マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、近年の日米の株価変動や、両者の違いについて語っていただきます。

  • 日米株価が示唆するアベノミクスの終焉

新型コロナウイルスの感染拡大により足もとで調整局面もみられますが、米国の株価は昨年終盤以降、高値更新を続けてきました。一方で、日本の株価は平成バブルの最盛期だった1989年末の水準に遠く届かないだけでなく、現在でも2018年1月の直近高値を10%以上下回っています。

日本経済の地盤沈下

そうした日米の株価動向の違いは、単純に両国の経済力の格差、換言すれば日本経済の地盤沈下によって説明することができるでしょう。日本の経済規模を示すGDP(国内総生産)は過去30年近く500兆円台前半で推移してきました。550兆円を超えてきたのはようやく2019年になってからです。一方で、米国のGDPは足もとで約22兆ドル(2,400兆円)、30年前のほぼ4倍になっています。

日米相対株価

さて、近年の日米株価をもう少し詳しくみてみましょう。取り上げたのは日米相対株価です。具体的には、TOPIX(東証株価指数)を米主要株価であるS&P500指数で割ったものです。簡便的にTS倍率(=TOPIX/S&P500)と呼んでおきます。TS倍率は日米の株価が上がったか下がったかには関係なく、あくまで日本株が米株よりもパフォーマンスが良ければ上昇し、悪ければ低下します。

足もとのTS倍率は2000年以降で最低だった2012年末ごろの水準に並びかけています。換言すれば、米株に対して日本株の割安感が強まっています。

TS倍率の上昇と低下

2012年末といえば、民主党政権が倒れ、自民党安倍政権が誕生したタイミングです。2009年9月からの3年3カ月におよぶ民主党政権下で、TS倍率は2000年以降の最低水準を下回って低下を続けました。そして、安倍政権の誕生とほぼ同じタイミングで、TS倍率は上昇に転じました。安倍政権が打ち出したアベノミクスを好感したためでしょう。

しかし、TS倍率は2015年半ばをピークに低下に転じました。2015年10月の消費税引き上げ(8→10%)が延期され、アベノミクスが色褪せ始めたタイミングとほぼ一致すると言えば、言い過ぎでしょうか(ただし消費税引き上げの延期決定は2014年11月)。

そして、現在のTS倍率は2012年末にほぼ並んでいます。つまり、アベノミクスによって2012年末から2015年秋にかけて日本株が米国株をアウトパフォームした分を、ここ4年ほどの間に全て吐き出したと言えなくもないでしょう。

日本株が米株をアウトパフォームするのは困難!?

今後について、割安感から消去法的に日本株が買われる、あるいは米株が大きく下落する一方で日本株の下落が小幅にとどまるといった形で、TS倍率は上昇するかもしれません。ただ、日本経済が米国経済以上に良好となって、積極的に日本株が買われてTS倍率が上昇する姿を想像するのはかなり難しそうです。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、 2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている 同社のWEBサイトで多数のレポートを配信(一部は口座をお持ちの方限定で公開)する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。