横浜市の京急グループ本社1階に21日、「『本物』を見て、触れて、楽しむ」をコンセプトにした「京急ミュージアム」がオープンする。これに先立ち、プレス向けの内覧会が1月20日に開催された。
「京急ミュージアム」は京急創立120周年記念事業の一環として、京急グループ本社内に整備された。昭和初期から活躍したデハ236号(デハ230形)をはじめ、沿線を再現したジオラマなどが展示され、運転体験シミュレーター体験や工作体験も楽しめる。
オープン当初は混雑が予想されるため、2月24日まではインターネットからの事前申込みによる抽選入場となる。当選通知を持たない人は入場できないとのこと。
■デハ236号で体感する京急の歴史
「京急ミュージアム」の展示の目玉であるデハ236号は、湘南電気鉄道デ1形として1930(昭和5)年から運行され、品川~横浜~浦賀間の直通運転を実現した車両だ。この車両は運転台のある電動車で、現在に続く京急伝統の先頭電動車である。1948年に「大東急」から各社が分離し、京浜急行電鉄発足時にデハ230形となり、1978年までの48年間活躍した。
高速化のスタイルを確立した電車であり、大きな窓や軽量で丈夫な車体構造で、地下鉄区間の走行も考慮されていた。走行性に優れた軸受も特徴だった。
このデハ236号は、川口市児童文化センター(現在の川口市立科学館)で保存・展示されていたものを2年かけて修復し、現在のように展示できるようにしたものである。「京急ミュージアム」では、台車や主抵抗器、主制御器などが見えるように展示されており、ドア開閉等の体験もできるようになっている。
デハ236号が展示されているコーナーは「京急ヒストリー」と題し、デハ230形が引退したころ、1970年代のホームを再現している。案内表示などは当時のフォントを使用し、ゴミ箱は分別されず、捨てられていた新聞もロッキード事件のときの小佐野賢治証人喚問のものとなっている。
車内に入ると、京急の歴史を紹介するコーナーがあり、創業時から第二次世界大戦中の「大東急」、沿線開発を進めていた高度成長期から羽田空港への乗入れ、そして現在へと続く歴史にまつわるものが展示されている。
■京急沿線を再現したジオラマも
網を使用した網棚や扇風機といった設備も当時のものを復元させ、一方で床下の主電動機なども見られるようになっている。運転台にも入ることができ、いまよりも簡素な運転設備や、車掌のアナウンス設備も体験できる。車両後方近くに踏切の非常停止ボタンを体験できるコーナーもあった。
「京急ミュージアム」の中心には、京急沿線を再現したHOゲージの鉄道模型ジオラマがある。品川駅や京急蒲田駅、上大岡駅といった主要駅を再現しただけでなく、三浦半島の風景や羽田空港も模型となり、京急の久里浜工場の広さも表現されている。
品川駅の駅構内や、京急蒲田駅の二重構造の再現はとくにていねいであり、実際にこれらの駅を利用したことがある人には興味深く見えることと思われる。ジオラマの中を走行する模型の先頭車両から、映像を見ながら運転体験をすることもできる。
■シミュレーターや「車両工場」も楽しい
「京急ミュージアム」には運転シミュレーターもある。新1000形を使用し、京急ファインテックと音楽館が手がけた。実際に使用される電車と同様の運転台で、迫力の先頭映像を体験するだけでなく、難易度に合わせてコースを選ぶことも可能であり、多くの人が楽しむことができる。
また、バスも京急グループの重要な一員である。バス運転台を再現したコーナーでは、運転士気分を体感することができ、行先表示を操作することも可能となっていた。
「マイ車両工場」では、京急の車両について講義を受けたのち、オリジナル車両の工作体験ができる。用意された色鉛筆などを使用して「プラレール」を制作し、持ち帰ることができる。
20数年にわたり運転士を務め、指導運転士にもなった館長の佐藤武彦氏は、この「京急ミュージアム」の開館にあたっての抱負を「第1に子どもたちの笑顔があふれる館に。第2に京急の取組みを理解してもらえるように」と語った。来館者に対しては、「楽しんでほしい」とのことだ。
私鉄各社の中でも、とくに人気の高い京急電鉄。オープン後しばらく予約・当選した人のみの入館となるが、「京急ミュージアム」は面白い・楽しい施設として人気を集めることになりそうだ。