いよいよ消費税10%時代が到来しました。今回の消費増税には、これまでと大きく違うことが2つあります。ひとつは期間限定、対象店舗も限定ではあるものの、キャッシュレス決済をすると5%または2%分が還元されること。もうひとつは軽減税率制度が導入されたことです。

ところが、キャッシュレス決済の還元制度についてはわかりにくいという声が多いのも事実。いま一度、制度の内容を整理し、上手な使い方を紹介しましょう。

還元は中小の事業者やフランチャイズチェーンが対象

消費税率の引き上げによる消費の落ち込みへの対策と、キャッシュレス決済の普及という2つの目的を推進するために行われているのが、今回の「キャッシュレス・ポイント還元事業(消費者還元事業)」。内容を簡単に説明すると、加盟店登録をした店舗でキャッシュレス決済をすると、中小・小規模の店舗では5%、フランチャイズチェーンの加盟店は2%の還元を受けることができるというもの(下図)。

まず注意しなくてはいけないのは、中小・小規模の店舗であっても加盟店登録をしていないと、還元制度の対象ではないということ。日本全国に対象となる中小店舗は200万店程度あるといわれますが、9月25日時点で加盟店登録申請をしているのは約73万店、そのうち10月1日から開始できたのは約50万店。

9月26日までに申請が不備なく提出された店舗は10月21日までに開始予定で、その後も10日ごとに追加登録されることになっていますから、現時点で使えなくても今後は使えるようになる店舗も多いはずです。

軽減税率×還元制度で、現在の消費税率は実質5段階

もうひとつ、今回の消費増税で導入された制度に軽減税率があります。飲食料品(酒類、外食は除く)と定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞については軽減税率が適用され、消費税率はこれまで通り8%。ファストフード店で購入したものを持ち帰れば8%、店内で食べると10%といった情報があちこちで報じられていましたから、これは理解している人も多いでしょう。

そこにも今回の注意点があります。というのは「軽減税率制度」と「キャッシュレス・ポイント還元事業(消費者還元事業)」が重なったことで、これまでよりも2020年6月30日までは減税になっているケースもあるのです。それを整理したのが下図です。

中小の店舗で食料品を購入すると、消費税は実質3%。店舗を選べば9月に駆け込み購入する必要はなかったのです。逆に登録店舗や商品価格を来年春までにしっかり確認し、2020年6月こそストックできるものは駆け込み購入をすべきといえそうです。

自分が利用しているキャッシュレス決済のキャンペーンをチェック!

政府の還元制度とは別に、決済事業者が独自に行っているキャンペーンもあります。特にスマホ決済は普及の好機と捉えているよう。主なスマホ決済事業者が、現時点で行っているキャンペーンが下図です。期間終了後は新しいキャンペーンが始まる可能性もありますから、自分が使っている事業者の動向は定期的にチェックすることをおすすめします。

そのほかにも、たとえばJCBはJCBが発行するクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード(一部対象外あり)をApple PayまたはGoogle Playに設定し、キャンペーンに参加登録。商品購入時にQUICPayで支払うと利用額の20%(最大1万円)をキャッシュバックというキャンペーンを12月15日まで実施しています。

とはいえ、これを機に新しくクレジットカードなどを作るというよりは、まず自分がいま持っているキャッシュレス決済を使いこなすことを考えるのが賢明。あまり使わないものにポイントを貯めても期限切れで失効させてしまったりすることもあるからです。スマホ決済を始める場合も、どこで使うことが多いのかを考えて、できるだけ多くの店舗をカバーしている事業者を選択するようにしましょう。

還元が受けられる店舗はどうやって見つける?

「キャッシュレス・ポイント還元事業(消費者還元事業)」の加盟店登録をした店舗を探す方法として、経済産業省がスマホのアプリとホームページ内で地図検索ができるツールを公表しています。

  • パソコンで検索するなら「キャッシュレス・ポイント還元事業(消費者還元事業)」HP内の「使えるお店を探す」から

  • スマホの公式アプリはApp Store、Google Playからダウンロード可能

ところが、アプリはApp Store、Google Playでいずれも評価が1.3という事実が表す通り、とても使いにくいのが現状です。検索機能がない、地図上のピンの位置と住所が一致しない、同一店舗なのに複数のピンが表示される……。よほど時間を持て余している人でない限り、面倒で探す気にならないというのが正直なところ。それらの声を受けて、11月中旬を目途にさまざまな改善が行われるようですから今後に期待しましょう。

とはいえ、すでにスタートしているのですから早く活用したいもの。筆者のおすすめは、店頭に掲示されているポスターを確認するというアナログな方法。

自宅や勤務先の周辺を

ぐるっと散歩して確認してみましょう。ランチを食べに行くお蕎麦屋さんや自宅近くのケーキ屋さんに、登録店舗であることを示す赤いポスターが見つかるかもしれません。それがあれば確実に還元が受けられます。

注意点としては、還元対象になっているキャッシュレス方法は何かを確認すること。というのも、筆者がときどき行く近所のイタリアンレストランは、まだクレジットカードの申請受付が終わっていないため、還元対象はQRコード決済のみとのことでした。今回の制度は中小事業者が決済事業者を通じて申請を行うため、そのようなタイムラグが発生するようです。

それからもうひとつ、決済事業者によって還元方法が異なることも認識しておきましょう。

・大手コンビニ:支払い時に値引く実質値引き方式
・クレジットカード:多くは請求額からポイント相当額を相殺する実質値引き方式
・スマホ決済事業者:後日使えるポイントで還元するのが多数派
・交通系電子マネー:登録などが必要なうえに数カ月に1度ポイントで還元し、利用するためにはチャージが必要(なかなか複雑な方式)

期間限定とはいえおトクであることは事実ですが、使いこなすには情報収集能力が欠かせない制度といえそうです。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。