4月18日よりWOWOWプライムにてスタートする『連続ドラマW 鉄の骨』(毎週土曜 22:00~ 全5話 ※1話のみ無料放送)で主演を務める神木隆之介にインタビュー。発行部数60万部を超える人気作家・池井戸潤の同名小説を原作に、欲望やしがらみが絡み合う「談合」の世界で、中堅建設会社の若手社員が自らの理想と会社員としての使命のはざまで葛藤する姿を描く本作。入社4年目の若手熱血社員・富島平太役を演じる神木に、本作の見どころや共演者とのエピソード、業界で生き抜くための「神木流」の処世術について聞いた。

  • 『連続ドラマW 鉄の骨』で主演を務める神木隆之介

    神木隆之介

――「池井戸ドラマ」に初主演することが決まった瞬間はどんな気持ちでしたか?

人気作がたくさんある「池井戸ドラマ」で主演をやらせていただけるのはもちろん嬉しかったんですが、同時にプレッシャーもすごく感じましたね。『鉄の骨』って、実は過去にも小池徹平くんでドラマ化されているんです。僕、舞台「キレイ-神様と待ち合わせした女-」でも、徹平くんがやっていたハリコナ役を演じたんですけど、なかなか2回連続で同じ役をやることはないので、「面白いご縁だなぁ」と思っていて。

――小池さんの演じた「富島平太役」を意識されたりも……?

いや、見ていないです(笑)。当時のポスターの写真だけちょっと見ました。「徹平くん、若いなぁ」と思いました。

――神木さんから見て「WOWOWドラマならでは」と感じるところはありますか?

過去に出演させてもらったものも含めて、「踏み込んでいる作品が多いなぁ」とは思いますね。地上波の場合、時間帯ごとの視聴者層に合わせて臨機応変に変えなきゃいけないこともきっと多いと思うんですが、WOWOWさんの場合は描きたいものをちゃんとそのままの強度で描いているというか、すごく挑戦されているなっていうイメージがありますね。役を演じる上でも「本当に知りたい」と思えるところまで踏み込めるからすごく面白いですし、疑似体験じゃなく、実体験しているような気持ちになれるんです。

――台本を読んで感じた「池井戸ワールド」の魅力とは?

まず最初にゼネコンとか建設の世界を舞台にしているって聞いたときは「絶対セリフ難しいんだろうなぁ」って思いました(笑)。池井戸作品って、いろんな職業のいろんな世代の人たちがフォーカスされている作品が多いと思うんですけど、結局は「人」対「人」のお話なんですよね。登場人物のそれぞれにいろんな人生や背景があって、「こういう理由でいまこの人はこういう行動に出た」「こういう発言をしたんだ」っていう説得力がすごくある。たとえば上司に楯突くような人が出てくるとしたら、そこには「なぜ彼は楯突くのか」もちゃんと描いてあるんです。

――平太を取り巻く面々にも、濃いキャラクターが勢ぞろいしています。

いやぁ、本当に分厚いですよね(笑)。尾形常務役の内野聖陽さんも、先輩役の中村獅童さんもそうですし、みんなそれぞれ貫禄や迫力があって、平太を圧倒させてくれる適任の方々ばかり。回想シーンの中に、尾形常務の前で僕が夢を語る面接の場面があるんですけど、尾形常務には「この人だけ倒せば受かるんだろうな」「でもこの人を倒すにはどうすればいいんだろうな」っていうラスボス感がすごくあって、本気で心が折れかけるんですよね(笑)。「内野さんって本当にすごい方だな」って尊敬しながらも、平太としては負けちゃいけないところなので、なんとかして尾形さんの心を動かせるように頑張りました。ただただ叫ぶとか、声を荒げるとかじゃなくて、どれだけ重い意思を持ってセリフを言えるかどうかが勝負になってくるんだろうなぁってすごく思いますね。

――建設業界のフィクサー三橋萬造役を演じる柴田恭兵さんとのシーンはいかがですか?

