スポーツジャーナリストの増田明美が14日、解説を担当する『奥村組スポーツスペシャル 第39回大阪国際女子マラソン』(カンテレ・フジテレビ系、26日12:00~14:55)の取材に都内で応じ、独特な解説スタイルの裏側を明かした。

  • 『第39回大阪国際女子マラソ』の解説を担当する増田明美

■最後の1枠「すごく面白くなる」

増田は、同大会に選手として4度出場、13年間の現役生活を終え、93年から解説を務めてきているが、2020年東京オリンピック女子日本代表の最後の1枠を争う今回について、「すごく面白くなると思います」と予想。

「スピードランナーが多いですね。福士加代子さん、松田瑞生さん、小原怜さんの3人を関西テレビは目玉として紹介してますけど、3人それぞれにドラマがあるんです。これまでの競技人生においてすごく特徴のある3選手なので、そういう人が1枠を狙って争うっていうのは、見てても緊張感がありますね」と見どころを語る。

■「芋女みたいに言わないで!」

増田の解説と言えば、選手本人にとどまらず、家族や周囲からも深い取材をして得たプライベートな話題にも触れ、思いや人となりを伝えるという独特すぎるスタイルが人気だが、松田選手については「生クリームが大好き」という情報を披露。「チームのスタッフが、フランスパンを焼いてくれるんですって。その中に生クリームを入れて食べるのが今一番楽しみなんだそうで、大事な練習は最後のほうで『生クリーム、生クリーム、フランスパン、フランスパン』って言って頑張るんだそうです」と明かした。

だが、「(松田選手は)何年か前までは、終わった後にファミリーレストランに行って『紫芋のアイスが食べたい』って言ってたから、そのことを話してたら『芋女みたいに言わないでほしい!』って怒られちゃったんです。『今は紫芋じゃなくて、生クリームです』って」と、本人から情報をアップデートされることもあるという。

ほかにも、昨年末の『富士山女子駅伝』で優勝した名城大の加世田梨花選手について、「成田高校の後輩なんですけど、小柄でイノシシみたいな大好きな走りなので、“かわいいイノシシ”って言ったら『やめてください』って言われたから、“ウリ坊”にしたんですよ。でも『ウリ坊も嫌だ』って言うから、カピバラだったらいいかもしれないってなって」と変遷があったそうで、「良いイメージで言ってるんだけど、私の作ってるキャッチフレーズが空回りしてるところがあるので、そのへんは気をつけながらいきたいな」と反省した。

一方で、今回の『大阪国際女子マラソン』に出場する小原選手には、岡山出身で惜しいレースが多いことから「悔し涙の桃太郎」と付けたが、クレームはないとのこと。すでに五輪代表に内定している前田穂南選手に「ど根性フラミンゴ」と付けたときは「本人も気にしてるかなと思ったら、そうでもないらしくて」と、受け止め方は選手それぞれのようだ。

■永六輔さんと『ひよっこ』の影響

この解説スタイルが生まれたのは、故・永六輔さんの影響が大きいのだそう。「ラジオの仕事を始めたとき、永さんに『マラソン中継はよく見てるけど、独走になるとつまらなくなる。俳句の一句でも詠んだほうがいいですよ』って言われたんです」と、視聴者を飽きさせないために工夫を凝らすように。実際に、宮城県で行われる『クイーンズ駅伝』で解説した際、松尾芭蕉が歩いた道を逆方向に走るコースだったことから、『多賀城のところで『あやめ草足に結ばん草鞋の緒』って芭蕉が詠んだ句を紹介しました」と、マラソンにぴったりの一句を伝えたこともあった。

また、テンポの良い語り口で、NHKの朝ドラ『ひよっこ』(17年)のナレーションにも起用されたが、「あれはいい勉強になりました。脚本の岡田惠和さんにしても、プロデューサーの方にしても、ドラマの方々は心の襞(ひだ)が多い。私たち競技者は『強くなきゃいけない』っていう生き方をしてるけど、『ひよっこ』をやらせていただいたときに、本当にいろんな方に寄り添うのね。だから、寄り添うことを教えてもらいました」と、自身の解説に影響を受けたことを教えてくれた。

取材ノートは、1大会で大学ノート1冊分にもなるといい、この取材会でも、ノートに目を通しながら、また質問する記者の名前をメモしながら、1つ1つの質問に丁寧に答えてくれた増田。今回の『大阪国際女子マラソン』では、高橋尚子と同じ移動車に乗って解説を担当するが、「私はエピソードをいっぱい取材してるので、基本的に競技のことはQちゃん(高橋)に言ってもらいます」と、役割分担してプライベート情報に徹することを予告した。