• 『アンサング・シンデレラ』ポスタービジュアル (C)フジテレビ

どんな制作陣とドラマを作ってきたかという“座組み”の視点で見ると、主演した直近作で特にその多彩さが際立っているのが、石原さとみだ。

18年1月期は『アンナチュラル』に主演。脚本はその前作『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)で大ブレイクした野木亜紀子氏で、監督が『夜行観覧車』(13年)や『Nのために』(14年)、『リバース』(17年)と湊かなえ原作のドラマ化で注目を集めた塚原あゆ子氏、プロデュースはその3作の新井順子氏と、『ケイゾク』(99年)や『ビューティフルライフ』(00年、いずれもTBS)などで知られる植田博樹氏という最強チームで、作品の評価も高かった。

18年7月期に主演した『高嶺の花』(日テレ)は、『101回目のプロポーズ』(91年、フジ)や『高校教師』(93年、TBS)など、90年代ドラマの大ヒットメーカー・野島伸司氏が脚本を担当。石原自身が、野島作品に出演することを熱望していたことから実現したといい、その熱意が作品にも表れ、野島氏が描く哲学的な世界観の中で、新しい石原の魅力がさく裂していた。

そして、昨年7月期に主演した『Heaven?~ご苦楽レストラン~』では、『民王』(15年、テレ朝)や『99.9―刑事専門弁護士―』(16・18年、TBS)など、ヒット作が続いていた木村ひさし監督とタッグを組んだ。過剰でトリッキーなキャラクター描写や、登場人物の心情をテロップで表示するなどの小ネタ演出が満載で、その大衆向きではないアングラな要素と、石原が持つ王道のメジャー要素とが重なることで、これまでにない斬新な作風に仕上がっていた。

直近3作は、評価の賛否はあれど、どの作品も新しいものにチャレンジしたいという石原の思いの結果が多彩な制作陣へとつながっていた。

そんな彼女の最新作は『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジ、木曜22:00~ ※放送開始まで『グッド・ドクター』再放送)。今作の脚本は『僕のヤバイ妻』(16年、カンテレ)や、『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(18年、フジ)、直近で『グランメゾン東京』(19年、TBS)を手掛けた黒岩勉氏で、近年で生み出した作品数とその質の高さは群を抜いている脚本家だ。

石原が、野木氏や野島氏とタッグを組んだ後に、黒岩脚本の作品に参加するのは、ただの偶然ではなく、やはりチャレンジしたいという思いが導いたものに違いない。今流行中の医療ドラマだが、舞台設定もこれまでになかった薬剤師とあって、見たことのない新しい医療ドラマ、そして石原の魅力にも期待したい。

■安定チームの『MIU404』、グルメ作経験豊富な『行列の女神』

その他、今期は先にも登場した、野木亜紀子脚本×塚原あゆ子監督×新井順子プロデュースの『アンナチュラル』チームが手掛ける、綾野剛&星野源W主演の『MIU404』(TBS、金曜22:00~ ※17日は『コウノドリ』傑作選)にも注目なのは言わずもがな。新しい刑事ものになるに違いない。

また、鈴木京香主演『行列の女神~らーめん才遊記』(20日スタート、テレビ東京 月曜22:00~)にも注目。フランス料理店が舞台だった稲垣吾郎主演『ソムリエ』(98年、フジ)や、イタリアンシェフが主人公の江口洋介主演『dinner』(13年、フジ)と、グルメドラマの名作を手がけてきた星護監督の最新作で、今度は“ラーメン”がテーマという異色作。画面を左右対称にするシンメトリー演出が特徴である星護監督の独特の映像世界で、『孤独のグルメ』などグルメドラマには定評のあるテレ東が新たな名作を誕生させる予感だ。