「自分たちは年金がもらえない」「もらえても少額となり、それだけでは生活できない」と思われている若い方は多いのではないでしょうか。センセーショナルな言葉で不安をあおる風潮もありますが、不安に感じるのであれば、その制度を正確に把握してみましょう。今はネットで何でも調べられる時代ですが、不安を口にしながらも、制度自体を理解していないケースが少なくないのです。

その上で、今からできるだけの対策を考えておくことが、安心につながる最良の方法です。将来を確実に把握することはだれしも難しいことだからこそ、少なくとも現在の制度を正確に把握することが何よりも大切なのです。

  • 年金が増える? 「国民年金基金」や繰り下げ支給とは

    年金が増える? 「国民年金基金」や「繰り下げ支給」とは

年金の基本の"き"

年金の基本を簡単にまとめてみましょう。前提として、みなさんそれぞれに加入している年金が異なります。加入している制度の法律を直接詳しく確認ください。

年金は、30歳の方であれば、実に35年も先の将来に受け取る権利です。人生100年時代を考えれば、その先35年間も受け取り続けられる大切な権利です。センセーショナルな言葉に惑わされることなく、正確に制度を把握することが自分の権利を守る最善の方法なのです。

20歳以上の日本人は、必ず何かしらの年金に加入しなければなりません。加入者は国民年金の第1号~第3号被保険者のいずれかに区分されます。年金のベースとなるのは「国民年金」です。

年金は老齢基礎年金として、原則65歳から受け取ります。しかしその年金額は、令和元年の場合満額(480ヶ月の保険料を支払った場合)780,100円でしかありません。田舎での自給自足に近い生活以外は、老齢年金だけで老後の生活は維持できないでしょう。

サラリーマンは、この老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取れます。さらに厚生年金基金等の3階建て部分に加入している方は、さらに年金額が増えます。

そして、老齢基礎年金しか受け取れない自営業等の第1号被保険者のために用意されたのが、老齢基礎年金を補完する「国民年金基金」です。

「国民年金基金」とは

前述通り、厚生年金加入者との年金格差を解消し、年金だけでも生活できる年金額を確保するために、国民年金とセットで第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うのが「国民年金基金」の制度です。

国民年金基金には都道府県ごとに設けられた「地域型」と士業などに従事している方が加入する「職能型」があり、いずれかを選択します。

加入資格は20歳~60歳未満の国民年金第1号被保険者および60歳~65歳未満の国民年金任意加入者、海外居住者などです。第1号被保険者であっても加入できない例としては、農業年金の被保険者、国民年金の保険料納付を免除(一部免除、学生納付特例、納付猶予を含む)されている方(障害基礎年金の受給者等を除く)などです。あくまで2階部分の年金なので、国民年金の保険料を支払っていない場合は加入できません。

国民年金には下表のように最初に加入する1口目と、それに付加して組み合わせる2口目以降があり、それぞれいくつかのタイプに分かれています。

掛金は、年齢・性別によって細かく設定されています。月額掛金は最大6万8,000円まで掛けられます。終身タイプに関しては、女性の方が男性と比較して平均寿命が長いので、掛金も男性よりも高く設定されています。

<例>30歳男性の場合
1口目B型、2口目以降B型9口、Ⅰ型を1口申し込むと、掛け金は毎月67,485円となります。それに対する年金額は、当初の15年は国民年金基金として、毎月あたり12万円受け取れます。老齢基礎年金は別途受け取れますので、合計すると満額で約18万5,000円となります。夫婦二人が同条件であれば、夫婦でその倍額受け取れることになります。一人当たりの年金額は、大卒の初任給に満たない金額ですが、持ち家であれば、十分に生活していける金額でしよう。

国民年金を上乗せする制度は他にもある?

第1号被保険者・任意加入被保険者が定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に「付加年金」が上乗せされる制度があります。

しかし、国民年金基金に加入中の方は、付加保険料を納付できません。また付加年金は、老齢基礎年金と合わせて受給できる終身年金ですが、定額のため、物価スライド(増額・減額)はありません。

付加年金の年金額は、200円×付加保険料納付月数です。480ヶ月の満額保険料を支払うと、年間200円×480=96,000円、年金額が増えます。

国民年金基金の保険料は負担が大きいものがあります。ある程度厚生年金も受給できるので、あと少し年金額を増やしたいというときは、2年で元が取れる利回りの良い制度です。10年間加入で月々2,000円の年金額ですが、老後のお小遣いとしては貴重な額です。

年金を増やせる繰り下げ制度

老齢基礎年金支給は65歳からですが、60歳からもらう(繰り上げ支給)こともできます。当然毎月の年金額は減ります。反対に66歳以降に先延ばし(繰り下げ支給)することもできます。その場合、最大42%も月々の年金額を増やすことができます。70歳まで働く方も少なくないこの時代、検討する方はより増えるでしょう。

一方で、70歳からの支給に引き伸ばしても71歳で死亡すれば、受け取った総年金額はわずかで、60歳からもらっておけばよかったと考えるかもしれません。このようにどちらが得かという議論になりがちですが、人間の寿命は推し量れません。

日本人の多くは生命保険を掛けていると思います。子供が独立するまでは死亡や高度障害時のみに支払われる定期保険に加入している方もいるでしょう。保険料は安く、原則掛け捨てです。何もなければ掛けた保険料は無駄となります。それでも万一の場合に備えて、多くの方が保険に入っています。年金も同様で、万一の場合に安心して暮らすためにはどうすればよいかを考えて判断すべきです。

そのほかにも、冒頭の図に記載しているような、確定拠出年金(個人型)iDeCoにも加入できますが、月々の掛け金は国民年金基金の掛金と合わせた合計額を、6万8,000円以下としなければなりません。

最後に、以前のレポートの1文を転記しておきます。「国民年金の領収書を捨てるということは、生命保険や損害保険の契約証書を捨てると同じことです。口座引き落としやカード決済の場合は、それに代わる通帳等を保管するか、毎年贈られてくる社会保険料控除証明書のコピーなどを保管ください。紛失した場合は社会保険事務所に問い合わせれば再発行も可能ですし、過去の履歴もアウトプットできます」

年金紛失が問題になって久しいですが、自分が支払った根拠を残しておくことは簡単にできます。何十年もの先の大切な権利を役人に任せること自体が間違っています。自分で簡単に守れる権利ですので、保険料を支払った記録は厳重に保管ください。「年金が見当たりません」と言われたら、領収書の束を突き付けて、大いに役所仕事を搾り上げたらよいだけです。実際の私の経験談です。

筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。