2020年、年明けからアニソンファン必見の音楽番組が放送される。『オダイバ!!超次元音楽祭』(フジテレビ、1月2日24:50~26:50 ※関東ローカル)と題されたこの番組は、水樹奈々やAqoursといった他の歌番組にも出演するような面々はもちろん、花澤香菜、やなぎなぎなど、音楽番組での歌唱がレアなアーティストに、音楽番組初登場となるClariSまで、全17組の多彩な顔ぶれが出演する2時間のスペシャル番組だ。

しかも、あの『FNS歌謡祭』の制作チームが本気で担当するとのこと。そこで、本番組の企画・演出を担当する浜崎綾氏にインタビューを敢行。実現に至るまでの経緯や番組の全体像・基本姿勢を中心に、熱く熱く語ってもらった――。

  • 水樹奈々、蒼井翔太

    『オダイバ!!超次元音楽祭』に出演する水樹奈々(左)と蒼井翔太

■”趣味”だったアニメが“仕事”に

――そもそも浜崎さんは、アニソンやそれを歌うアーティストには、どんなきっかけで興味を持たれたのでしょう?

元々アニメは好きだったんですよ。ただ、それは仕事とは切り離した”趣味”としてで……アニサマ(Animelo Summer Live)とかも行っていましたし、アニメ作品も結構観ているほうだとは思うんですけれど、それは仕事とは別のあくまでも趣味。ちゃんとチケットを買って楽しむ……みたいなスタンスで楽しんでいたんです。

――それが今回のように“仕事”になったのは、なぜですか?

私は2012年から『FNS歌謡祭』の演出をやっているんですけれど、今って地上波の音楽番組に登場する人物があまり入れ替わらない時代になっているんです。自分が番組を作るなかでも若干の行き詰まりを感じるようになりまして、「新たな登場人物を生み出さなきゃいけないな」というフェーズに入っていたんです。そこで思ったのが、「これはもう、絶対アニソンの人たちだろう」と。地上波のゴールデンタイムでも伝わるキラキラ感とインパクトを与えられるのはこの人たちしかいないと思ったんです。

――浜崎さんは、今回取り上げるようなジャンルの魅力について、どういったものだと思われていますか?

まず単純に、例えば水樹奈々さんや藍井エイルさん、LiSAさんみたいなアーティストって、「なかなかここまで歌える人、J-POPシーンに多くないぞ」と感じるぐらい歌唱力が高いんです。だから演出目線で言うと「この曲かっこよく撮りたいな」っていう曲も多い。音楽番組の作り手としては、やっぱりそこにいちばん魅力を感じますね。あと、アニソンというジャンルで言うと、新房昭之監督の『(物語)シリーズ』や幾原邦彦監督の作品がすごく好きで。そのおふたりって、音楽の使い方がすごくうまいと思うんです。音楽やキャラソンがただOPとして置かれているだけじゃなくて、ちゃんと作品のひとつの大事な要素になっているんですよ。自分の中では、作品と音楽が一体化していて、その曲を聴くとその作品やハマっていた自分の思い出とリンクするというところも魅力だと思いますね。

――それに、今の声優さんってよく考えると昔の映画スターとやってること同じなんですよね。主演張って、その作品の主題歌を歌って……。

万能ですよね。しかも声優さんって、プロジェクトの掛け持ちもされますよね? 相羽あいなさんなんて『けものフレンズ』やってRoseliaやって、スタァライト九九組やって……尊敬します。それこそ「やってること、三代目(J SOUL BROTHERS)の岩田剛典さんとかと同じじゃん!」って思いますよ。「昨日踊っていたと思ったら、月9でお芝居しているし」というのと同じですものね。そういった方々と音楽番組を作れるよう、この5~6年をかけて段階を踏みながら、趣味から仕事のほうへと移行させていきました。

■数年かけた地ならしは、アーティストに報いるため

――段階を踏んで。

はい。何の準備もせずにいきなりバン!と出すだけだと、ただアニメが好きな奴の公私混同に見えてしまうしアーティストのためにもならない。そうはなりたくなかったので、最初は水樹奈々さんみたいな、すでに紅白にも出てドームをやっているような方に『FNS歌謡祭』で「持ち歌も歌えないような状況で申し訳ないんですが、出てもらえませんか?」みたいにお声がけをするところから始めていったんです。

――声優やアニソンに興味のない人でも、違和感を受けないような環境作りをされていた。

たしか最初、水樹さんにはさだまさしさんと「秋桜」を歌っていただいたと思うんですが、さだまさしさんのファンの方々に「お相手の女性、歌が上手ね~」と思ってもらうことが大事だと思いました。出ていただいたアーティストの方に「地上波に出てこれだけインパクトを与えた」みたいにちゃんとメリットを感じていただける、ということを一番心がけていました。そんなスタートから数年を経て、去年は水樹さんの他に、宮野真守さんや上坂すみれさんにも出ていただいて…。そんな中で、自分の中では「そろそろ全面に出していいだろう」というタイミングが来たように感じたんです。

――どのような点から、それを感じたのでしょう?

ひとつは、アーティストとの信頼関係。アニソンアーティストの方や声優さんって、普段そんなにテレビを主戦場とされていないのこともあって“都合よくテレビに使われる”ということに敏感だと思うんですけれど、『MUSIC FAIR』や『FNS歌謡祭』など実際の番組制作を通じて信頼関係を築けてきたというところですね。それに加えて、テレビマンとしてもそういった番組で結果も出してきたことで「今の私なら、ただ趣味に走ったわけではなくてちゃんと会社にもメリットを与えられますよ」という話もできるようになった、というのもあります。