結婚を前にした男女は、うれしさ半分、不安半分……なんとなく落ち着かない日々かもしれません。また、結婚までにしなければならないことは山積みでしょう。落ち着かない中、さまざまな雑事に追われている状態であると思います。「結婚は勢い」とよく言われます。立ち止まって考えていたら、いろいろな思いが錯綜し、先に進めないかもしれません。しかし、それはそれ、長い人生をつつがなく、有意義に過ごすためにも、二人で決めておくべきことはいろいろあります。

  • 結婚前、絶対に二人で話し合っておきたい"お金のハナシ"

    結婚前に二人で話し合うべき"お金のハナシ"とは?

結婚前に、ぜひ話し合ってほしいこと

話し合うといっても、結婚前の男女が改めて面と向かって、事務的に一つひとつ確認していくのは現実的に考えて、なかなか難しいと思います。

そこで話し合う前に、その題材として「ライフプランニングシート(生涯収支表)」をそれぞれ独自で作ってみたらどうでしょうか。相手の項目は想像で作ります。結婚後の収支を作るので、相手は未来の夫や妻となります。できれば具体的なお金の収支まで記入し、ライフプランニングシートを完成させるのがベストですが、大切なことは"お金に関してどのように考えているか"です。ファイナンシャルプランナーは、ライフプランニングシートを作る前に、ライフイベント表を作成してもらいます。何歳ごろに何をしたいかを記入するものです。まさに人生設計そのものです。

例えば、「妻は子どもができたら退職するか長期の育児休暇を取得したいと考えている」、「夫(妻)は、〇〇歳位で独立したいと思っている」……など、今まで話題に出たことを盛り込み、まだ話題になっていないことは想像で記入します。当然、子育て中に離職すれば収入はなくなりますし、独立して起業するにはそれなりの資金も必要で、軌道に乗るまでは、収入も多くはないかもしれません。

子どもは「少なくとも高校までは公立に行かせたい」、いや「小学校から私立の大学までエスカレートできるところに入れたい」……など夫婦で考えが違うかもしれません。それによって必要な教育資金も大きく異なるでしょう。細かいところでは、子どもの習い事に関する考え方もかなり違うかもしれません。

また、"いつ何をしたいか"という設定年齢でも、かなりお金に影響します。子どもを作る年齢、独立する時期、いくつまで働くかなどはお金に大きく影響します。

ライフイベント表を作ると見えてくるもの

そこで、下記のようなシートをつくり、夫婦別々に将来計画を記入して、出来上がったら二人で付け合わせます。かなり考え方が違うことに気づくはずです。夫婦は長い人生、いろいろ話し合って決めていかなればならないことが多く、思い通りにならないことも多いもの。最初の共同作業として、それぞれのライフイベント表を題材にして、夫婦のイベント表を作ってみませんか。

下記の表は妻となる方が書いた設定です。夫となる人の項目は想像で書きます。家族のイベント項目は共同で行うもので、子どもの項目は誕生歳を想定して、受けさせたい教育や課外活動などを記載していきます。問題点も空きスペースにメモしておきましょう。

  • ライフイベント表

上記の事例の問題点として、現時点ですでに十分なマイホーム取得資金や企業資金を用意できている場合は別として、夫が起業する際に十分な起業資金を確保できるかどうかが問題です。結婚費用やマイホーム取得に相当な額の出費が必要でしょう。妻が育児休暇中の収入減も考慮に入れなければなりません。その間の妻の住宅ローンの返済資金はどこから拠出するのでしょうか。

また、仮に予定通り夫が起業できたとしても、うまく軌道に乗るかどうかは未確定です。妻が正社員でいることが重要となりますが、子どもの病気など予期せぬトラブルによって必ずしも予定通りいくとは限りません。起業した仕事が軌道に乗り、妻が正社員で働いている限りは、子どもの教育費や老後の資金の心配は比較的少ないでしょう。

