返礼品の内容について総務省と一部自治体がもめるなど、何かと話題の「ふるさと納税」。制度スタートから10年を超え、ふるさと納税の活用方法にもさまざまなカタチが登場しています。

地震や台風などの被害を受けた自治体や使途が決まっているプロジェクトに直接寄付をしたり、自然災害や天候不順でキズなどがあって出荷できない“訳アリ”農作物を返礼品として受け取るなど、お得に注目するだけではない「ふるさと納税」を紹介します。

ふるさと納税は自治体への直接寄付だからスピーディに届く

地震や台風などの大規模災害が起こると、日本赤十字社や中央共同募金会を義援金受け付け先とした寄付が募集されます。メディアを通じて行われるため大きなお金が集まりますが、義援金は被災の程度に応じて公平に分配することが基本。

配分に当たっては義援金配分割合決定委員会が設置されて配分方針が決まり、それに従って都道府県→市町村→被災者というプロセスを経て送金されます。さらに受け取るためには、各種の書類をそろえる必要があるため、被災者の手元へ届くまでにはかなりの時間を要します。

それに対して、ふるさと納税での寄付は被災自治体へ直接届けることができるため、スムーズに支援金として活用されます。また被災した自治体は災害復旧で手一杯であることがほとんど。そのため、熊本地震発生時に茨城県境町が行ったのをきっかけに、被災地以外の自治体が支援金を代理で受け付け、寄付金受領証明書などの事務作業を代わりに行うという仕組みもできました。

現在、寄付の受け付けが行われている主な災害例は下図の通りです。ふるさと納税を取り扱うポータルサイトで特集ページを作るなどして、災害支援を受け付けている自治体をピックアップしました。どこへ寄付をしたらいいかわからないという人は、チェックしてみるといいでしょう。

被災地支援につながる返礼品を選ぶ

大規模な自然災害が起こると、決まって大きな被害を受けるのは農家の方たちでしょう。味にまったく問題はなくても、水をかぶったりキズがついたりといったように見た目に難があると出荷できなくなってしまいます。そんな農作物や、それらを使った加工品を返礼品にするという自治体も登場しています。その例をまとめたのが下図です。

加工品の場合はある程度の期間紹介されていますが、自然災害の被害を受けやすい果物は、数量が少ないため期間限定で返礼品として出されていることがほとんどです。支援を考えるなら、大きな災害が起こった直後に検索してみるのがおすすめです。

ふるさと納税でもクラウドファンディングが存在感を増している

資金調達のひとつの方法として、民間では広く活用されるようになったクラウドファンディング。ふるさと納税でも、寄付金の使途が明確なこの方法で寄付を募るスタイルが増えています。最大のメリットは共感するプロジェクトを自由に選べるため、寄付者の想いをダイレクトに反映できること。通常のクラウドファンディングとの違いは、プロジェクトオーナーが自治体だから必ず事業が行われるため、目標金額に達成しなくても返金されません。

今回紹介したものは「ふるさと納税」の仕組みを使った寄付ですから、もちろん確定申告やワンストップ特例制度を利用することで所得税・住民税の控除対象になりますし、返礼品を受け取ることもできます(一部、返礼品がないプロジェクトもあり)。ふるさと納税の新しいカタチは、お得だからという気持ちから一歩進んで“納税”の意義を考えるきっかけにもなりそうです。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。