●デビュー時から逆算!? カバー曲選曲の秘話
――そして、映像を挟んでからはアニソンカバーを3曲歌われました。こちらは今回は未収録ではありますが、アツい曲揃いで。
ぜんっぜん手加減する気なかったです(笑)。「ダイアモンド クレバス」「God knows...」「SKILL」を歌わせていただいたんですけど、デビュー当時から「20歳になったらたぶんライブをするから、そのときのためにとっておこう」って、逆算して行動してたんです。だから、例えば何かの機会にカバーのご相談をいただいても絶対その曲は歌わなくて(笑)。この日のために何年間も温存していた十八番であり大好きな曲だったんです。
――それを、ついに解禁したのがこのとき。
はい。でも、歌う前に「では聴いてください」って振るのもちょっと違うよなと思ったので、お色直し中にインタビュー風の映像を入れていただいて、その中で「『涼宮ハルヒの憂鬱』がターニングポイントで、尊敬している人はMay'nさん。で、私たちみたいな若手アニソンシンガーがJAM Projectさんのようなでっかい先輩たちの楽曲を歌い継がなきゃいけないんですよ」っていうのをお話ししたうえで、その伏線を回収するかのように「SKILL」が始まるっていう……私もですけど、みんな伏線回収大好きじゃないですか(笑)。
――たしかに(笑)。
それに、ちゃんと選曲の理由も伝えたかったし……この方法またやりたいんですけど、みんなもうこの手法を知っちゃっているから、「何歌うんだろう?」って考えられながら映像を観られちゃうと思うんです(笑)。だからちょっと間を空けて、またやりたいですね。
――アニソンカバー後は、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の主題歌を2曲続けて歌われました。
『YU-NO』が初めて2クールに渡って主題歌をうたわせていただいた作品だったので、ここは独立させたほうが世界観が伝わると思って、あえてこの2曲だけで終わらせました。ここまで独立させたのは初めてだったので、作品が好きな方には喜んでいただけたんじゃないかなと思っています。
――いずれも歌声や雰囲気で楽曲のミステリアスさを表現しつつ、映像を見るとサビではめちゃめちゃ楽しそうで。
本当は、志倉(千代丸)さんの曲を歌うときって無になるのがポイントなんですよ。感情を込めると世界観に飲まれちゃうので、俯瞰しながら歌わなきゃいけないんですけど……ライブは気分が上がっちゃって、ダメですね(笑)。あの現象不思議だよなぁ。声だけでも口角が上がっているのがわかるぐらい、声にも楽しんで歌っているのが出ちゃっていて。それはそれでライブの醍醐味なんじゃないかな、と(笑)。
●ファンとともに歩んだこれまでを、改めて実感した大事な2曲
――その後のバラードゾーンでは、初の椅子あり会場でのワンマンなのでお客さんが座っているなか歌うのは初めてだったと思います。そのなかで、ポイントにされたことは?
「Marine SNOW」からの3曲は、バラードコーナーでありつつどの曲も愛や恋について綴っているラブソングコーナーという意識があったので、その最初を飾る「Marine SNOW」にはすごくポイントを置いて、とにかく一言一句伝わるように全部丁寧に歌いましたね。
単語というよりも、あいうえおも一つひとつ余すことなく力を注いでいったので、いちばん神経を使ったのは"殺人セットリスト"よりもここだったと思います。ただ、3曲ともそれぞれ恋や愛に対するストーリーとか背景が全く違うので、なおさら気持ちを込めなきゃ伝わらないとも思っていました。
――そして本編ラストを飾ったのは、「Edelweiss」と「SHINY DAYS」の2曲。
セットリストを決めるとき、真っ先に「歌わなきゃ」と思ったのがこの2曲でした。自分のアニソン歌手としての人生において、いろんなきっかけをくれた曲だから。歌っていると自分自身結構ぐっと来るものがあったのでいつもより力強い歌い方になってしまったんですけど、「楽しくやろう」とは全然意識していなかったのに楽しそうに歌っている自分の姿を見られて何より嬉しかったですし、なんだかほっとしましたね。本当にアニソン好きなんだなって(笑)。
――「Edelweiss」はMC中にお客さんがなんとなく察して、ペンライトの光が白に。
そうそう! 話の内容から、まだタイトルコールもしてないのにみんな準備し始めて(笑)、察する能力がすごいなって思いました。それぐらい私のことを知ってくれているんだな、って。
――それ以外にも、「SHINY DAYS」の落ちサビでも振られる前からお客さんが合唱しだして。
もう、それ感動しちゃって私! 今までは自分のワンマンでも、初めて来てくれた人もわかりやすく楽しめるよう「いくよ!」みたいにちゃんと誘導をするように心がけていたんですよ。でもこの日は、歌っていくうちに「あ、今日はたぶん亜咲花を知らない人いないな」と思ったんです。その現状に、すごく感動しちゃって。
ずっと楽曲を育ててきたことが、ここでやっと報われたという感覚が非常に強かったですね。それに、その部分にちょっと遊び心を入れて、「今日朝ごはん、パン食べた人!」とか区切って歌ってもらったんですけど、そのなかで「18歳のとき、初めてのバースデーイベントに来てくれた人!」って呼びかけもしたんですけど……。
――すごく大きな声が返ってきていましたね。
そうなんです。「この2年間にいろんな出会いも別れもあったし、たぶん少ないだろうな」ってちょっと覚悟もしていたのに、イヤモニを外したら返ってきた声がすごく大きくて! ずっと一緒にこの2年間歩んできてくれたんだなと思ったらめちゃくちゃ嬉しかったし、その他にもたくさんの人がこの2年の間に一緒に歩んでくれるようになったんだなと思うと、「頑張って歌ってきた甲斐があるな」と感じた瞬間でもありましたね。