第32回東京国際映画祭の「アリーナ特別上映会2019」として、10月30日に『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』(2017年/監督:坂本浩一)、そして『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』(2018年/監督:坂本浩一)の2作品が六本木ヒルズアリーナにて上映された。上映終了後に行われたトークショーには、2作品に携わったスタッフ諸氏が結集。『スペース・スクワッド』シリーズの成り立ちから、今後の展開についてなど、ホットな話題が続出して集まったファンを興奮させた。

  • 左から、荒川稔久氏、塚田英明氏、中野剛氏、望月卓氏、山田真行氏

『スペース・スクワッド』とは、映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(2012年)に登場した"二代目宇宙刑事ギャバン"こと十文字撃を初代キャプテンとし、東映が誇る2大特撮シリーズ(メタルヒーロー、スーパー戦隊)のキャラクターが豪華コラボを果たす東映・東映ビデオの人気シリーズである。

『ギャバン THE MOVIE』でかつての『宇宙刑事ギャバン』(1982年)『宇宙刑事シャリバン』(1983年)『宇宙刑事シャイダー』(1984年)が次世代の若者に"代替わり"したのを受けて、2014年にVシネマ『宇宙刑事シャリバンNEXT GENERATION』『宇宙刑事シャイダーNEXT GENERATION』が製作され、二代目シャリバン/日向快と二代目シャイダー/烏丸舟をそれぞれメインに置いた物語が生み出された。

この流れとは別に、かつてテレビシリーズで活躍したスーパー戦隊の"その後"の戦いを描くVシネマ企画がシリーズ化され、『特捜戦隊デカレンジャー』(2004年)のオリジナルメンバーが10年ぶりに再結集を果たした『特捜戦隊デカレンジャー10YEARS AFTER』が2015年に誕生している。

この『宇宙刑事NEXT GENERATION』と『デカレンジャー』がさらなるコラボを行い、そしてギャバンとデカレンジャーだけでなく、『巨獣特捜ジャスピオン』(1985年)の悪役マッドギャランや『世界忍者戦ジライヤ』(1988年)の悪役・紅牙などもリニューアルして登場を果たすなど、他の「メタルヒーロー」および「スーパー戦隊」の世界観ともつながりを持ち、幾多のヒーローとの共演を可能にする『スペース・スクワッド』という企画が生み出されることになった。

現在、『スペース・スクワッド』シリーズは『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』の2作品が製作されているが、『キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』のラスト部分では、次なる悪の陰謀や、ギャバン隊長がスカウトするであろう"次なるヒーロー"の登場がほのめかされている。今回のトークショーでは、そんな「スペース・スクワッドシリーズの今後について」がテーマとなった。

  • 東映プロデューサー・塚田英明氏。『特捜戦隊デカレンジャー』テレビシリーズ、『宇宙刑事シャリバンNEXT GENERATION』『宇宙刑事シャイダーNEXT GENERATION』『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』などを企画・制作した

  • 東映ビデオプロデューサー・中野剛氏。塚田プロデューサーとのタッグで『スペース・スクワッド』につながる数々の作品の企画・制作に携わり、多くのヒット作品を生みだした

  • 東映プロデューサー・望月卓氏。『宇宙戦隊キュウレンジャー』でチーフプロデューサーを務め、第18話「緊急出動!スペースヒーロー」でキュウレンジャーとギャバン、デカレンジャーを共演させた

  • 脚本家・荒川稔久氏。宇宙刑事ギャバン/一条寺烈が30年ぶりに"復活"を果たした『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE』(2012年)や、『宇宙刑事シャリバンNEXT GENERATION』『宇宙刑事シャイダーNEXT GENERATION』のシナリオを手がけ、80年代「宇宙刑事シリーズ」の"旨味"を残しつつも現代のドラマ感覚をも取り入れて、見事に新たなる宇宙刑事ワールドを築き上げた文芸面の功労者。二代目宇宙刑事ギャバン/十文字撃のキャラクターをさらに深く掘り下げた『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』も手がけている

  • 今回の司会進行は、『スペース・スクワッド』シリーズにも深く関わっている東映ビデオプロデューサー・山田真行氏が務めた

まずは、年表を見ながら登壇者各氏と『スペース・スクワッド』シリーズとの関わりや、作品の成り立ちについてのトークが展開された。塚田氏は「『ギャバン THE MOVIE』のときは、先輩の日笠(淳)プロデューサーが担当されていて、僕は『仮面ライダーフォーゼ』を作っていたのでお手伝いが出来なかったんです。でも、ずっと"いいなあ~"と思っていまして、別の企画で東映ビデオに行ったとき、中野さんから『宇宙刑事をやりませんか』と話をいただいて、シャリバン、シャイダーを作ることになったんです」とNEXT GENERATIONの成り立ちを語った。中野氏も「うち(東映ビデオ)の加藤(和夫)と僕と塚田さんとで話していて、塚田さんから"宇宙刑事"への思いを聞いていたので、別の企画だったのが"じゃあ宇宙刑事をやりましょう"に変わっていきました」と、新生「宇宙刑事」の後続シリーズ企画が実現する経緯を説明した。

ギャバンとデカレンジャーがコラボするという企画について塚田氏は「同じ"宇宙"で"警察"だからいいじゃないか、と思って企画が成立した。作品はギャバンVSデカレンジャーなんですが、なにか未来につながったほうがいいんじゃないかということで、ラストでギャバンを隊長とする特別チーム"スペース・スクワッド"誕生へ、というくだりを入れてみたんです」と、1作品で終わるのではなく、シリーズとして作品世界が発展していけば面白いという考えがあったことを明かした。

