ぐるなび総研は12月5日、今年の世相を反映した2019年「今年の一皿」を発表した。選ばれたのは「タピオカ」。授賞式に登壇したタピオカ愛好家の現役女子大学生 奈緒さん、華恋さんは「後世に受け継ぐ価値のあるものとして、タピオカが表彰されたことを嬉しく思います」と喜びの言葉を口にした。

  • 2019年「今年の一皿」に選ばれたのは「タピオカ」だった

選定までの流れ

「今年の一皿」は、優れた日本の食文化を人々の共通遺産として記録に残し、保護・継承する目的で2014年にスタートした。今回で6回目を迎える。

  • 選定までの流れ

選定ではまず、ぐるなびにアクセスしたユーザーの検索・行動履歴、ぐるなびのビッグデータから抽出したワードをもとに、ぐるなび会員(1,796万人、2019年10月1日時点)を対象としたアンケートを実施。その後、メディア関係者の審査で30まで絞り、そこからは「今年の一皿」実行委員会が選定していった。

  • 最終選定まで残ったのは、スパイスカレー、チーズグルメ、発酵食メニュー、タピオカの4品目だった

和食文化の保存・継承へ

ぐるなび総研の滝久雄氏は「2014年のジビエ料理、2015年のおにぎらず、2016年のパクチー料理、2017年の鶏むね肉料理、2018年の鯖(さば)は、いずれも飲食店のメニューに定着し、家庭の食卓にも上がるようになりました。食品、食材の生産地の活性化にも役立っています。今年の一皿の取り組みが、今後も日本の食文化の育成、農漁業の発展、地方創生の一助になれば幸いです」と挨拶。

  • ぐるなび総研 代表取締役社長 兼 ぐるなび 取締役会長・創業者の滝久雄氏(左)と、農林水産省 食料産業局長の塩川白良氏(右)

また、農林水産省の塩川白良氏は「和食文化は、2013年にユネスコに登録されました。ぐるなび総研さんによる今年の一皿は、日本の食文化を保存し継承していく素晴らしい取り組み。日本は、様々な諸外国から食文化を受け入れてきた。それにより食文化が変わってきたし、これからも変わっていかないといけない。それが我が国の農林水産業の発展、自給率の向上、地域の活性化につながっていくと信じています」とした。

2000年前から日本料理の中心だった

最終選定まで残った4品目について、主催者からあらためて選定理由が説明された。スパイスカレーとは、複数のスパイスを組み合わせた、一般的に小麦粉を使用しないカレーのこと。選定理由は「近年のスパイスブームの中で、2019年に特に注目された。カレー専門店だけでなく、カフェでもおしゃれな見た目のスパイスカレーを提供し始めたことにより、女性にも受け入れられた」としている。

  • 惜しくも賞を逃した、スパイスカレー

チーズグルメはチーズを使った料理、スイーツの総称。選定理由は「日本人のチーズ消費量が過去最高になり、輸入量も増加中。2019年2月にはEPA発効による関税の引き下げによりさらなる増加が見込まれている。国内のチーズ工房も10年で3倍以上に増えており、今後も飲食店のメニューとしてチーズグルメが広がることが予測される」とのこと。

  • 今後も新たなメニューが続々と開発されていきそうな、チーズグルメ

準大賞に選ばれたのは、発酵食メニューだった。これは味噌、醤油、麹、ヨーグルト、納豆などの発酵食材・食品を取り入れた料理の総称。選定理由は「納豆の市場規模が過去最高を記録、国内では発酵食材を使った飲食店やカフェが増加している。健康志向の高まりから、価値が再認識された」としている。

  • 準大賞に選ばれた、発酵食メニュー

準大賞に発酵食メニューが選ばれたことを受けて、菊の井 代表取締役で全日本・食学会の理事長を務める村田吉弘氏が記念品の有田焼を受け取った。村田氏は「いま世界中で発酵食品がブームになっている。でも我が国では、2000年も前から発酵食品を日本料理の中心に据えてきた。本日は、日本料理の代表として準大賞を頂戴した。これからも発酵食メニューを守り、育てていきたい」と話した。

  • 菊の井 代表取締役で全日本・食学会の理事長を務める村田吉弘氏(右)

世代を問わずに日本中を席巻

そして、今年の一皿に選ばれたのがタピオカ。選定理由は「地域や世代を問わずに日本中を席巻した。タピる、タピ活などの造語が生まれて社会現象になった。まず若年層に支持され、SNSで発信されると幅広い層に人気が広がった。専門店だけでなく、様々な飲食店で提供され、多様なドリンクとの組み合わせや甘さの調整などをカスタマイズできることで、消費者の楽しみも広がった」としている。

  • 今年の一皿に選ばれた、タピオカ

たぴりすと。として活動している現役女子大生の奈緒さん、華恋さんが、建築家の隈研吾さんから記念品の有田焼を受け取った。たぴりすと。の2人は数年前よりタピオカにはまり、年間で80万円を費やして700店舗(1,000杯以上)のタピオカを食してきたという強者。一日に20杯以上を飲んだこともあるという。

  • たぴりすと。として活動している現役女子大生の奈緒さん(中央)、華恋さんが、建築家の隈研吾さんから記念品の有田焼を受け取った

奈緒さんは「世界中でブームのタピオカを日々研究し、SNSで発信しています。第3次ブームと言われている、今年のタピオカブームはとても大きなものとなりました。これをきっかけに、タピオカが浸透し、食文化として継承されていくことを期待しています」、華恋さんは「メディアでは、ブームは一過性じゃないかと言われることもありました。ブームを超えて社会現象化したことを嬉しく思っています」とコメント。

ちなみに消費者のマナーの悪さにより空きカップが路上に捨てられたり、またグローバルではプラスチックのストローが環境に与える影響などが問題視されたりしているが、2人は協会を立ち上げて、そうした環境問題にも取り組んでいくとしている。