消費税が10%へ引き上げられてから、2ヶ月弱が過ぎました。今回の消費増税では、8%の軽減税率制度が導入されましたが、「どのような時8%になるのか、実は正確にはわからない」という人も少なくないようです。そこで、消費増税が8%になるケース、10%になるケースをおさらいしてみましょう。また、消費増税による家計負担はどの程度あるのかについてもまとめてみました。
消費税8%の軽減税率が適用されるのはどんな時?
軽減税率とは、消費税率10%への引き上げと同時に、所得の低い人へ配慮するため、飲食料品などの税率を8%とし、家計への影響を和らげる制度です。軽減税率が適用されるのは、以下の2つの品目となっています。
・飲食料品(酒、外食を除く)
・新聞(定期購読契約された週2回以上発行されるもの)
軽減税率の対象となるのはたった2品目ですので、一見すると、わかりやすいように感じられます。しかし、実際には、飲食料品の範囲や外食となる基準の線引きが難しく、その複雑さから混乱が起きているのです。
まず、軽減税率の適用対象となる飲食料品にあたるかどうかは、原則として、事業者が「飲食料品」を販売する時点において、人の飲用または食用に供されるものとして販売するものであるかどうかによって判断します。たとえば、以下のようなケースはまぎらわしいですが、飲食料品となるのでしょうか。
●おもちゃ付きお菓子などの「一体資産」
一体資産とは、おもちゃ付きのお菓子や紅茶とティーカップのセット商品のように、食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっている資産のことで、その一体資産の価格のみが提示されているものを言います。一体資産は原則的には軽減税率の対象外となりますが、税別価格が1万円以下で、食品の価額の占める割合が3分の2以上の場合、全体の税率は軽減税率の8%となります。
●人以外の飲食料品であるペットフード>
飲食料品は、基本的に軽減税率の8%が適用されますが、ペットフードは人の飲用または食用に供されるものから除外されるため、標準税率の10%となります。
さて、同じく軽減税率の適用外となる外食については、さらに複雑さが増します。外食の定義としては、
(1)飲食設備(テーブル、椅子、カウンター等の飲食に用いられる設備)のある場所において(2)顧客に飲食させるサービス
となっています。たとえば、店内飲食やフードコート、イートインスペースなどで飲食する場合は、標準税率の10%が適用されます。ただし、店内で食事をせずテイクアウトする場合は、軽減税率の8%となります。
外食かテイクアウトかは場合によっては判断が難しいうえ、イートインかテイクアウトかは会計の際に自己申告となります。そのため、テイクアウトとして購入した飲食料品を実際には店内で食べてしまう「イートイン脱税」なる事態も起きています。
そもそもイートインには標準税率が適用されることを知らない人も多く、店員でさえ線引きが曖昧になっていることも少なくないようです。
見分けが付きにくいこんなものは8%or10%?
さらに、あらかじめ知らないと、外食かテイクアウトの見分けが付きにくいものがまだまだあります。たとえば、外食同様に、ケータリングや出張料理等(顧客が指定した場所において行う役務を伴う飲食料品の提供)は標準税率の10%が適用されます。
一方で、食事の宅配や有料老人ホームでの飲食料品の提供、学校給食などは軽減税率の8%となります。移動販売車で食べ物や飲み物を買い近くの公園で飲食する、遊園地などのレジャー施設の売店で食事を購入し、近くのベンチで食べるといった場合も、8%です(遊園地内のレストランで飲食する場合は10%)。
他にも、いくつか具体例を挙げてみました。
・社員食堂は軽減税率が適用されず10%
・セルフサービスの飲食店での飲食も10%
・屋台のおでんやラーメン屋も10%
(外食の定義にあてはまる場合)
・ホテルのルームサービスは10%、ホテルの冷蔵庫内の飲食料品は8%
・店内での食べ残しを持ち帰る場合は10%、あらかじめ持ち帰り用として注文した場合は8%
・フルーツ狩りの入園料は10%、狩ったフルーツの購入は8%
このように、食事の形態によって適用される税率が異なりますが、外食なのかテイクアウトなのかはケースバイケースで判断せざるを得ないこともあります。また、同じ価格の同じ飲食料品でも、その場で食べるか持ち帰って食べるかによって消費税率が変わる点は、慣れるまでは違和感を覚えるかもしれません。
いずれにしても、生活に必須の飲食料品は8%、外食など贅沢な食事と捉えられるものは10%と大まかに頭に入れておきましょう。
消費増税による家計への影響は
消費税が2%増税したことで心配なのは、家計への影響です。世帯タイプや年収別で見てみると、負担増はどの程度なのでしょうか。
まず、今回の消費増税に伴い、消費の落ち込みを防ぐため、様々な負担軽減策が講じられました。一つ目は、これまで解説してきた飲食料品等の”軽減税率”。二つ目は、中小規模の店舗でキャッシュレス決済を行った場合の”ポイント還元”です。その他にも、以下のような対策がとられました。
・子育て世帯や低所得者世帯を対象とした、最大5,000円がお得になるプレミアム付き商品券の発行
・3歳から5歳までの子どもの幼稚園、認可保育所などにかかる保育料を原則無料とする幼児教育無償化(0歳から2歳までの子どもについては、住民税非課税世帯で認可施設の保育料が無料)
・低所得世帯の高等教育無償化(大学、短大、高専、専門学校の授業料と入学金が対象)
・年金が少ない高齢者にひと月最大5000円の年金生活者支援給付金を支給
以上のような負担軽減策により、特に幼児教育無償化の対象となる子育て世代は、増税分を相殺でき、軽減策の恩恵を受けることになります。一方、高齢者や単身者にはメリットが多くはありません。
日本総研によると、一連の施策により、年収250万円の2人以上世帯では、平均して年約13万5,000円の負担軽減があるとされています。その一方で、年収約200万円の年金受給世帯では、給付金を受け取っても、負担軽減額は年3万円程度にとどまる見込みです。
負担増となるのは、主に単身世帯や子どものいない世帯、収入の多い世帯です。たとえば、単身世帯で年収400万円の場合、年3万3,000円の負担増となります。また、年収1,000万円の2人以上世帯(勤労世帯)では、年間2万4,000円負担が増えます。
子育て世帯に手厚い軽減策がある一方、やはり増税分の負担が家計にのしかかる世帯も少なくありません。また、幼児教育無償化が実施されたことにより、逆に保育料が値上がる保育所があるなど、軽減策に関する課題も浮き彫りになっています。
増税の負担を軽くする工夫を
まだ始まったばかりの消費増税ですが、8%と10%の区別が浸透するまでには、もう少し時間がかかりそうですが、キャッシュレス決済によるポイント還元などはすでに始まっています。決済方法を変えるだけでお得になりますので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。また、市区町村が発行しているプレミアム付き商品券の対象になる方は、こちらも見逃さず活用してみてください。