• 「日光さる軍団」新入社員の小林夢子さん(左)と吉澤佑哉さん (C)フジテレビ

今回の『ザ・ノンフィクション』では、昨今叫ばれる働き方改革の波が押し寄せる猿まわしという伝統芸能の現場を、新人たちの奮闘を通して描いている。

かつては弟子入りして芸の道へ“入門”するのが当たり前だったが、今は「株式会社モンキーエンタープライズ」という興行会社に“入社”。サルと24時間365日家族同然に過ごし、師匠から弟子へと厳しい指導で受け継がれてきた伝統のスタイルと、週休2日のシフト制・労働時間厳守のせめぎ合いの中で芸を磨き、従来と同じように客前に出なければならない。

「なんだかんだ言っても、猿まわしは芸なので、カリキュラム通りにやって身につくわけではないんです。仕事を超えて、自分自身が鍛錬して芸を磨がなければいけないという部分がどうしてもあるので、そこは、太郎さんや先輩たちの姿を見て、盗んで、会得してやっていくしかないと思うんですよね。りく君が病に倒れたとき、相方のゆりあは24時間付きっきりでしたけど、そこに『残業代は?』という世界じゃないですから、仕事の時間が区切れないんですよ。相手は生き物で、家族同然ですから」

そんな新入社員たちにとって、「モンキーエンタープライズ」の会長である村崎は“会社のお偉いさん”。その感覚を理解しなければならないと分かっていながらも、「太郎さんはどこかで『お前ら弟子だろ!』って体が反応してしまうことがありますね(笑)。ただ、あれが我々の世代の背負っているものなんじゃないかという気もします」と同情した。

■夢が尽きない59歳・村崎太郎

新入社員は毎年採用しているそうで、「若い人たちがどんどん入ってくるんです。『そんなに入れてどうするの?』って思うんですけど、太郎さんは『第2劇場、第3劇場、海外よ! だから芸人はいくらでも必要なんだ』と構想をよく話しています」と、59歳になった今も夢は尽きない。

密着した新入社員は5人いるが、「全員並列に紹介するのはテレビの尺の中ではできないので、何人かをピックアップする必要があるんですけど、皆さんそれぞれに物語があって、初期の段階では決まらなかったんです」と、撮れ高があった様子。

あらためて今回の見どころを聞くと、「昭和の人も平成の人も、これから働きに出る令和の人も、いろんな世代の人たちの目線で見られると思います。形は日光さる軍団ですけど、日本の社会にはどこにでもある、みんなが共感できるお話だと思うので。だけど、太郎さんを見て『昭和のおやじは偉いんだよ!』っていうところも、同じ世代としてはやっぱり見てもらいたいなと思いますね」と話した。

  • (C)フジテレビ

■YouTubeで世界発信も

今回は、撮影に専念した永山氏だが、「演出の田中(秀樹氏)とディレクターの金子(知広氏)が『ぜひやりたい』と手を挙げてくれたんです。若い人たちが興味を持って番組に参加してくれるのは本当にうれしいですし、こうして彼らが受け継いでやってくれるといいなと思いますね」と、猿まわしという伝統芸能と同様、取材する側も継承が進んでいるようだ。

一方で、日光さる軍団の取材は永山氏のライフワークにもなっており、「番組の企画が決まってからではなく、いつかどこかで出せるんじゃないかと思いながら撮っています。企画が通らないことのほうが多いんですけど、どこかで目に留めてくれる人が現れて、放送への道を開けてくれるというのは本当にありがたいです」と語る。

そんな中で、最近では日光さる軍団のYouTube公式チャンネルにも携わっている永山氏。「なかなか好調で、登録者数が10万人を超えて『銀の盾』が贈られました。見てくれているのは海外の人が90%以上なんです。昔に比べて、海外公演をするにも動物の検疫のハードルがかなり厳しくなっているので、こうしてYouTubeで世界中に発信できるのはいいですね。太郎さんはいつも、くさいセリフですけど『世界中の子供に笑顔を』と真顔で言ってるんですが、それができますから、状況が許す限りは私も撮り続けていきたいと思います」と意欲を示している。