柴田さんとは以前、僕が子供だった頃に共演させていただいたことがあるんですが、当時の画像を見せながら「あぁそうなんだ! 懐かしいね」なんてお話したりもして。柴田さん演じる「三橋さん」って、平太にとっては親戚のおじさんのような親近感がありながらも、「人生の師」とも言えるような存在でもあるんです。平太が「こう思いました」って本音で話しても、三橋さんは「そうだよな、そういうもんなんだよ」って、優しく受け止めてくれる。三橋さんのキャラクターはもちろんのこと、常に僕がセリフを言いやすい雰囲気を作ってくださる柴田さんご自身も「すごい方なんだなぁ」って、改めて思いましたね。

――今回、土屋太鳳さんも平太の彼女役で出演されますね。

土屋太鳳ちゃんとは過去に『るろうに剣心』でも共演させていただいてたので、「あ! 久しぶり」って感じでした。休憩時間に色々な話をしたりしたのも、すごくいい思い出になりましたね。なんと言っても、せっかくの彼女役なので(笑)。

――まだまだ学生役もイケる神木さんですが、今回のように「会社組織の中で翻弄される役柄」を演じてみていかがでしたか?

26歳って、揺れるにはきっとちょうどいい年頃なんだと思うんですね。新入社員だと何も知らずに上に巻かれていくところが、入社4年目ともなればそろそろ自分の仕事のスタイルが固まってきているわけで。そんな時期にいきなり部署が変わって、それまで培ってきた価値観が完璧に崩されたりする。そういう意味ではちょうど社会人としての物語がすごく大きく動き出す年頃なのかなぁとは思いますね。

――演じる「平太」のキャラクター像についてはどんな風に解釈されていますか?

まぁ、若いですよね。まだまだ未熟者だなって思いますけど、彼がこれから「酸いも甘い」も「黒も白も」見て、最終的にどんなところに行きつくのかを描く成長物語でもあるんです。夢や希望を持って建設会社に入った平太が、建設現場から業務部に異動したことで、理想論や想いだけじゃ通用しない世界なんだなっていうのをいろいろ知って感じていく。彼なりの純粋な正義感を持ち続けるためには力が必要であることを自覚した上で、彼がどんな風にそれを次の世代に引き継いで、どう生きていこうとしているのかを見届けていただけたらいいなと思っています。

――平太と神木さんには共通点はありますか?

正義感が強いというのか、ちょっと頑固っぽいというのか、紙一重なところもありそうな気もしますけど(笑)、あえて頑固っていうならそこは似ているのかもしれないですね。あとは、物事をあまり流さないところかなぁ。でも平太はすごくいい役なので、僕と「似てる」って言うのは何だか申し訳ない感じがしますね(笑)。

――平太を演じる上で一番大事にしていることは?

今回大事になってくるのは「鋭さ」なのかなって思いました。談合をしている上の世代の人たちは防御力も当然高いので、正面から攻撃してもきっと勝ち目がないような気がするんです。ガラスを拳で殴っても全然割れないけど、ただ1点をバッて突き刺したら全部割れていくような、そんなイメージが平太にはあるんですよね。

――何か具体的に心掛けていることはありますか?

人って、相手が彼女なのか親なのかによっても接し方が違うし、会社でも相手の立場によって自然と対応が変わったりするものですよね。だから今回は僕も役柄の関係性によってちょっとずつ喋り方を変えてみようかなぁとか思いながら日々撮影に臨んでいます。あまりわざとらしくならない程度に、勝手に自分の心の中だけでチャレンジしてみようかなと思っていて。撮影の感じもドラマというより映画に近いところがあって、セリフとセリフの間も「本当にこんなに長くていいのかな」って思いながらやっていたりもするんです。

――神木さんでも「この経験は初めてだなぁ」と新鮮に感じることはありますか?

