル

管理される部下たちはどのような状況なのでしょうか。例えば、在宅勤務中の父親に小さい子どもがまとわりついたり、共働きの夫婦が同じタイミングでWEB会議を行い、「通信速度の低下」「互いの会話内容が聞こえる」などの問題が起こったりしていました。

さらに、休校中の子供の世話のため、夫婦間の仕事のスケジュールの綿密な調整も求められています。

こういう状況下で、上司は無力。部下の子どもや妻の行動までマネジメントして彼らのパフォーマンスを上げることや、ましてや、遠隔で目標を達成させることは不可能なのです。

マネジメントしないという選択

遠く離れた部下に対しては、セルフマネジメントを支援するのがセオリーです。部下の個別事情をコントロールできない以上、部下本人が状況を調整すべき。

だからといって、上司は何もしないわけではありません。直接マネジメントせず、部下が自分で仕事を進められるようにするのは、技術的にも労力的にも大変です。

必要なポイントは主に3つあります。

部下の不安をケア

まずは部下の気持ちを整えることが先決。いま、彼らは不安定な状況である可能性があります。悲劇的なニュースで日々心を痛めたり、家族内の調整に疲弊したりしているかも。そうしたストレスからくる不安定さを軽減させることにエネルギーを注ぎましょう。

上司ではなく、知り合いの一人として向き合うこと、オンラインミーティングを雑談のみで終えても良いです。離れているからこそ、人間関係をしっかりつなぎ留めておくことが重要なのです。

チームの仕事を再建

部下の気持ちが整ったら、業務の整理と再建に着手しましょう。「従来やっていた仕事の中で、家でもできる内容……」と考えると、事務作業ばかりで「新たな」価値を生み出す仕事ができません。

今までやってこなかったことも含めて、自分たちができる、やるべきことについて、部下とブレストして企画していくことが求められます。

例えば、営業職ならば顧客訪問ができなくても、WEBで販促イベントを実施することは可能です。現在の環境でも価値を生み出せる仕事は何かを部下と一緒に考えることが重要です。

部下の業務を再設計

チームの仕事内容が定まった段階で、個々の部下の状況を踏まえつつ、いつまでに何をどれくらい求めるのかを提示。つまり、この設計なくしては、部下は自分の業務スケジュールを組み立てることができず、セルフマネジメントが困難です。

特に経験の浅い若手社員に対しては、一層丁寧に設計をしてあげる必要があります。


現在の環境下に求められる「マネジメント」の在り方を紹介しました。詳細なポイントを挙げるときりがないですが、最低限押さえておきたいものをピックアップしています。業務の特性や部下の性格、生活環境などを踏まえて調整をしつつ、まずは実践を進めてみてください。