マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、毎年話題となるクリスマス商戦がアメリカの消費にどう影響するのかについて取り上げます。

  • クリスマス商戦、米国の消費は盛り上がるのか

世界経済は、夏場に懸念されたほど悪化していないようです。とりわけ、米国経済が比較的堅調を維持していることが明るい材料です。

米国の製造業活動は縮小

もっとも、トランプ大統領が火をつけた貿易摩擦の影響で、さすがの米国でも製造業は低調です。製造業の景況感の指標であるISM指数は、製造業活動の拡大と縮小の境目とされる50を10月まで3カ月連続で下回りました(11月分は12月2日に発表)。

個人消費は米景気をけん引できるか

米国の7~9月期の経済成長率(実質GDPの前期比年率)は+2.1%と、前期(同+2.0%)とほぼ同じでした。その経済成長を支えたのはもっぱら個人消費だったようです(成長率+2.1%のうち2.0%分は個人消費の寄与)。一方で、企業の設備投資は、貿易摩擦の先行き不透明感を反映してか、2期連続でマイナスとなりました。

さて、今後も個人消費は景気をけん引できるでしょうか。労働市場では、失業率が約50年ぶりの低水準にあり、雇用の伸びも悪くありません。賃金はやや伸び悩んでいますが、総賃金(労働者全員が受け取る賃金の総額)の伸びは物価上昇率を大きく上回っており、今後も消費をサポートしそうです。米中貿易摩擦が解消に向かい、企業活動が活発化するとのシナリオが実現するまで、個人消費が頑張るのでしょうか。

労働市場の堅調持続がカギ!?

ただし、製造業を中心に企業の景況感が悪化しているなかで、労働市場の堅調が続くかは疑問の余地があります。激化しないまでも、貿易摩擦の悪影響が続く間に、労働市場が変調をきたす可能性も否定できません。また、現在好調な株価が大幅に下落するようなことがあれば、消費マインドは一気に冷え込むかもしれません。

クリスマス商戦がスタート

個人消費の行方を占ううえで重要なクリスマス商戦がスタートします。11月28日の感謝祭(サンクスギビングデー)の翌日は、ブラック・フライデーです。大々的なバーゲンセールが行われ、小売店はこの日を境に黒字に転じると言われています。ブラック・フライデーから土日を挟んで、オンライン・ショッピングが盛り上がるサイバー・マンデーまでの4日間(あるいは感謝祭当日を含めた5日間)の小売売上の状況に注目です。

投資家は断片情報に一喜一憂!?

米商務省が発表する小売売上高は翌月の中旬に発表されます。したがって、クリスマス商戦の全体像が把握できるのは来年1月中旬になってからです。

ただし、上述した感謝祭後の4日間(あるいは5日間)の売上に関しては、比較的早い段階で小売業界、オンラインサービス会社、クレジットカード会社などから断片的な情報を得ることができます。投資家はそれらに一喜一憂するかもしれません。

全米小売連盟はクリスマス商戦の好調を予想

なお、全米小売連盟(NRF)は、自動車・ガソリン・レストランを除く11~12月の小売売上高が前年同期比で3.8~4.2%増加すると予想しています。これは昨年(2.1%増)、過去10年の平均(3.4%増)を上回る伸びです。果たして、NRFの予測は的中するでしょうか。