望月氏は「ちょうと僕が『キュウレンジャー』をやっているころ『スペース・スクワッド』が劇場公開されるということで、テレビのほうにもギャバンとデカレンジャーに出てもらったんです。その後、スーパー戦隊シリーズ恒例の"VSシリーズ"をやるにあたって、いつもだったら『キュウレンジャーVSジュウオウジャー』となるところ、諸事情で別な企画にしなければならず、だったら一度共演した経験のある『スペース・スクワッド』とコラボ作品にしちゃおう、という話が持ち上がりました」と、宇宙戦隊と宇宙刑事のコラボという魅力的な作品の成立過程を話した。

荒川氏は『スペース・スクワッド』でギャバンとデカレンジャーを共演させるにあたり、ギャバンの属する「銀河連邦警察」とデカレンジャーの属する「宇宙警察」の位置づけをどのようにしようか、取り組みの前に悩んだと話しつつ「でも『宇宙刑事シャリバン』のエピソードの中に"宇宙警察に……"というセリフがあったのを発見して"これでつながったじゃないか!"と自分的に納得した」と、広大な宇宙を守る2つの警察組織をどういう風に位置付ければよいかという世界観の部分から入ったことを明かした。

これを受けて塚田氏は「まず宇宙全体の治安を守る"宇宙警察"という大きな警察機構が存在し、その中でマクーとかマドーとかの大規模な組織犯罪を扱っているのが"銀河連邦警察"なんだと決め、荒川さんと設定を作っていきました」と、異なる2つの世界観を矛盾なくまとめつつ、宇宙ヒーローが自由にコラボすることのできる新しいSF設定を構築していったことを説明した。

塚田氏と中野氏は『スペース・スクワッド』のドラマについて「『仮面ライダー』『スーパー戦隊』と違って、ターゲットを上に置いています」(塚田氏)「Vシネクスト(映画公開とソフト販売)という体裁なので、テレビではちょっとキツいかなという表現が許されている部分があります。もちろん子どもにも楽しめる作りですが、大人層にもアピールできるようにしています」(中野氏)と、地上波ではないリリース形態を活かし、よりアダルト層にアピールできるような作品作りに努めていると話した。

そして、気になる「今後のスペース・スクワッド」についての話題になると、塚田氏が「『キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』の終わりのところで、『特警ウインスペクター』(1990年)のファイヤーが出てくるでしょう。炎に隠れてよく見えないかもしれませんが(笑)。ウインスペクターに始まる『レスキュー』ヒーローをやりたいな、とはいつも話しているんですけどね……」と話すと、中野氏も「会うたびに、次のスペース・スクワッドは何をやりましょうか、みたいな話はしているんです。そうしたら、いつの間にか別の企画が動きだしたりしてね(笑)」と、東映・東映ビデオで動かしている企画が他にもたくさんあって、なかなか『スペース・スクワッド』の続編にまで行きつかないことがあるとこぼした。しかし、望月氏や荒川氏からも「プロット(企画用あらすじ)はいくつか出している」という頼もしい言葉も飛び出し、これからの展開に期待が持てそうな匂いを残している。

ちなみに、荒川氏が『スペース・スクワッド』の今後でやってみたいのは「『星雲仮面マシンマン』(1984年)の35年後の姿を描きたい」というアイデアだという。荒川氏は「今の段階では"妄想"ですが」と断りながら「スペース・スクワッドの敵・幻魔空界12使徒は、現段階ではまだ数えるほどしか出てきていませんが、妄想としてはすべての設定を作っている」と、今後のシリーズ展開の鍵を握る悪の"構想"がある程度固まっていることを語った。

最後の挨拶で荒川氏は「大学生時代に『宇宙刑事』を観てファンになった僕としては、この企画に関わることができてたいへん嬉しく、光栄です。またこの流れの上で、いろいろな物語を書くことができれば幸せ」と、荒川氏が敬愛する脚本家・上原正三氏が生み出した『宇宙刑事』の"物語"を継承し、発展させていく任を担った幸せを噛みしめつつ、今後もさまざまに魅力的な物語を作っていこうという意欲を示した。

中野氏は「最初、塚田さんと喫茶店で"宇宙刑事やりたいですよね!"と盛り上がったことから始まった企画(NEXT GENERATION)ですが、まさかこんなシリーズに発展していき、東京国際映画祭で上映されるまでになるなんて、なんてすばらしいことなんだと思っています。何かを作っていくことで、こういった出会い・つながりが生まれるんですね。引き続き応援をよろしくお願いします」とファンに『スペース・スクワッド』の応援を呼びかけた。

望月氏は「東映の特撮ヒーローは世界的にも人気が高いので、東京国際映画祭で『スペース・スクワッド』が上映されたことは素晴らしいこと。またこういった場で世界の映画ファンに東映ヒーローの魅力を伝えられるような作品を作り、上映していただければ」と、今や世界の各地で絶大な人気を誇る東映特撮ヒーローをより多くの人々に愛してもらうため、今後も頑張っていくと力強く語った。

塚田氏は「僕が『宇宙刑事』をテレビで観ていたのが小学生時代。以来ずっと宇宙刑事のファンで、それが同じ宇宙の警察という『デカレンジャー』につながり、『スペース・スクワッド』へと発展しました。さらに、望月くんの作った『キュウレンジャー』ともつながっていくなど、どんどん世界が広がっています。これから先も続けていきたいという思いを、ここに来られているみなさんやスタッフと再確認することができましたので、がんばって次も作っていきたいと思います! みなさんどうぞよろしくお願いします!」と、作品作りの根底にある"特撮ヒーローが好き"という思いと『スペース・スクワッド』のさらなる躍進に向けての情熱を再確認しつつ、今後への強い意欲をあらわにした。

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