たとえ会社の中ではどんなに偉い立場でも、下請け会社の人たちに「コスト削減してください」ってお願いをするところがすごく新鮮でしたね。会社の規模に関わらず、「組織」という点ではどこもみんな同じなんだなって改めて感じました。「申し訳ありませんでした!」「何とかお願いします!」って頭を下げる役については、僕はこれまで幾度となくやってきて慣れていますので(笑)、そこは安心してお任せてください! 頼りがいのある先輩方が芝居を通じて僕にパンチを出してくれると思うので、胸を借りる感じで素直にやっていけたらいいなと思っています。

――神木さんご自身は、難しい局面にぶち当たった方が燃えるタイプですか?

いやいや、普通に難しい局面にぶつかるのは不安ですよ(笑)。「大丈夫かなぁ……」って。でも気持ち的には「やってやるよ!」って思えるくらいの方がいいんでしょうね。僕の事務所の後輩に藤原大祐(たいゆ)くんっていう16歳の新人がいるんですが、彼の初仕事が5000人の観客の前で歌って踊る「ハンサムライブ」で、当時の僕だったら絶対に震えているんですよね。でも「やってやりますよ!」って言いながらステージに出ていく彼の姿を見て、「うわ、かっこいい!」って思ったんです(笑)。これは僕が舞台で学んだことなんですけど、「どうせ失敗するなら思いっきりやって失敗しろ」って。それを本能的に分かっている藤原大祐はすごくかっこいいし、僕も彼のような鋭さがいい感じに出せたらなぁと思って。僕もああいう人間になりたいです(笑)。

――では、神木さんも残りの撮影は「やってやるよ!」というくらいの意気込みで(笑)。

あぁもう、やってやりますよ! 天下獲りますよ(笑)。

――楽しみにしております。ちなみに、神木さんにとっての理想のリーダー像は?

僕が小さい頃からお世話になっている、あるアミューズの男性スタッフさんです。室長から始まり、今では役員になられている方で、その人の背中をずっと見ながら僕は育ってきたんです。僕にとってその方は「完璧な人」。人との接し方も場の作り方も、もう「文句なし」の人なんですよ! どんな時でも相手の気持ちを考えて、絶対にモチベーションが下がらないような言い方をしてくれるんです。いつか僕もそんな先輩になれたらいいなって思いますね。

――そういう神木さんも芸歴で言うと24年以上。会社員ならベテランの立ち位置ですよね。

神木常務ですね(笑)。

――ご自身の経験値を踏まえて後輩にアドバイスするとしたら?

まぁとにかく「場を乱さないほうがいいよ」ってことに尽きますね(笑)。きっとどこの世界においても、いろんな歴史が積み重なって守られてきたものがあるとは思うんですが、僕は基本的に脳天気なので、「まぁ、それはそれで……」っていう感じです。少なくとも自分からはあまり波風立てないようにしながら、平和に生きていきましょうよ。それが一番ですよ。

――これぞ、2歳から芸能界の荒波の中で生き延びてきた神木さん流の「処世術」というわけですね!

僕自身は割と調和型というか、何事においても「せっかくみんなで一緒にやるんだったら、楽しい方がいいじゃん!」と思うタイプ。そもそも喧嘩って、普通にしてたら絶対起きないはずなんですよ。「僕はこう思うけど、あなたの考えはこうなんだね」「じゃあ、こうすればお互いもっとよくなるんじゃない?」って、相手の考えをちゃんと聞いて理解し合えたら絶対に起きないはずなのに、みんなそこをすっと飛ばして、「お前何言ってんだ!」「何を~?」ってなるから喧嘩が起きるんです(笑)。そりゃあ、人間なら誰しも多少はカチンとくることはあるとは思うんですけど、大事なのは「いかに相手を認められるのか」ってことだから。

――なるほど、さすが神木常務。その教え、しっかり学ばせていただきます!

いやいや……僕なんてそんな、とんでもない。