7日夕、安倍首相が「緊急事態宣言」を発令し、日本中に緊張が走った。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、テレビ局のニュース番組の現場では今、何が起きているのか。フジテレビ系『Live News it!』(平日版、毎週月~金曜16:50~)での事例を、上田平吉弘チーフプロデューサーに聞いた――。
■メーンキャスターも別スタジオに
番組ではこれまでも、出演者同士の間隔を広げるといった対策を講じてきたが、「緊急事態宣言」が発令された翌8日の放送では、メーンキャスター同士の接触を避けるため、風間晋解説委員が局内の別スタジオから出演。加藤綾子と木村拓也アナウンサーの距離も“ソーシャルディスタンス”と呼ばれる1.8mより離れ、2m以上の間隔をとり、「加藤、木村、風間の3人が、物理的に完全に離れている状態にしました」という。
また、画面上だけではなく、本番以外の場面でも、従来はキャスター3人やスタッフが参加し、車座のようになって行っていた打合せは、3人が別々で行うように。最近は間隔を空けていたスタンバイの場所も、完全に別の場所に距離を置くという措置を取り始めた。
この結果、「コミュニケーションをとるのが大変なので、他の出演者の方にも迷惑をかけてしまうんですが、趣旨に賛同していただき、無事に放送することができました」と話す。
■街頭インタビューの実施方法は…
専門家などのインタビュー取材に関しては、緊急事態宣言以前から、マイクが届く範囲まで距離をとって実施。さらに、顔と顔が対面する形ではなく、飛沫感染が起こらない角度に顔を向けている。
また、「不必要な街頭インタビューはしないことを心がけています。なかなか明確な基準はないんですが、数としては減っています」とのこと。実施する場合も、感染リスクを避けるため、マスクをしていない人には声をかけないと決めているそうだ。
SNS上などでは、世間でマスク着用がマナーになっていることから、ニュース番組のキャスターも本番中に着けるべきではという意見が上がっているが、「ニュースを話している人から第三者に感染させるようなスタッフの配置構造にはなっていないので、心配のない形で放送をしています。ただ、視聴者の方がどう見るのか、何を気にされるのかというところは本当に未知数で、日々変わっていくところがあるので、コロナの進展によっては新しい結論を出す局面があるかもしれないと思っています」という。
■災害報道の意識“暮らしを守れ”
『Live News it!』では、「暮らしを守れ」というスローガンを掲げて放送しているが、これはもともと、甚大な被害をもたらした昨年の台風19号の報道の際に制定したものだ。
「災害報道の伝え方として、日々の生活者の暮らしを守るための情報、そして少しでも役に立つ情報を意識してやっていこうということで掲げていたのですが、今回の新型コロナで、2月24日に専門家会議が『瀬戸際の2週間』だと言った瞬間に、これは災害だと思ったんです。それならば、災害報道で心がけることとして打ち出した“暮らしを守れ”でやっていこうということで、その日からずっと掲げてやっています」
この一環として、6日の放送では、加藤が「『it』は“買いだめ”をあおりません」と宣言。スーパーや工場などを取材し、在庫が十分にあることを伝える情報発信を開始している。