日に日に寒くなる秋~冬は、家で過ごす時間が増えるもの。すると、気になるのが家庭内の事故です。実は日本では毎年、多くの子どもが「不慮の事故」で命を失っているのです。

またこうした不慮の事故の多くは家庭やその周辺で発生しています。今回は子どもの不慮の事故を防止するために、住環境で子どもを守るコツをご紹介します。

0~6歳の事故は、半数以上が家庭や駐車場で起きている

寝てばかりの新生児、首・腰がすわってはいはいをはじめ、つかまり立ちをして、よちよち歩きをして……とめまぐるしく成長していく赤ちゃん。その間、お母さん・お父さんは日々、精いっぱいお世話をしていることでしょう。ただ、このかわいい赤ちゃん、子どもたちの命が、毎年、「不慮の事故」で失われています。

  • 子ども「不慮の事故」による年齢別の死因の内訳(2016年)
    消費者庁発表資料もとに筆者作成。「人口動態統計」(厚生労働省/2016年)による。「交通事故」、「自然の力への曝露」を除いて集計。「溺水」は「不慮の溺死及び溺水」、「窒息」は「その他の不慮の窒息」、「火災」は「煙、火及び火炎への曝露」の略。「その他」には、「生物によらない機械的な力への曝露」、「生物による機械的な力」、「電流,放射線並びに極端な気温及び気圧への曝露」、「熱及び高温物質との接触」、「有毒動植物との接触」、「有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露」

痛ましいのは、その発生場所です。調査によると住まいや道路・駐車場など、半数近くが住まいとその近くで起きているのがわかります。家族の団らんの場所である家は、本来子どもが安全に過ごせる場所のはず。安全だと思っている家やその周辺に、思わぬ危険が潜んでいるといえるのです。

  • 消費者庁発表資料「子供の事故防止関連「人口動態調査」 調査票分析 ~事故の発生傾向について~」より筆者作成

【場所別】起きやすい事故と対策一覧

上図でもわかるように、子どもは成長とともに起きやすい事故が異なります。だからこそ、子どもの年齢・発達にあわせて、親が住環境をアップデートしていくことが大切になるのです。また、昨日までできなかったこと、手が届かなかった場所でも、成長によってできるようになったり、手が届くようになることも。子どもの興味や行動をよく観察しておくことが大切になります。

今回は、安全な住環境のための基本的な原則を場所別に解説していきます。

その1 キッチン:誤飲・やけど・刃物・溺水・窒息

はさみや包丁、食べ物、コンロ、電子レンジ、調理器具、ゴミ(ペットボトルのフタ)など、子どもたちにとって魅力的で危険なアイテムが揃うキッチン。基本はベビーゲートを設けて入れないようにするのが安全です。ベビーゲートが設置できない場合は、危険なアイテムを手の届かない、見えない場所に置く配慮を。包丁は煩わしくてもチャイルド・ロックの場所にしまうことを徹底しましょう。

対策

・ベビーゲートを設置
・ナッツ類などは見えない場所にしまう
・後付のチャイルド・ロックを活用する
・炊飯器・電気ケトルは手の届かない高さに置く

  • キッチンは子どもの興味を引くものが揃っている。1m以上の手の届かないところに置く、隠すなどの工夫をするといい

その2 リビング・ダイニング:誤飲・転倒・転落・窒息

家族でもっとも長く過ごすリビング・ダイニングもさまざまな危険が。キラキラと光るおもちゃ、電池、たばこ、薬などの誤飲事故に気をつけたいところ。

基本は子どもの手の届かない1m以上の高さのあるもの、また扉のなか(できたら施錠する)に隠しましょう。またカーテンやブラインドのひもでの窒息事故、転倒時に頭をぶつけるといった事故も起きています。市販の緩衝材を活用するといいでしょう。

対策

・タバコや薬・電池・ハサミは手の届かない場所へしまう
・扉・家具の指はさみにも注意
・ブラインド・カーテンのひもは手の届かないように
・家具の四隅は緩衝材をつけておく
・テーブルクロス・テーブルマットは使わない
・床に置く加湿器・暖房器具は安全策で囲う

  • ブラインドのひも、カーテンまわりは子どもが遊んでしまい、ひもが巻き付いて窒息という事故が発生。紐は短くするなど、手の届かない工夫を

その3 洗面所・風呂・トイレ:誤飲・溺水・窒息

カラフルな洗濯用洗剤の誤飲、洗濯機のなかに入って遊んで窒息、浴槽で溺れるなどの事故が起きています。きょうだいがいる場合は、上の子どもが遊ぶお風呂の小さいおもちゃにも注意。子どもは静かに溺れるので、「入浴中は目を離さない」を徹底しましょう。

対策

・お風呂の残し湯はしない
・小さなおもちゃは隠す、しまう
・ボール状洗剤はふた付きの箱にしまう
・化粧品・家庭用洗剤は手の届かない場所に置く

その4 寝室:転倒・窒息

寝室では1歳未満の赤ちゃんの事故、窒息や転倒が発生しています。盲点になるのが、寝具やぬいぐるみ。寝返りをうったあとに窒息する事故が起きています。ベッドからの転倒・転落も多発しています。

対策

・赤ちゃんの周囲には何も置かない
・抱いたまま転倒しないよう、足元も片づける
・敷き布団は硬めを使用する
・湯たんぽや電気毛布/マットは長時間使わない

その5 玄関・窓まわり・階段:転倒・転落

活発に動きはじめるようになると、怖いのが高さのある窓や玄関・階段からの転倒・転落です。窓まわりには足場になるようなものを置かないようにしましょう。

対策

・階段はベビーゲートを設置する
・子どもだけでベランダに出さない
・ベランダに足場になるものを置かない
・窓の近くに家具を置かない
・網戸は破れて転落するので寄りかからない

父と母、祖父母にも家庭内事故防止への理解を

ちなみに、父親と母親で「子どもの安全」についての情報や意識に差があることもわかっています。父親は母親と比べると、家庭内の子どもの事故に関するクイズの正答率も低いという結果もあるほど(※1 消費者庁)。

また、祖父母世代は情報が古いことも多く、「このくらいなら大丈夫だと思った」「子どもが危険から学習する」と反論されて協力してもらえないという話を聞くこともあります。

赤ちゃんや幼い子どもは自身で危険を予測したり、対処法を身につけることはできません。成長にともなって安全を判断していけるよう教育することは大切ですが、それと安全な住まいや周辺環境を整えることは別の話です。親の知識が子どもを守るという心構えで、安心して子育てできる環境を整えたいものです。

  • 消費者庁発表資料より筆者作成。子どもの事故防止を進めるのに役立つと思うものの1位は保護者への注意喚起。特に父親と母親が同じ意識を持てるかがカギになりそう

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得