はるか先の定年後を想像することは難しいですが、夫の仕事が田舎でもできるような種類であれば、マイホーム売却も可能ですが、拠点が結婚後の住まいの地域である必要がある場合は、別の対処が必要となるでしょう。

このように、ライフイベント表を作成するだけで、いろいろなことがわかります。ライフプランニングシートは、このイベント表をもとに具体的な収入と支出を算出し、ライフイベントに対する経済的整合性をチェックするものなのです。

結婚後に揉めることが多いお金の話

夫婦の関係はケースバイケースなので、揉めるお金の話も多種多様でしょう。ここではFP的に考えて"ありがちなケース"をいくつか挙げてみました。下記の事例は必ずお金の問題が伴うはずです。

〇働き方

配偶者に内緒で突然退職してしまったなどのトラブルはありがちです。働き方については、結婚前に何とか相手を説得できるつもりで安易に考えていても、人生観の根底に関与する問題とあって平行線をたどってしまうことも多いです。

【チェックポイント】
・夫婦で定年まで働き続けるか
・定年後も働き続けたいか
・子どもができたらどうしたいか
・将来独立・転職する予定はあるか

〇家計と家事の貢献度

最近は夫婦で別々の財布にしているという家庭も多いです。当初こそ家事も平等に分担すると決めていても、なし崩しに妻が負担となるのは今も昔も定番のような気がします。同額の拠出でありながら、妻が家事を一手に引き受けるとすると、妻の寄与分はどうお金に換算するのでしょうか。

【チェックポイント】
・財布は別々か
・家事をどう分担するか、片方に偏った場合はどう埋め合わせをするのか
・育児休業中の家計と家事の分担はどうするか

〇子どもの教育

子どもの教育も、人それぞれの考え方があるので夫婦で揉めるケースの多い項目と言えます。

【チェックポイント】
・子どもは公立をメインとして教育を受けさせるのか、私立の一貫校を希望するのか
・大学院まで行かせたいのか、その際の学費は子どもが工面するのか、親が負担するのか
・海外のサマースクールや留学、塾、習い事をやらせるのか、勉学に重きをおかず自由にのびのびと育てたいのか
・奨学金や教育ローンの利用を考えているのか、学費は自分たち親がすべて負担するつもりなのか

〇住まいの取得の貢献度

人生でもっとも高額な買い物とも言える"住まい"の購入も、夫婦で意見が分かれることの多い項目です。

【チェックポイント】
・いつ取得し、費用の分担と名義はどうするか
・妻の住宅ローンは、育児休業中も妻が支払っていけるか
・老後の住まい活用はどのように考えているか

〇奨学金の返済

奨学金の返済は家計に重い負担としてのしかかります。どちらか一方のみが返済している場合はトラブルになりがちです。当初からわかっていても、家計が苦しければ不満も出てくるものです。

【チェックポイント】
・奨学金の返済は、本人の財布か家計費の中からか

〇定年後の暮らし

人生100年時代と謳われる今、老後の暮らしも結婚生活を考えるうえで避けては通れません。

【チェックポイント】
・故郷にUターンしたい、マイホームに最後まで住み続けたい、老人ホームに入りたいなど
・働けるだけ働き続けたいのか、早期退職して田舎暮らしが理想なのか

ライフイベント費用のサンプルにも記載したように、自分の夢とともに、今まで相手から聞いてきたこれからの人生への希望や夢を書き込むことも大切です。書いてみるだけで互いの夢を実現させるための課題も見えてくることでしょう。1回で完璧に書ける人は少ないものです。時間をかけて書き込み、その後に互いですり合わせて、問題点の解決策を見出していけば、結婚後のトラブルも少なくなるはずです。

ライフプランニングシートやライフイベント表は、問題を早い時点で見出し、早期に打開策を講じられるのが大きなメリットなのです。改善は早い方が効果的であるのは言うまでもありません。

筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。