挑戦者の谷口由紀女流三段を寄せ付けず。女流棋戦11連覇&女流名人11期獲得は史上最多

将棋の女流タイトル戦、第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負(主催:報知新聞社)第3局が2月11日に岡山県真庭市「湯原国際観光ホテル 菊之湯」で行われました。里見香奈女流名人が谷口由紀女流三段の挑戦を受ける本シリーズはここまで里見女流名人の2連勝。タイトル防衛か、それとも挑戦者が反撃を開始するのかが注目された本局は、94手で里見女流名人の勝利となりました。

里見女流名人が第1・2局を完勝して迎えた第3局。先手番の谷口女流三段は先手中飛車を採用しました。里見女流名人が向かい飛車で対抗すると、一直線に銀を繰り出して銀交換をする工夫を見せます。前例が16手目にしてなくなる意表の展開となりました。

経験のない形になっても里見女流名人は慌てません。交換したばかりの銀を打って先手の攻めを封じてから、玉を囲い、攻めの形を作ります。谷口女流三段の桂を使った攻めには、がっちりと銀を投資して受け止め、自陣へ攻め入る隙を与えませんでした。

谷口女流三段の攻めが止まってからは、里見女流名人の独壇場でした。まずは飛車を縦横無尽に活用して持ち駒に歩を蓄えます。そして先手陣に隙ができるや否や、その歩を連続で打ち捨てて王手銀取りの十字飛車を実現。飛車を成り込んでからは「出雲のイナズマ」のニックネームに違わぬ電光石火の寄せがさく裂。遠く8筋に竜を作られた以外は手つかずだった谷口女流三段の美濃囲いを、わずか5手で崩壊させ、94手で勝利しました。

シリーズを通して一切の隙を見せなかった里見女流名人。挑戦者を圧倒して、女流名人のタイトルを11連覇です。これは林葉直子元女流が持つ10連覇(1981~90年度の女流王将戦)の記録を更新する女流棋戦最多記録。また、女流名人の獲得数でも清水市代女流六段の10期を上回り、史上最多となりました。

現在、女流棋戦は里見女流名人と西山朋佳女流三冠(奨励会三段)の2強と言われています。西山三冠は奨励会員で女流棋士ではありません。里見女流名人が最後にタイトル戦で女流棋士に敗れたのは、2年前の第29期女流王位戦までさかのぼります。今回の圧勝防衛劇は、改めて2強の抜きん出た強さを浮き彫りにさせたと言えるでしょう。

圧倒的な強さで11連覇を達成した里見女流名人