Visaがタッチ決済(非接触決済)事業を拡大させる。ビザ・ワールドワイド・ジャパンは2月19日、都内で「Visaキャッシュレス推進プロジェクト2020」を開催。
同社のスティーブン・カーピン社長は、キャッシュレス決済に注目が集まる消費者市場を捉えて「国内企業が協業し、かなり勢いがついている。タッチ決済も必ずや普及する」と自信をのぞかせた。
Visaカードの事業戦略
登壇したカーピン社長は、まずVisaカードの国内事業の進捗について報告した。Visaブランドのクレジットカードの発行枚数は1億6,000万枚に到達。そのうち1,900万枚が非接触決済に対応した(2019年12月末現在)という。1年間で500万枚から1,900万枚まで増加したことを考えると、発行枚数が指数関数的に増加していることがわかる。
Visaのタッチ決済に対応する端末も、この1年で3.8倍まで増えた。コンビニ、コーヒーチェーン、スーパー、ファストフード、ドラッグストアなどで日常的に利用する層が増えており「事業の成長に欠かせない存在となってきた」(カーピン社長)と評価する。折しも18日には、セブンイレブンが6月から「NFC Type A/B」によるタッチ決済に対応することを発表したばかりだ。
しかし今後、乗り越えていくべき課題もある。カーピン社長は「日本とアメリカ以外の国と地域では、Visaネットワークを利用した取り引きの半分が非接触決済となっている」と婉曲的に表現する。
日本では周知のように、タッチ決済とは手段が異なるPayPay、楽天ペイ、d払い、LINE Payなどに代表されるQR決済(バーコード決済)の関心が高まっている状況。これについては「市場に様々な決済サービスが出てきて複雑になったため、消費者、加盟店に混乱が起きている。これを簡素化していく必要がある」と分析する。そしてワールドワイドにVisaカードを普及させてきた実績に言及すると「日本でも絶対にうまくいくと自信を持っている」としつつ、表情を引き締めた。
カーピン社長は、あらためてタッチ決済のメリットについて次のように説明した。
「非接触決済なら、ただタッチするだけで良い。スマートフォンの画面を出す必要がなくなる。加盟店にとっても(現金による支払いと比べて)8秒の時短になる。日常的に何百人が決済することを考えると、節約した時間でもっといろんなものが売れる」
そして「Visaカードは世界中で安全に使えることを保証する。日本人が海外でVisaカードを使う、また訪日外国人が日本でVisaカードを使う、そんな消費者体験をサポートする」。
さらには「日本の消費者は、まだATMで現金を引き出している。しかし、Visaデビットを使うことで銀行のお金に直接アクセスしつつも、安全に買い物できるようになる。スマートフォン、スマートウォッチなどの端末でeコマースを利用するシーンにおいても、Visaは最善の手段になる。ベストな生産性とセキュリティを社会にもたらす」とアピールした。
2019年10月1日からキャッシュレス・ポイント還元事業を開始した日本政府は、2025年までにキャッシュレスの利用比率を現在の2倍まで拡大するとしている。この機運に乗り、ビザ・ワールドワイド・ジャパンでもVisaカードの普及をさらに推し進めていきたい考えだ。
Apple Payにはいつ対応?
カーピン社長は引き続き、記者団の囲み取材に対応した。
Google PayならVisaのタッチ決済が使えるが、日本のApple Payには未対応。この状況について聞かれると「まだ発表には至っていませんが、あらゆるプラットフォームに対応することの重要性について認識しています。日本の消費者の皆様に、そういった方法で決済していただくことも重要と考えています」と答えるにとどまった。
日本の独自規格「FeliCa」についてコメントを求められると「早い段階で日本の消費者に浸透したおかげで、タッチ決済が身近なものになりました。一方でNFC Type A/Bはグローバルスタンダードであり、我々が広めている方式。どちらか1つを選ばなくてはいけないというものではなく、選択肢があることも重要だと考えています」とした。