シンプルイズベストなインテリア

見た目の変化をより感じられるのはインテリアだ。フロントガラスエリアが拡大したことにより視界は広がり、車内は明るくなった。メーターパネルや操作系統は極めてシンプル。すっきりとしたインテリアはまるで、SF映画に出てくる小型宇宙船のコックピットの様だ。前席の乗員とフロントガラスとの距離がしっかりと確保されている上、ダッシュボードの位置も低くなっているので、車内の広さも感じられる。

  • ホンダの新型フィット

    小型宇宙船のコックピットを思わせる新型「フィット」のインテリア

メーターはシンプルだが分かりやすく、機能面で不足は感じなかった。よく作り込んであると思う。7インチの画面は表示内容が切り替え可能で、ほぼ全ての車両情報が確認できる。例えば速度中心のシンプルな表示としたり、「ACC」など先進機能の作動状況を表示させたりといった使い方が可能だ。

  • ホンダの新型フィット

    メーターは7インチのディスプレイに。表示内容は切り替え可能だ。写真は、エンジン回転計が表示できるガソリン車のもの

新型フィットのシフトレバーは、ハイブリッドを含め標準的なフロアシフトタイプになった。ハイブリッド専用シフトが扱いにくいと感じていた筆者としては、通常のAT車と同じデザインとなったことを歓迎したい。また、純正ナビとエアコンがスイッチ式に戻ったことも大いに評価できる。これにより、手探りでの操作がしやすくなるからだ。もちろん、ナビ画面はタッチスクリーン式である。

  • ホンダの新型フィット

    ハイブリッド車のシフトレバーも標準的なフロアシフトタイプになった

  • ホンダ「フィット」の先代モデル

    ちなみに、これが先代「フィット」のハイブリッド車に設定されていた専用のシフトレバーだ

シートの座り心地も前後とも良好だ。特に後席は、ソファーのような包み込まれた感覚があり、快適度が大幅に向上している。質感が高まった後席だが、機能性はしっかりキープ。折り畳みはワンタッチで、シートの座面を跳ね上げる「チップアップ機構」も継承している。チップアップ機構を使えば後席座面を跳ね上げ、フロア上に荷物を置けるようになる。

  • ホンダの新型フィット

    後席のシートはソファーのように包み込まれる感覚の座り心地

ラゲッジスペースは容量が数値で公表されていないのが残念だが、先代同等の実用性を維持しているという。テールゲートの開口部は拡大しているので、荷物の積み下ろしは楽になるだろう。基本的にはワゴンボディのままなので、後席を倒せばいろいろな物が載せられるし、ある程度の高さがある荷物でも、後席をチップアップさせれば飲み込んでくれるはずだ。

  • ホンダの新型フィット

    テールゲートは開口部が拡大した。フルフラット状態だと、かなり広い荷室となる

1.3Lでも侮れないガソリン車の走り

さて、ここからは実際に乗った印象を報告したい。先に試乗したのは1.3Lのガソリン車「HOME」だった。

  • ホンダの新型フィット

    ブルーの外装色と丸みを帯びたデザインは初代「フィット」の面影を感じさせる

正直にいえば、先に1.3Lを選んだのは、ハイブリッドとの差にがっかりしないためであった。しかし、その予想は、良い意味で裏切られることになる。愛らしい見た目とは裏腹に、かなりキビキビとしたスポーティーな走りを見せてくれたからだ。

1.3Lエンジンの性能は最高出力98ps、最大トルク118Nmと標準的なスペックだが、スムーズな回転フィールを持ち、高回転まで回しても雑味がない。新型フィットを作っているのが、かつては「エンジンのホンダ」と称えられたメーカーであることを思い出させるほど、良好な感触なのだ。パワフルさはないが、新開発のCVTとの相乗効果により、しっかりとエンジンの実力を引き出しているようだ。

ボディ剛性は高く、足回りもしっかりしている。強いていえば、やや足が硬めとも思えるが、そこもホンダらしいシャキッとした走りにもつながっているのだろう。もちろん、しっかりとショックをいなしてくれるので不快な硬さではない。タイトな峠道や一般道、高速道路まで走ってみたが、全体を通して、不満を感じるシーンは特になかった。むしろ、エンジンをしっかり使い切って走ることに喜びが感じられるクルマだと思う。

走行中の快適さは、先代をはるかにしのぐ。風切り音が抑えられ、全域で静粛性が高まっている。高速域を含め、エンジン音がうるさいと感じるシーンも特になかった。